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生きる場所を選ぶ【5】


 そ、そうか、シンさんは妖魔に狙われているんだ。

 私よりもずっと大変なんだ。

 そうだよね、異世界から突然聖霊神に招かれて……今までと全然違うんだろうし。

 その上で命を狙われるなんて、ひどい話だよね。

 それに比べて私は自分で「死にたい」なんて……。

 シンさんの前で言うべきことでは、なかった。


「あ、あの、それなら私、働きたいです。昨日ジェーンさんに『この屋敷で働いたらどうか』と言ってもらって……。役に立たないなら、役に立つことがしたいです。……あ、あと、その、魔眼を……なんとかする方法、とか」

「魔眼は魔力封印の眼鏡なり眼帯なりでもつけたらいいんじゃないかな? 魔眼持ちはありふれているし、封じることは難しくない。どっちがいい? 女の子だし眼鏡かな、やはり」

「……え? ……そ、そんな簡単に封じられるんですか……?」

「強力なものなら眼帯が確実だが、君程度なら眼鏡で十分だと思うよ。今日中に買ってきたら?」

「えっ?」


 か、買って……買ってきた、ら? え?

 買ってこれる、ものなの?


「それからうちの屋敷で働くのも構わないけど……神子を使用人にしたら兄に怒られそうだから、できれば少しおとなしくしててほしいなぁ。というより、使用人になることにこだわりがないのなら、まずはうちの国を少し見てくるといい。人間の国とは違うところがあるだろう。行くのならシンも連れて行って、二人で町を見ておいで。一人で出歩くより心強いだろう、二人とも」

「あ……」

「そ、そうですね」


 優しい眼差し。

 シンさんと顔を見合わせる。

 ミゲル様は「もちろん護衛はつけるけど」と言って昨日の蛇の美女を呼び出した。


「プリンというんだ。プリン、城下町でコニッシュに魔眼封じの眼鏡を買ってきてあげるついでに案内を」

「かしこまりました」

「夕飯前には帰ってくるんだよ」

「え、あ、え、い、今から、ですか?」

「早い方がいいんじゃないの?」

「…………」


 でも、外は夕方。

 夕飯前って、あまり時間がないんじゃ……。


「殿下、店はまだ開いてないのでは」

「ああ、そうか。人間は昼間に起きているというものね」

「? ……あ……」


 そういえば昨日ジェーンさんに「夜が魔物の活動時間」と教わった。

 今は夕方。

 だから、この魔族の人たちにとっては日が沈んだ空が活動時間なのか。


「あの、もしかして夜にならないとお店が開かないんですか?」

「そうだよ。……というより、今の時期は百朝(びゃくちょう)の時期で()()()()()んだ」

「?」

「太陽が出る?」

「そうだよ。百朝の時期以外はずっと陽が出ない。それがこの国……闇の聖霊神が結界で守護する『ファウスト王国』だ。多分結界の中だから宵闇が支配しているのだろう。百朝はあと二ヶ月くらいは続くね」

「!」


 陽が上らない……!

 そんな、みんなどうやって生活してるの!?


「た、大変じゃないんですか? 暗くて……」

「魔族は夜行性が多いからあまり困らないよ。たまに迷い込んでくる『セレンティズ竜王国』の人間は『太陽が出ている時間が短くて不便』と言っているけれど」

「セレンティズ竜王国……?」


 なんだろう、それ。

 聞いたことがない国名だわ。


「あれ、知らない? まあ、結界の間には『惑いの森』があるからな……。『セレンティズ竜王国』は魔獣が進化した最高上位種ドラゴンが治める国だよ。我が国にいる魔獣は知性が高いが小さくて力はない。そのぶん知性を伸ばした種だからだ。だがドラゴン種は違う。力だけでは到達しえない領域に至るために、知識を得た種が進化を兼ねて至高に至った。その進化の最終地点がドラゴン」

「っ」


 魔獣の最終地点……!?

 では、『レイヴォル王国』に伝わる『魔人の国』って、そっちのことなのでは!?


「うちの国とは友好な貿易国なんだ。『セレンティズ竜王国』も闇の聖霊神が守護聖霊神だから」

「そ、そうなんですか」

「だからコニッシュは『セレンティズ竜王国』に行っても神子として大切にされるよ。もちろん招き人のシンもね。うちの国にいてほしいけど、神子と招き人の意志に反することはしてはならないから……もし二人が『セレンティズ竜王国』を頼るというのなら補佐するよ。すごくうちの国にいてほしいけど。すごく」


 すごくいてほしいのはなんとなくわかりましたけど、それほど……?

 シンさんはともかく、わ、私も?


「人間の国とは国交がないんですか」

「まあ、元々戦争が苛烈しすぎた結果神々が間に入るほどだからね」

「まあ、コニッシュさんをこんなに追い詰めるような国には俺も行きたいと思いませんから、別にいいですけど」

「そうだね、ちょっと……聞いただけでも不快だね」

「そ、そんな……悪いのは私なので……!」

「「いやいや」」


 二人揃って!?


「まあ、どこの国を拠点にするにしてもコニッシュはまずその気になる魔眼をなんとかしたいんだろう? 店が開き始めるのは陽が沈んでからだから……うーん、そうだな……それまではシンと少し話でもしていたらどうだろう? 僕はこのあと君達の話を兄にしなければならないんだ」

「ミゲルさんのお兄さん……王様なんですよね」

「そうだよ。神子と招き人の二人が同時に現れるなんて前代未聞なんだけど」


 え?

 前代未聞?

 え?


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