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城下町を探索しよう【2】


「いらっしゃいませ」


 わあ、と思わず声が漏れた。

 ジェーンさんたちに案内された眼鏡屋さんには、それはもう多種多様なメガネが置かれていたのだ。

 それこそ、サイズからして不思議。

 私の腕ぐらいあるものから、人差し指サイズのものまで。

 いったいなにに使うのかしら、こんな大きな眼鏡や小さな眼鏡。

 と、ジェーンさんに聞こうとして、察した。


「い、色々な種族がいらっしゃるんですね! 色々な種族の方が、必要とされておられるんですね……っ!」

「そうどすな」


 私の膝くらいしかないジェーンさんは、小動物系の魔獣。

 蛇の魔族であるプリンさんは、背丈が私たちと同じくらいある。

 多分、もっと大型の獣系魔族の方もおられるのだろう。


「本日はどのようなものをお求めですか?」


 話しかけてきたのは縁のない眼鏡をかけた嘴がある、鳥のような男性。

 ええ、鳥だわ。

 手が翼。どうやって物を持つのかしら。

 顔、とても厳ついわ。

 嘴が大きくて、目つきが悪い……と、鳥。


「ハ、ハシビロコウ……?」

「おや、よくご存じですね」

「シンさん、こちらの方をご存じなんですか?」

「あ、いや、ハシビロコウっていう、鳥の種類?」

「まあ……」


 珍しい鳥さんなのね。

 ハシビロコウさんの店員さんは、私の魔眼を見て、すぐに「なるほど、魔眼封じですね」と理解してくれた。


「では、まずは魔眼の強さを測りましょう。こちらに来ていただけますか」

「は、はい」


 ハシビロコウの店員さんに促されて、大人しくついていく。

 板で区切られたところには、水晶玉が並んでいる。

 椅子に座らせられて、水晶を覗き込むように、と指示された。

 言われた通りにすると「ふむ、レベル1の魔眼ですね」と言われる。


「レベル、1……?」

「はい。魔眼にもレベルが設定されています。影響・効果の強さ、依存度の高さ、片目、両目、あるいはレア度……様々な要因で決まります。お客様の魔眼は影響・効果、依存度、レア度すべて最弱! しかも片目ですから、最低ランクのレベル1ですね。これならばあちらの棚ですね。あちらからお好きなフレームをお選びください」

「……!」


 さ、最低ランクの、レベル1……!

 なんということでしょう。

 私の魔眼は大したことがない!?

 でも、学園ではあんなに被害が出ていたのに……。


「コニッシュさん、終わった?」

「は、はい。あちらの棚……ですか?」

「はい。用途によってフレームを変えたい場合はご相談ください。ご説明いたします」

「あ、え、ええと……普段使い……ずっと魔眼を封印しておきたいです」

「でしたらフルフレームの方がよろしいかと思います。レンズの魔石に強度アップと曇り止めも付与すれば、日常使いに最適かと」

「そ、そうなんですね」


 眼鏡が初めてなので、店員さんの説明にはただただ頷くのみ。

 試しにかけてみたフルフレームというのは、思ったよりも重い。


「? あれ、コニッシュさんが消えた?」

「どちらへ行きはりはったんでしょ」

「おかしいですね? 魔力まで消えました。ジェーン、あなたの鼻で居場所はわかりませんか?」

「匂いはここにありますが……」

「あ、あの」


 なにやら皆さんが困惑し始めた。

 私も少し困惑している。

 皆さんが私を探し始めたのだ。

 私は思い切り目の前にいるのに……眼鏡をかけた途端に、どうしたという……あ。


「あの」

「わあ! コニッシュさん! どこにいたの!?」

「ず、ずっとここにいました」

「え? でも……」


 皆さんが顔を見合わせる。

 もしかして、と思ってもう一度眼鏡をかけてみた。


「コニッシュさんが消えた!」


 やっぱりですか?

 眼鏡を外してみる。


「コニッシュさんが現れた!」

「眼鏡をかけると消えるみたいですね」

「そんなことあります? コニッシュはん、なんか心当たりは?」

「わ、私……生まれつき、存在感がなくて……。魔眼を授かってから、人に話しかけてもらえるようになりまして……」


 魔眼は私の存在を周囲に認識させる効果も持っていたのだ。

 それまでは『存在感が薄い』『もはや空気』『佇む姿は亡霊のよう』『スウ伯爵家の長女は霊嬢』と、散々な言われようだった。


「髪の色は老婆のようですし、赤い目は不気味だからと亡霊霊嬢……伯爵霊嬢と呼ばれておりました」

「そんな……そんな言い方……!」

「人間はみんなそんな髪色というわけではありまへんの?」

「はい。普通の方は茶色や金色の方が多いです。瞳も茶色や青や緑の方がほとんどです。私は、ずっと呪われていると言われてきました。存在がたまにしか確認できないから……」


 ああ、いけない。

 また心が沈んでいく。

 家族も、家の者も、誰も悪くなどないのに……。


「コニッシュ・スウは絶望に染まった魂で呪いを集める——」

「?」


 シンさんが小声で素早くなにかを呟いた。

 小さな声、それに早すぎて聞き取れなかったけれど……今私の名前を呼ばれたような?


「なにか原因があるんじゃないかな!」

「っ!」


 シンさんが突然私の両手を掴む。

 え、ま、待って、待って待って、ち、近い!

 近いです近いです!


「原因どすか?」

「うん。だって今の消え方ちょっとおかしかったじゃん! まるでそこから消えていく感じでさ。魔眼以外にも、コニッシュさんはなにか持ってるんじゃない? そういうの調べられないの?」

「……! なるほど……シン様のおっしゃりたいことがわかりました。コニッシュ様には、常時発動するスキル、もしくは呪いの類がかけられているのではないか、ということですね」


 プリンさんが簡潔にシンさんの言いたいことをまとめてくれてのだけれど……さらりと『呪い』って入ってましたね。

 の、呪い? 呪いって、妖魔を縛る、あの呪い?

 な、なぜそんなものが?

 呪われた覚えはないのですが?


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