sideシン【5】
「ミゲルさんの予定を聞いてくるので、ここで待っててもらえますか? えっと、何人で来てるんですか」
「! 四人です! 私とエリーリットと、トール王子とセリックさん!」
「四人ですね、あまりうろちょろしないでください」
一応この国の人じゃないわけだし。
そう言って二人がボックス馬車の中に戻ったのを確認してから、溜息を吐く。
……まあ、あの『ヒカリ』が姉の物語通りの『聖女』だったとしても、俺はコニーを守ってあげたい。
姉のせいで不幸になる人……死んでしまうかもしれない人……。
そんなのは、嫌だ。
それに、コニーは普通の女の子だった。
なんでも自分のせいにしてしまう、かなり後ろ向きに全力な感じの人だけど。
それだけ、妖霊神の【認識阻害】でつらい思いをしてきたからだろう。
……あれ? でも四人で来た割に二人しかいなかったな?
まさか別行動してるのかな?
いやいやいやいや、他国で……しかも神様に結界で国を分けられてしまうほど長い間戦争していたいわゆる敵国で、護衛もなく出歩くってヤバくない?
平和ボケしてるのかな?
それとも……あの『ヒカリ』は、四大元素聖霊神だけでなく、光の聖霊神も召喚できるのか?
いや、さすがにそれはないかな。
四大元素の聖霊神は召喚できるけど、闇と光の聖霊神は呼び出す術がない……って、ミゲルさんが言ってたし。
「おや、シン様、お帰りになられたのでは?」
「あ、ちょうど良かった、プリンさん。実は——」
事情を話すと、案の定ものすごく嫌そうな顔をされた。
まあ、ですよね。
俺のせいじゃないけど、申し訳ない。
そしてすぐに兵士を手配してくれる。
「百朝で王都の民が特に引きこもりがちなこの時季に……」
「!」
なるほど、そういえばこの国は闇の聖霊神の加護で覆われていて、百朝という日の昇る時季以外はずっと夜なんだっけ。
そういえば騎士団の人も「百朝の時季が過ぎれば人が増える」って言ってたな。
冬眠ならぬ百朝休眠モードになる魔族がいるから、って。
「…………っ。……あの、もしかして百朝の時季って闇の聖霊神の力が弱くなるとか、そういうのじゃないですよね?」
「っ!? なんでそれを……」
「!」
やっぱりそうなのか!
だから『ヒカリ』がこの国に来れたんだ……!
待て、それじゃあもしかして妖霊神や妖魔も……?
「……っ! ……み、ミゲルさんに会いに行ってもいいですか!」
「え、は、はい。執務室にいらっしゃると……」
「ありがとう、プリンさん!」
姉の書いた物語と、酷似した世界。
でも俺はここがその物語の中で、物語の通りに物事が進んでいるのだとしても、姉の書いた通りの結末にはならないと思っている。
別に『アンドウヒカリ』という本来の『主人公』の名を騙る偽者が『主人公』をやってるから、とかではなく。
俺というイレギュラーがいるからとかでもなく。
ただ、この世界にはこの世界の人たちの意思や感情がちゃんとあるから。
『ヒカリ』はそれがわかってない。
あの人たちは、ただの『登場人物』などではないのだ。
コニーの妹が姉を案じている姿を見て確信した。
一番側にいる割りに、『親友』の気持ちもわからないなんてちょっとどうかしてるよね、あの人。
「ミゲルさん! 大事なお話があります!」
「お、どうしたの?」
とりあえず執務室で仕事中のミゲルさんに、彼女たちのことを話す。
さすがに訪問が急すぎて、陛下の予定を調整するのは無理だと言われた。
まあ、それはそうだよね。
国王陛下に会うってのは、予約一ヶ月待ちって感じだもん。
俺はミゲルさんに「会う?」って聞かれて「いいえ」って言ってる。
コニーがまだ、この国でどうしたいのかを決めかねていたからだ。
でも、つい先日この国でやっていきたい、と言ってたし……ミゲルさんとしても、陛下に俺とコニーを会わせたいみたいだし。
「とりあえずその人たちは一等の宿に泊まって待っててもらおう。今から予定の調整は厳しい。というか、曲がりなりにも王族が王族に会いにくるのに使者もない、護衛もないとはどういうことなんだろうね」
「……多分、その“使者”もどきの女の子——ヒカリさんっていう人が俺と同じ『招き人』だから、危害を加えられることはないと思ってるんじゃないんでしょうか」
「! ……へえ……例のコニッシュを国から追い出すきっかけになった子、だよね? 招き人だったのか。なるほど……それなら確かに聖霊神たちは力を貸すだろうな」
なんか解せない。
俺は確かに魔力量がこの国の常人以上。
ミゲルさんと同等ぐらいあり、それをすべて身体強化に回すと魔人族と大差ない動きができる。
剣の扱いも、まだミゲルさんや騎士隊長には敵わないけど、覚えた。
でも聖霊神召喚、俺は覚えてない。
城の鑑定士さんに見てもらったけど「ないですね」と一蹴。
解せぬ。
なんでだ、同じ招き人なのに。








