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城下町を探索しよう【4】


 そう言われて、魔法ギルドというところに入ってみる。

 魔道具や魔法紙はそれぞれ魔道具店や魔法紙店に売っているけれど、この国では一律魔法ギルドの中に売っているらしい。

 外装より広くて、とても驚いた。

 建物の中は天井が高い、木造の塔。

 壁はすべて店で埋め尽くされており、階と階は階段で登り下りができるようになっている。

 でも、気になるのは中央。

 人が中央の光の塔に乗ると、ふわっと浮かんで上の階で下りたり、上から下の階に下りて来たりしている。

 どうなっているのかしら……。


「受付はあちらどす」

「鑑定士の予約を取ってまいります。魔法ギルド内に店を構えている鑑定士なら、信用できますよ」

「は、はい。よろしくお願いします」


 ジェーンさんとプリンさんが受付の人に話を通してくれて、私たちは二人で改めてギルドの中を見上げた。

 多分口は開けっ放し。


「すごいなぁ……三十階くらいありそう」

「は、はい。こんなに高い建物は初めて見ました」

「コニッシュさんの存在が消えちゃう理由、わかるといいね」

「……理由……あるのでしょうか……」

「ないわけないよ。なんか消え方おかしかったもん。……魔眼のおかげで、俺たちコニッシュさんを認識できてたんだね」

「はい……」


 でも、レイヴォル王国ではその効果がある意味()()()表れた。

 私は周りの人たちを【魅了】していったのだ。

 これまでの生活が嘘であるかのように、みんなが優しく、私を中心に世界があるかのような生活に一変した。

 夢みたいな生活だったわ。

 楽しかった、毎日が。

 寝るのが惜しい、早く明日にならないかな、って……。


「私、故郷では馬鹿みたいでした。馬鹿みたいに、浮かれていました」

「コニッシュさん……」

「自分のことしか考えていなかった。とてもひどい。最低です」

「そんなことないよ」

「いいえ」


 首を振る。

 人の心を、弄んだのです。

 亡霊のような存在が、生者に囲まれてなにをのうのうと笑っていたのだろう。

 間抜けすぎて、笑えてくる。

 嫌われて当然だ。


「……いいえ……最低なんです……私……」


 野垂れ死ねばよかったのに、私なんて——。


「……コニーって呼んでもいい?」

「え?」


 シンさんがまた、私の手を掴む。

 驚いて喉がひきつった。

 その上、真面目な顔で私を覗き込んでくる。

 コニー……私の愛称。

 これまで、魔眼の効果を受けていた人たちにしか呼ばれたことはない。

 まさか……?


「シ、シンさん、まさか魔眼に……」

「ううん、違うよ。それに、俺の方が魔力は高いって言われたでしょ?」

「で、でも」

「俺は自分の意思で君と仲良くなりたいんだ」

「…………っ」


【魅了の魔眼】は気づかないまま、その心に侵蝕する。

 ヒカリさんのような特別な力がなければ、阻めない。

 この国ではいくら普通以下と言われても安心なんかできないのだ。

 怖くなって魔眼封じの眼鏡を取り出す。

 たとえ、誰にも見つけられない存在になっても——もう、誰かの心を勝手に操りたくない。


「三十五階におられます、鑑定士ケートはんに決まりました。……うん? どうかなさったんどすか?」

「……あ、い、いえ……」


 シンさんの手を、振り解く。

 戻ってきたジェーンさんたちのあとについて、中央の光のに乗った。

 移動魔法というらしい。

 すすすー、と地面から離れてずっと上の方まで移動できるのだが、足下の見えない床が怖くて思わずシンさんにしがみついてしまった。

 座り込むのも怖いし、体がガタガタ震えて仕方ない。


「あばばばばばばばば」

「コニー、大丈夫!?」


 割と、本気で。


「下を見ないように」

「はいっ」


 ジェーンさんにそう言われて目を閉じる。

 あ、目を閉じると床が移動してる感じもなくて怖くない……?


「三十五階に着きましたよ」

「は、はい」

「そのまま目を閉じてて大丈夫。俺が引っ張るからね」

「お願いしますっ」


 移動だけで大変どすなぁ、なんてジェーンさんには言われてしまったけれど、そう思うならもっと違う移動方法なかったんですかぁ!


「ここが? コニー、目を開けて大丈夫だよ」

「っ」


 とても自然に「コニー」呼びになっている。

 恐る恐る目を開けると、目の前にはローブで全身を覆った人物が座っていた。

 フードの下は包帯でぐるぐる巻き。

 ギョッとしてまたシンさんにしがみついてしまう。


「グフフフフ……はじめまして、鑑定士のケートと申します」


 声は女性!?


「なにを鑑定すればよろしいのでしょうか、グフっ」


 こ、こわい!

 なんとなく、笑い方が怖い!


「こちらのお嬢様が、【魅了の魔眼】持ちなのですが、どうやらその魔眼の効果で“存在感が消える”なんらかのスキル効果を打ち消しているようなのです」

「存在感が消える、なんらかのスキル、ですか?」

「もしくは呪い。しかし、このお嬢様はレイヴォル王国の出身。人間の国では【魅了の魔眼】の方が脅威に写ったようで、この国に亡命してらしたのです。ですから、この国で困らぬようにまずは現状を正しく把握しようかと」

「なるほどなるほど。よろしくてよ、よろしくてよ……グフフフフ……」


 や、やっぱりなんか怖いんですけどぅ!

 どうしてもこの人じゃないとダメなんでしょうかー!?


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