豆大福。
令和2年8月某日
話は戻り、10万円という給付金を頂いた私はさて使いみちはと悩む。
晴れてまともな職を得て関西に舞い戻ったが、まあ言うても底辺近い生活に変わりは無い。用意された住居は6畳のワンルーム、働く事務所からは近いので便はいいがまあ狭い。
必要なものを置けば、もう何の余裕も無いくらいの広さである。
でも社員寮扱いで金はかからないから文句はない。
自分の金では選ばない部屋でも、福利厚生となればまさに「住めば都」なのだ。その慣用句の使い方こそ間違っているかもしれないが、私は存外気に入っている。いや本当に。
もともと別に住まう部屋にこだわりがあるわけでもない。
理想も無い。
給付金の話をしよう。
いろいろ考えた結果、動物を飼おうかと結論に至った。
もちろんペット禁止の物件だが守ってるやつなどいない、そんな関西テイストだ。
だが小心者の私は鳴かない動物にしようと決めた。
この時点で候補に挙がったのは3種。
「モモンガ」「ハリネズミ」「ミニウサギ」
モモンガ、これはトイレのしつけができないらしい。ゆえに×。
ハリネズミ、なつかない上に餌が虫類。ゆえに×。
消去法で自然と「ミニウサギ」となったのだが、これがまた厄介なのだ。
ひとくちにミニウサギといえば、犬猫でいう雑種となる。
これらはホームセンターで購入する部類らしく、事前に集めた情報によれば人に懐かないらしいのだ。
かといって純血のネザーランドドワーフなどは子ウサギから引き取って、だいたい5万円が最低ラインらしい。でもそれでは環境を整えるための予算がオーバーしてしまう。
ゆえに何も考えず、近所のホームセンターで2万円でネザーランドドワーフのミックスという生後3ヶ月の真っ白な兎を購入した。
白い毛並みに黒々とした眼だったので「豆大福」と名付けた。
そして、その日のうちに私の同居人としてお迎えしたのである。