第百十六話 最終決戦・ゼト戦⑧
『ゼトのターン:戦う――、全体攻撃! 食いちぎる!!』
両手両足を失ったゼトは、頭部のみでの攻撃に出る。
「ガチッ!!!!」
『タケヒコにヒット! タケヒコ、HP:0/231』
「ぐっ!! 強い……」
『タクヤにヒット! タクヤ、HP:13/243』
「ぐぉ!! 最後っ屁か……、セルジュに全回復してもらっててよかったぜ!」
『ノノにヒット! ノノ、HP:0/224』
「ぎゃわー!! 何回目ですかー?」
『セルジュにヒット! セルジュ、HP:???/???』
「♪ さあ、終わりの時間だ(タケヒコとノノちゃんには悪いけどね――、)」
『タケヒコ、ノノは力尽きた』
『タクヤのターン……』
「ここまで来るのに、色んな場所を冒険してきて、辛いコトや楽しいコトで溢れてた。でも、このメンバーだからこそここまで来れたんだ! タケヒコ! ノノ! セルジュ! 今までありがとう(この戦いが終わったら……)」
タクヤは下唇をグッと噛み締めた。そしてゆっくりと口を開く。
「この戦いが終わっても、ずっと、仲間で居てくれ……!!」
『スキル――、ドラゴンバーン!』
タクヤの乗っていたドラゴン(ドラコ)は翼をたなびかせ、舞い上がり――、
「ゴォォ……ゴォォォォオオオオオオオオ!!!!」
口からメラメラと燃え盛る炎で、ゼトの頭部を襲った。
「ワシの……野望が………、グギョオォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
ゼトはこの世の者とは思えないような叫び声を上げ――、
「シュゥゥウウン」
ゆっくりとその姿は消えていった。
「ハァ……ハァ……今度こそ、勝ったぞ……!」
(やったな、タクヤ……俺死んでるけど……)
(やったー! クリアだ。私死んでるけど……)
タクヤ、タケヒコ、ノノは(一部死にながら)歓喜の声を上げる。
そして――、
「タクヤぁ♪ やったね!」
「……オウ!」
パァンとセルジュはタクヤとハイタッチを交わす。
「ホントにこれで……ストーリークリア……な……ぐーぐー」
タクヤはドラゴンバーンの反動で眠りに就いた。
「あらー♪ いつもの感じになっちゃうんだね」
タケヒコとノノは石化、タクヤに至っては熟睡といった形でエンドロールを迎える。
『タクヤLvアップ40→45。セルジュLvアップ42→47』
スタッフの一同の名前が、画面上に流れていく。背景には、タクヤの冒険の軌跡が映し出されていた。入水まえに、田んぼで足ふみをしホッコリしているタクヤが、ノノに出会うシーン。
(あっ! 初めてタクヤ君にあった場所だ)
「ぐが! ぐー」
次にタクヤの実家の母屋と離れが火災に遭っているシーン。
「私の活躍で、見事イベントクリアできたね♪」
続いて、初めてのスライムとの戦闘。
(俺達、あれから考えるとものすごく強くなったな)
更に、
神殿、
森、
ゼトとの負けイベントの様子、
砂漠、
市街地、
水の都、
火山と、今まで旅したマップと、タクヤ達の旅での様子がスライドショーの様に流れていく。スタッフロールも数え切れない程の数々の人の名前が流れている。
「ふがっ! こんなに多くの人が、このゲームに携わってきたんだな」
「漸くお目覚め? タクヤ♪」
「おうよ、セルジュ。エンドロール見逃すわけにはいかねーだろ」
「あ♪ タクヤ、二人も……!」
タケヒコとノノも意識を取り戻し、ゆっくりと立ち上がった。
「ふーい、やられたやられた」
「私倒され過ぎじゃありません?」
「お前ら……! もう無事か!?」
「お陰様で――、な。……おい、見ろよタクヤ。面白いモンが見れるぞ」
「あっ、ホントですね」
「?」
エンドロールの中に妙な文字が。
『スペシャルサンクス:タクヤ君家』
「!? !!? タクヤ君家!!!?」
「あながち、間違っては無いよな。タクヤ」
「何だか面白いですね(笑)」
「タケヒコにノノ! 茶化すのはやめろ!」
「ハハッ」
「あはっ」
「♪」
そうこうしているうちにエンディングが終わり――、
『The battle begins on the farm』
タイトル画面が映し出されていた。
「!? タケヒコ! ノノ! セルジュ!」
三人の姿は確認できなかった。タクヤは急いでボタンを連打した。言いようもない焦燥感にかられながら――。
画面が再び明るくなると、そこは実家の離れだった。
「――、!」
タクヤは辺りを見渡した。すると――、
「ようタクヤ、そんなに急いで何の用だ?」
「あはは! 何か変な動きでしたよ?」
「どしたの? タクヤ♪」
タケヒコ、ノノ、セルジュの姿があった。ホッと胸をなでおろすタクヤだった。ノノはタクヤを不審に思い、言う。
「何ですか、そのリアクションは? あー! 忘れてませんよね? この後するコト!」
「なっ、何するんだっけ?」
ノノ、タケヒコ、セルジュは顔を見合わせて言った。
『クリア記念の、打ち上げ!!』