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sideシン【10】


「四大元素の聖霊神よ、力を貸して!」


『ヒカリ』が祈ると、四つの光が現れた。

 人の形はしていない。

 それは四体の神……四神というやつに姿を変えた。

 ああ、そういえば姉が言ってたな……。


『昨今の流行は新鮮なもふもふよ!』


 ——と。

 正直「新鮮なもふもふってなんだよ」と思わないでもなかったけどこういうことか。

 青龍ではなく青いふかふかのもふもふの蛇っぽいなにか。

 朱雀……にしてはちょっと胸のもっふり具合がもっふもっふすぎるような気がしないでもない。

 白虎……まあ、安定と信頼の白いモフ虎。

 玄武ではなく亀のはずなのになんか亀に似たもふもふのなんだこれ。

 亀型のもふもふ生物——いや、神?


「シン」

「は、はい!」


 ミゲルさんの声に唖然として手放していた我を取り戻す。

 いかんいかん、集中しなければ。

 集中して、強度の高い神符を作り出す。

 時間をかけて、集中して……。


「四大聖霊神アターーーーック!」


 ネーミングセンスーーーーっ!

 いや、突っ込まない突っ込まない。

 自分のやるべきことをやるんだ、俺。


『オオオオッ! 生意気ナ 聖霊神 メ!』

「喋ったー!」

「妖魔は基本知性があるからね。くるよ!」


 ミゲルさんが「防御」「水で攻撃して」等、指示を出し、そこはかとなく代わりに戦わせている。

 だが、全部女の子に任せるようなゲスではない。多分。

 そうしながら魔法陣を構築し、魔法陣を複数繋げていく。

 すごい、あれ、俺はまだできない。


「よし、整った。ヒカリ様、火で弾幕を!」

「え、っと、は、はい! 朱雀ちゃん!」


 そう名前を呼ぶと、多分火の聖霊神が無数の火焔玉で弾幕を張る。

 ミゲルさんがなにをするにしても、その一撃のあと、怯んだところでコレを使う。

 俺の加護を徹底的に叩き込んだ、この封印の神符を。


『グゥ……』

「喰らえ。『影吸い』」

『ギ——ギィヤアァァァアァァアアアァァァァァ!?』


 その技の名前の短さからは、考えられないような悲鳴が、がしゃどくろから上がる。

 薄いがしゃどくろの影が、ミゲルさんの方へ引き寄せられ、まるで引き剥がされるかのようなベリベリといういかにも痛そうな音。

 なにが起きてるのかわからないが、とりあえずめちゃくちゃ痛いんだろうな、というのはわかる。

 骨だけのあの妖魔を、よもや可哀想と思うなんて。


「シン! 今だ!」

「はい!」


 だが、同情はここまでだ。

 俺はコニーを助ける。

 姉が定めた運命なんて、俺がぶっ壊す。


「神符封印!」

『ガアァァァ!!』


 二階建てアパートくらいの大きさが、三十センチ程度の長さの紙の中に吸い込まれていく。

 全部吸収されるのに一分くらいかかった。

 しゅるん、と完全に封印されたのを確認してから、思わず座り込む。

 まだ終わりじゃないのに、膝がガクガクしてる。


「よくやったね、シン」

「ミゲルさん……ありがとうございます」

「まだ終わりじゃないだろう? コニッシュを取り戻したら速攻で離脱する。ヒカリ様もご助力感謝します。もう少しご協力願えますかな?」

「え、ええ! もちろん!」

「…………」


 ミゲルさんのキラキラとした作り笑いに綺麗に引っかかる『ヒカリ』。

 チョロい。

 チョロくてちょっと心配になる。


「うっ!?」

「? どうかしたんですか?」


 だけど今の俺はそんなチョロい『ヒカリ』に心配されるほど弱っていた。

 立ち上がろうとしたのに、立ち上がれない。

 なんだこら、なんで……!?


「魔力不足だ。動くんじゃない、シン」

「!? で、でも、まだコニッシュのところに……!」

「わかってる。でも、君とヒカリ様を妖霊神に喰わせるわけにはいかない。わかるだろう?」

「っ……」


 ぐうの音も出ない。

 逆に妖霊神を強化させてしまうのはまずいし、俺だって喰われたくないし。

 どうしよう。


「どちらにしても君の神符でも妖霊神までは封じられない。俺が様子を見てくるから、魔力が回復するまで休んでいなさい」

「ひ、一人でなんて……!」

「大丈夫ですよ! ミゲル様とは私が一緒に行きますから!」


 それが不安なんだよ!

 別な意味で!!


「神符は作っておきなさい」

「っ、は、はい」


 仕方ない。足手まといにはなりたくない。

 ミゲルさんなら無茶しないだろうし、信じて少し待とう。

 魔力は自動回復でよかった。


「…………」


 でも、懐に入っているコニーの作ってくれた護符袋、そして『自動回復』の護符の力を感じる。

 トク、トクと鼓動も聴こえてくるようだ。


「ほっと! ……うん、いける」


 もう動けるようになってる。

 これ、この護符、多分アレだな。

 体力自動回復ではなく……体力と魔力自動回復!

 すごい、こんな護符あるんだ。


「…………光の聖霊神」


 俺には声も聞こえない。

 でも、もしも近くにいて聞いているのなら、コニーを守っていてほしい。


「闇の聖霊神」


 あなたが加護を与えた女の子が危ないんだ。

 どうか側にいて、守っていてください。

 俺が絶対、助けるから……!


「……コニー、今助けに行くからね」



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