城下町を探索しよう【3】
「しかし、それならまずそのスキルもしくは呪いを調べなければあきまへんな」
「し、調べられるんですか?」
「鑑定士に見てもらえば一発どす」
「鑑定士……?」
首を傾げて聞き返す。
故郷では聞いたことがない職業だ。
ジェーンさん曰く「才能や体調や持っているスキルなどを調べてくれる」職業なのだそうだ。
魔族は多種多様なため、持っているスキルによって仕事を決めたりするらしい。
体調が悪くなったらその原因を調べるのも鑑定士。
原因がわかれば、迅速かつ適切に薬を調合できるから。
すごいわ……お医者様には何人もかかったけれど、どなたも私の体調不良にはお薬らしいお薬を出せなかった。
当時の、私の体調不良も、その鑑定士さんならわかったのかしら?
「自分で自分のスキルを見たりはできないんですか?」
「ステータスカードやスキルカードってものなら売っとります。冒険者くらいしか使いまへんから、それなりにいいお値段しはりますよ」
「買えませんかね?」
「招き人はんがほしい、言い張るんなら、経費で落ちると思いますよ」
「本当ですか!? やった!」
い、いいのかなぁ?
「でもステータスカードもスキルカードも護符の一種ですけん、一回使い切りどす」
「ええ〜!?」
「鑑定士の方が安上がりですからね。しかし、お二人は我が国の客人。下手な鑑定士にはご紹介できません」
「せやね。まず魔眼封じの眼鏡だけ買って、鑑定士んとこ行ってみまひょか」
「行こう! コニッシュさん!」
「……は、はい」
シンさんの勢いに負けて、私はその鑑定士さんに会いにいくことにした。
私の存在感の薄さに原因がある……?
なんだか信じられないわ。
「フレームはこちらでよろしいですか?」
「はい。ありがとうございます」
鑑定士さんのところへ行く前に、魔眼封じの眼鏡を一つ購入。
私の存在感を消すものの正体を探るにしても、魔眼対策は持っておきたい。
フレームは軽銀というこの国で取れる、とても軽い銀で作られた赤い花柄のものを選んだ。
浮き彫りという技法も用いられていて、大変可愛らしい。
しかも眼鏡ケースと眼鏡用のフキンもつけてくれた。
素晴らしいサービスだ。
レイヴォル王国ではこんなサービス、ないと思う。
店員さんも顔は厳ついけれど、ずっと丁寧な対応だった。
こんなに店員さんに親身に対応してもらえたのは、魔眼を手に入れて学園復帰して以来かもしれない。
でもあの店員さんは【魅了の魔眼】の効果を受けて、あんなに優しかったわけではないのだ。
なぜなら、彼の方が私よりも魔力が高いから。
そして魔族には微弱な『耐魔』という耐性が備わっているのが普通であり、私の『レベル1』の魔眼は簡単に弾かれてしまうらしい。
レベル1の魔眼の効果を受けるのは『魔力なし』ぐらい、と言われてしまって、私はとても複雑です。
レイヴォル王国ではヒカリ様以外、皆さん私の魔眼に取り込まれていたので。
「さて、ここが鑑定士のおられる『魔法ギルド』どす」
「魔法ギルド! 冒険者ギルドとは違うの?」
「魔法ギルドは魔法に関わるものが集まるところどす。たとえば魔道具、魔法紙、鑑定士、呪具、呪術……そういうものに対応してはります。冒険者を雇うより高額なものが多いので、貴族御用達なところがありますな」
「はぇぇ」
魔道具や魔法紙はレイヴォル王国にもあったわ。
魔力を通すと使える道具が魔道具。
魔法紙はトイレの水を流す、お風呂のお湯を沸かす、など特定の生活魔法が入っている使い捨てのもの。
平民にも出回っていて、一度使うと白紙に戻る。
そういう魔法が込められているから、使用回数の割にとても安価。
でも、呪具や呪術というのは初めて聞いた。
ジェーンさん曰く、呪具や呪術は呪い対策。
この国は人間に比べて、多種多様な姿の魔族や魔物が生活している。
妖魔が紛れ込むことが稀にあり、妖魔が町に入り込むと呪いによる多大な被害が出た。
妖魔の呪いは、呪いを集めるもの。
大昔、人間と魔族が戦ったことで妖魔は生まれた。
だから妖魔は呪いを得て強くなる。
人々の憎しみ妬み恨み、絶望……そういうものを欲しがるのだという。
レイヴォル王国に妖魔は御伽噺に出てくる程度だが、この国では身近な脅威。
だからそういうものに対する『呪除け』の守りを持つのが一般的なんですって。
「それじゃあ、俺とコニッシュさんも呪除け買った方がいいんですか?」
「お二人には強力なものを準備中ですので、こちらで買っていただく必要はございません」
「「え」」
「居場所、生命反応、妖魔の接近を持ち主に知らせるなど、様々な機能がついた呪除けを持ち歩いていただく予定どす。御身を守るためゆえ、どうぞご了承ください」
「「えっ」」
なんか、とんでもないものを持たされそう〜!?
「コニッシュはんは、鑑定結果では付与する効果を増やすことになるかもしれまへんな。さ、では鑑定していただきましょう」
「は、はい」