悪役令嬢ランキング
「悪役令嬢ランキング第八位オフィーリア・グレンラッド、お前との婚約を破棄するッ!」
「まあ、情報が少々お古うございますわ、殿下」
「なに?」
令嬢の悪虐度を示す『悪役令嬢ランキング』。世の殿方たちは、ランキング上位の悪役令嬢に婚約破棄を突きつけることで箔がつくと考えているようです――が、そうはまいりませんわ。
「わたくし、昨日ついうっかり捨て猫を拾ってしまいましたの」
殿下の顔が青ざめる。
「それと、使用人全員に臨時ボーナスを支給しましたのよ」
「……つまり」
「確かに昨日まではランキング八位でしたが、今日付けで56位まで落ちてしまいましたの」
殿下はがくりとくずれ落ちた。56位は完全にランク外だ。
昨日までの、悪役令嬢ランキング一桁のオフィーリア相手に婚約破棄したのであれば自慢できた。しかし流石にランク外の令嬢を婚約破棄したところで、嘲笑されるだけなのだ。
「オーッホッホッホ!」
オフィーリアは高笑いしながら立ち去った。
悪役令嬢ランキングが導入されてから、令嬢たちの品格が日に日に高まり善行を繰り返すようになった。それに伴い無茶な婚約破棄も徐々に減少し――。
めでたしめでたし。となればいいのだが……。
***
こちらは現在、悪役令嬢ランキング堂々第一位、辺境伯令嬢フルーティア・ホワイティである。
フルーティアは孤児院の慰問に赴き、どろんこになって子どもたちの遊び相手になった。抱きついて離れようとしない子どもたちに手を振り、たっぷり寄付金を施して帰っていった。
屋敷に帰り次第、メイドのメイを探した。
メイを見つけ、確認する。
「残念ながら現在も第一位。ピクリとも動いてません」
「どおしてぇ~」
「それよりもお嬢様」
メイは男性の姿絵の山を、どんとテーブルに積んだ。すべて縁談の釣書である。
「ふぇぇ~、またこんなに」
悪役令嬢ランキング第一位のフルーティアは婚約破棄界隈の注目の的である。彼女を婚約破棄すれば箔も評判もうなぎのぼり。
「もおやだ~」といいながら、フルーティアはまたも善行に出かける。
ホワイティ領では広大で肥沃な領土と引き換えに、頻繁に魔物が出現する。フルーティアは幼い頃から冒険者登録して、領民を守るために魔物を退治していた。そう、生物を大量虐殺していたのである。
よもやランキング協会もご令嬢が魔物退治をするなどとは想定しておらず、とりあえず普通に殺生を繰り返しているとカウントしていた。
そうとは知らず、ただただフルーティアは領民のため、毎日せっせと魔物退治に励む。
「今日こそランキング下げるんだから~!」