表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/117

第三話 タイムスリップ

離れを出てすぐそばの所にて――、


「ノノは何日でクリアしたの?」


「実は全クリしてなくて」


タケヒコはノノにした質問の答えを聞いて、少々気まずくなる。


「じゃあ実力は俺と同じだったりして」


「おい!」


タクヤのデリカシーの無い発言に、タケヒコは釘を刺そうとする。


が――、それよりも早く、ノノはタクヤに噛み付いた


「8割9割くらいはクリアしたの!! その分先輩だから、タケヒコ君はいいけど、タクヤ君は私に敬語使いなさい!!」




「え?」


(はっ?)




タクヤとタケヒコはノノの発言に少々、引いた。


「いっ、今のは言い過ぎました。ごめんなさい……!!」


「どうした?……!」


ノノとタケヒコは何かの存在に気付いた。


「ん?」


タクヤはノノとタケヒコと同じ方向に目をやる。するとそこには、50代くらいの、銀髪の騎士の様な人物が歩いていた。


「やあ、若い衆。これから旅に出るのかい?」


「ああ、そっすよー。オジサンは?」


「ワシも少し、自分探しの旅をしようと思ってな。お互い頑張ろう」


「ウスッ」


(ゼト……)


タクヤと銀髪が会話しているのを尻目に、タケヒコは想いを巡らせる。


(お前が最後に倒すはずのラスボスなんだがな、そいつは――。まあ知っているか……)


「因みに俺らは3人でこの旅を進めていく予定なんスよー。お互い頑張りましょ!」


「ハハッ、じゃあな」


「ウッス」




(アレー?)




何の疑いも無しにブンブンと手を振り、ゼトと別れるタクヤに、タケヒコは虚を突かれた。そしてゼトが完全に視界から消えた後タケヒコはタクヤに話し掛ける。


「なあ?」


「ん?」


「さっきの奴のコト、なんにも知らないのか?」


「ああ、それがどうした?」




「――、」


「?」




「はぁー、アイツは! 魔将軍ゼトって言って!! 俺らがこれから最後に倒すべき、ラスボスなんだよ!!!!」




「ええええええええ!!?」




「それくらい“旅のしおり”に書いてあるだろう? 確認しておけよ」


「あー。でも俺、ネタバレとか避けたいタイプだから、前情報ナシでここまでやってきたんだよ。それなのに、ここに来て大いなるネタバレをー!?」


「私も、それくらいは知っておいた方がいいと思います」


「……」


「あ……」


不意に、ノノが口をはさんだ。


「あ、まだ居ました……」


三人を、少し気まずい空気が包んだ。


そこへ――、






「火事だ――――!!!!」






「!?」


村人が叫び声を上げた。声の方へと視線をやる三人。そこはタクヤの実家の離れで、モクモクと黒煙が上がり、メラメラと火の気が上がってていた。


「あっ、やっべ。忘れてた」


「何を!?」


「……」


タクヤはタケヒコに問う。ノノはだんまりだった。


「俺の実家の離れが燃えてるんだけど! 俺の実家の離れが燃えてるんだけど!! 初期設定できた場所なだけに、ギルドの依頼とかもやってんの!? ギルド依頼できなくなっちゃうよ!? 積みなの? ねえ! 積みなの!?」


「あー、待て。今思い出そうとしてる」


「既プレイだよね!? 序盤、最重要ポイントだよね、コレ!」


「あ、アレを探さないと。アレ、どこだっけ?」


質問攻めのタクヤに、考え中のタケヒコ。何かを探し始めたノノ。パーティは壊滅状態だった。


(チキショー、離れが燃えた。あ、でもコレゲームだったっけ?)


(しまった。数週間前にクリアしたのに、序盤の攻略、忘れてる)


(アレを……アレがあーなってアレでアレ。アレ?)


錯乱状態のパーティ。


と、そこへ――、




「何をやっているんだ!?」




「!」


「!?」


「!!」




マント姿に長帽子の、いかにもな格好の男が現れた。




『お前は、何者だ!!?』




三人は声を揃えて言う。


「我が名はセルジュ! 普段は回復魔を使う、魔法使いだ!! そこの三人よ! 手と手を取り合い、私に触れよ」






『いきなり!?』






三人は世界観についていけない様子だった。そうこうしているうちに、メラメラと燃え盛る炎は、タクヤの実家の母屋まで火の気を伸ばしていた。


「ああ、(うち)がぁ!!」


泣き叫ぶタクヤ。


「ええい! 早くせんか!!」


「お、おう。タクヤ、行くぞ」


「私も行きます!」


「うう……」


タクヤはセルジュと他二人の三人に促され、泣く泣く手を繋ぎ、その魔法使いのもとへ近づいた。ひと塊になる四人。次いで、セルジュが銀色のカギの様なものを右手に掲げ、声を大にして言い放つ。




「万象の理よ、我が意のままに……!! 時よ、過去へ戻れ!!」




ブワっと辺りは光に包まれた。そして魔法陣の様なものが現れ、四人は光り輝き段々とその場所から姿を消していった。






――、


「ん……?」


タクヤは目を覚ました。


「漸くお目覚めかな?」


セルジュが口を開いた。


「ん……」


「あ……!」


タケヒコとノノも続いて意識を取り戻す。


「そうだ!! 火事は!?」


タクヤは辺りを見渡した。




「!!」




そこには何事もなかったかのようにタクヤの実家の母屋と離れが佇んでいた。


「ほっ」


タクヤは胸をなでおろす。


「安心しな。このカギを使って、一日程時間を巻き戻したんだ。このカギを見付けるか見つけないかが、序盤の積みポイント。ちゃんと、押さえておかないとね♪」


「あー! 思い出した!」


「あー! アレ!!」


タケヒコとノノは口を大きく開いて叫んだ。その様子にタクヤはげんなりしたように言う。


「オイオイ。既プレイ組、頼りねーな……あっ!」


思い出したかのようにタクヤは続ける。


「さっきはありがとう! 魔法使い……さん?」


「二度目になるが、私の名前はセルジュ。よろしく」


「俺はタクヤ! ヨロシク!!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ