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城下町を探索しよう【5】


「ではこちらに座ってください。結果はこちらの紙に出ます」

「コニッシュはん」

「っ〜〜〜……は、はいっ」


 お世話になっている身で文句など言えないわよね。

 ええい、ままよ!

 ケートさん、という鑑定士の前に座り、目を閉じる。

 視覚的に、なんか、正面から見るのは怖い。

 なんか本当に顔面全部包帯に巻かれてる!

 その包帯に所々赤いシミのようなものが見えたような気がしないでもなくー!


「出ました。ほうほう……これはこれは……」

「んん? なんでっしゃろ……? この、【認識阻害】ってスキルは」

「生まれつきのスキルでしょうか?」

「いや、ここを——」


 ケートさんが指さしたところ。

 そこには『妖霊神の祝福』と書いてあった。

 あ、文字が読めた、よかった、と安堵した瞬間、谷底に叩きつけられたような気持ちになる。


「え……?」

「あー、なるほど……コニッシュはんは妖霊神に目ぇつけられてはったんどすな」

「妖霊神の祝福による加護——【認識阻害】。それがコニッシュさんの存在感を消していた正体だったのですね」


 体が震え始めた。

 妖霊神とは、妖魔たちの神だ。

 どうしてそんなものが私に祝福を?

 いやだ、うそだ。

 それじゃあ私は……私はいったい……?


「怯えなくても大丈夫どすよ、コニッシュはん。妖霊神は自分を生み出すきっかけになった者の末裔に、頻繁に手を出して戦争を再開させようとするんどす。この国でも妖霊神に祝福を与えられた者は少なくありまへん」

「そうですよ。人間の国ではどうなのかわかりませんが、わたくしたちはかつて争いを起こした者の末裔なのです。誰もがそう。例外は招き人くらいなものです」

「ジェ、ジェーンさん……プリンさん……」


 みんなそう?

 でも、でも……誰でもが選ばれて妖霊神に祝福されるわけではないはずだ。

 私は呪われているのだろうか。

 妖霊神に選ばれるなんて、私は、私は——っ。


「妖霊神に祝福されると、なにかあるんですか?」


 そう聞いたのはシンさんだ。

 私は、怖くて耳を塞ぎたくなる。

 でも、その前に答えが入ってきてしまう。


「なんもありまへんなぁ。その人にとって便利な加護が現れたりもしますから」

「ええ? じゃあそんなに悪いことないんですね?」

「そう思わせるのが、妖霊神の狙いとも言われとります。『妖霊神は実はいい神』だから、話し合いで仲良くやっていけるんではないか、なんて思った者は、二度と帰ってきまへん。数年後、妖魔になっとるという話をいくつも聞きました」

「ひっ!」


 だから妖霊神に会いに行ってはいけない。

 妖魔は新しく生まれることはないけれど、そうして騙された魔族が数年に一人の割合で妖魔にされてしまうことがあるらしい。

 もちろん、騙されなければいいだけの話。

 妖魔は呪いを増やそうと町に侵入して災いを振り撒く。

 そんな妖魔たちの神こそが妖霊神なのだ。

 妖霊神も妖魔も、巧みに入り込んでくる。

 戦争を起こそうと。

 呪いを産ませようと。

 虎視眈々、狙っているのだ。


「ストーリー通りだな……」

「?」


 シンさんが呟く。

 ストーリー……?

 なんの話だろう?


「よし! やっぱり俺は妖霊神を倒すぞ!」

「ええっ!?」

「招き人ならきっとできる! 俺はあの漫画みたいな結末は嫌だから!」

「? シ、シンさん? まんが……?」

「ううん、気にしないで! とにかくコニーのことは俺が絶対助けてあげるから! 大丈夫!」

「?」


 なんだかよくわからないけど、そう言って手を握られてしまうとまた顔が熱くなる。

 真っ直ぐに見つめてくる黒い瞳。

 この人は……いったいなにを言っているのだろう?

 わからない。

 わからないけど……私なんかのためにこんなふうに真剣になってくれるなんて——。


「やっぱり私の魔眼に……っ!?」

「ち、違うからね!?」

「さて、原因がわかったのでまずは【認識阻害】の加護を加護封じすればよいわけどすな」


 ジェーンさん、普通に話が進んでる!?


 待って待って待って。

 まず【認識阻害】の加護ってなに!?

 いや、妖霊神が私に与えたものなのは理解したけれど、効果は?

 鑑定結果の紙を慌てて覗き込む。


【認識阻害】——他者が存在を認識するのを阻害する。


 効果!

 なるほど!

 そういう効果だったんですね!


「妖霊神の祝福は聖霊神の与える祝福とは違い、その人のためになるものとして与えられるわけではないと言います。コニッシュはんの場合はマイナスに働いてはったんでしょう。それを闇の聖霊神様が見かねて【魅了の魔眼】をお与えになられはったんでしょう」

「そ、そうだったんですね」


 闇の聖霊神様は、私のことを案じてこの祝福をお与えになられた。

 でも、私の——いえ、人間族には【魅了の魔眼】の効果の方が強く影響が出てしまったのね。

 他者から認識されるのを阻害される【認識阻害】。

 それを相殺する【魅了の魔眼】の効果。


「つまり妖霊神が元凶ってことだね!」

「は、はい」


 はっ!

 やだ、私ったらシンさんの服握りっぱなし!?

 慌てて手を放すけれど、申し訳ない。

 シンさんの言う通り、私の存在感のなさは妖霊神のせいだった。

 いえ、でも、それはそれとして……。


「この【認識阻害】の加護を無効化できるんですか……?」

「魔眼封じのように、加護封じもありますぇ。加護を封じるなんて、滅多なもんじゃあありまへんけど、闇の聖霊神様が【魅了の魔眼】というヒントをお与えになっとりますから」

「!」

「コニッシュはんの着る物に【認識阻害】封じの紋を入れてやればええんどす。コニッシュはんは刺繍がご趣味と言ってはったんですから……そうどすなぁ……肩かけ作ってみたらどうでっしゃろ」

「肩かけ……?」

「まあ、ジェーンはん、それだと糸から加護封じ付与をした方がいいのでは?」

「そんなことできるんですか?」

「ええ……。そうですね、詳しくは戻ってからしましょうか」


 鑑定士さんは仕事をしたし、ここから先は屋敷に戻ってから。

 ケートさんにお礼を言って、またシンさんにしがみつきながら下に戻る。

 屋敷に帰る道中、プリンさんに「加護封じ」について聞いてみた。

 元々は私のような、妖霊神からの一方的な加護で苦しむ人を救うために作られたそうだ。

 呪具、呪いの一種。

 加護はどんな効果であろうと『プラスのもの』だから。

 それを呪具や呪いの類——『マイナスのもの』で打ち消す。

 私はこれまで【認識阻害】を、他者を魅了する【魅了の魔眼】で打ち消していた。

 それを他の方法で打ち消すのね。


「まあ、コニッシュはんの【魅了の魔眼】はレベル1。わっちたちの国ではなんら問題ないですが……」

「で、でも……」

「コニッシュはんが気にするのであれば、そうするしかありまへんで」

「このままでもいい気はいたしますね。加護封じを作るのはとても大変なので」

「うっ」


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