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勝利の味

 はーあ、やっちまったよ。なんか残ってるやつが弱すぎてどうあがいても負ける相手じゃなかった。


 うわぁ、やだなぁ。決勝戦、最初の一撃で吹き飛ばされてKOされたふりしよ。


 そして戦いが始まったわけだが、本当に気が乗らない。今の練度で勝てるわけないもの、そして金よりは上級通行証の方が欲しい。

 早く強くなって拠点に帰りたい。相手はまぁまぁの速度で走り込んできて、拳を振り抜く。俺は剣で受け止める。それなりの衝撃はあったが、戦えないほどでは無い。


 もしかして俺、戦いの中で成長してる? 主人公みたいじゃん。


 とか思ってたらとてつもない速さでラッシュを浴びせてくる。なんとか捌き切れると言ったレベルで、油断したら死にかねない。


 その間にも俺は勝利の種を蒔いておく。今回は足場を凍らせてみました。


 が、とてつもない脚力で舞台をめり込ませながら動く事で突破された。やはりある程度以上の強者は化け物感が漂うよな。


 息を切らすこともなく延々と連打を続けてくる。よし、なんとかダメージが入った。麻痺毒だ、余裕ブッこいてる暇はない。


 動きが多少鈍くなっただけでたいして変わらない。ギフト以外で毒耐性がある人間とか聞いた事ないんだが。


 魔力で毒の周りを遅くしてるとかだろうか。だとすれば見た目の割にかなりの頭脳派だ。


 まぁ、ゴリラも頭いいって言うしとか言ってる余裕は本当に今回ない。


 ちょっとづつ抑えていた出力を上げていく。武器が悲鳴を上げるかのように軋む。


 相手は素手だというのに傷がほとんどつかない。武装系のギフトだろうか。不明だ。


 とにかく、麻痺毒をチビチビ流す事とパワーの把握を両立してなんとか形成を立て直していく。


 すると、相手は咆哮を上げ筋肉が一回り大きくなり、その目は赤い光を灯す。


 もういよいよ魔物じゃ無いですかやだ。勝てそうに無いな。うん、辞退しようとか思っていた瞬間俺の肩にとてつもない爆音と共に衝撃が走る。ミシミシと骨がなり、折れなかったのが不自然な程だ。


 その場に留まりはしたが、何発も受けていい技じゃ無い。

 

 鳴り響く無数の爆音、目でおいガードするのがやっとだ。仕掛ける余裕もなく、全くどうしたものか。使えるものは石化、はギフトでも珍しすぎるし忌避されるのでパス。魅了も同様の理由でパス。隷属は絶対ダメだし。


 うん、ちょっと頑張ってみたけど勝ち筋が見えん。


「頑張れ、主よ故郷で待つ娘に優勝届けるぞ!!」


 えぇ、それは確かに優勝したんだぜって言いたいけどこの化け物相手にバトルモード無しってハードすぎんか。


 まぁ、やるか。


 とにかく速さパワーは高いが先程より大振りになっている事から技量は下がっていると推測、なので。


 受け流してその一瞬の戸惑いをついて攻撃を挟む。一度の油断であれだけのダメージを受ける。もうもろに食らうのは御免だ。


 膠着状態が長引いているが客席は皆固唾を飲んで見守っている。


 戦いの轟音以外は静かなこの場所でいよいよ勝負がつきそうだ。


 相手の体は煙をあげ、どうやら活動限界と言った動きとなってきた。最初と比べて動きのキレも落ちてきている。

 相手は無我夢中で拳を振るう。


 何の為にここまでの冒険者が頑張るんだろうか。プライドってやつだろうか。


「私は、勝たなければいけない!! 病気の弟のために!!」


 まさかの此処でいいエピソード持ちですか。うん、これは負けてもいいよな。でもここまで頑張ったんだ。勝利は、俺がいただくよ。


 一瞬の隙をぬい顎をかちあげ、腹に乱打。


 しかし相手も耐え切り一撃。俺のマスクにヒビが入る。ここまで熱い戦いはいつぶりだろうか。


 決着は突然に来た。相手は突然膝を突き、血を吐き倒れた。


 流石に無尽蔵の力というわけでは無いのだろう。

 それこそ無尽蔵だったらパワーのみなら魔神越えだろう。


 魔法が無かったからこそ耐久で勝てたが、あの連打以外に魔法や小細工をしてくる相手なら確実に勝てはしなかっただろう。


 相手に敬意を評して一礼して部隊を降りる。


 遅れてこの大会史上最大の歓声が響き渡った。


 賞金は辞退し、ゴリアーティの賞品と変えてもらった。


 彼女は回復魔法は施したものの結局最後の賞品の受け渡しに来ることができないほどに神経系にダメージが残っていたのだろう。


 俺が早くに負けてやった方が良かったんだろうか、とやはり考えてしまう。


 多数の傭兵部隊やギルドからの勧誘を断り、帰路につく。優勝したのに、なんだろう。全然嬉しく無い。


 仮面が割れ、地面に落ちる。


 水滴が空からぽたぽたと降ってくる。雨か。

 俺は雨に打たれながら宿への帰路を歩いた。人通りは少なく、俺の顔をジロジロ見る物好きなんていない。


 通行証を濡れないようにカバンの奥深くにしまい、優勝記念に特別に貰った金の盾をゴミ捨て場に投げ捨てようとした。


 その時、逞しい手がそれを止めた。振り返るとゴリラがいた。


 おっと失礼ゴリアーティさんだな。


「話は聞いた。賞金を辞退する必要はなかった。貴方は強い。強い人が生き弱い人が死ぬ、そうやって世界は回っているの」


「だからその盾は誇れるもの。大事にした方がいい」


 おそらく賞金が入っているであろうトランクケースをグッと押し付けてくる。


「勘違いするな、これは貸しだ。困った時に助けてもらうためのな」


 俺は盾を鞄にしまい、そのトランクケースを押し返した。


 仮面を炎魔法で溶接し直す付け直しゴリアーティの方へ向く。


「それに困っている弟がいるんだろう? 事情は知らないが、使ってやれ」


 ゴリアーティは上を向き、その彫りの深い顔に雨が伝う。


「ありがとう」


 その声はどこか震えていて、か弱い乙女のように見えた。


 俺は優しくゴリアーティを軽く抱きしめ腕が回らなかったので肩をぽんぽんと叩いた。


「さぁ、早く行け。弟さんがお前の帰りを待っている」


 ゴリアーティは決心した顔で踏み込み爆発音と共に彼方へと消えていった。


「主よ、流石だな。昨日の敵は今日の友。しかし主は優しすぎる、主が傷ついているところは見ていられなかったぞ」


 最初から見てたんかい。なんか恥ずかしいな。


「そうか、心配かけたな」


 ぎこちない笑みを浮かべる俺の頭にふんわりとした優しい感触。


「我は悠久の時を生きる神だ。少しは甘えても良いぞ」


 と、ニヤリと笑った。なんかムカついたので、手を払い除けチョップしておいた。


 なんやかんやで目標達成だな。


 翌日俺は風邪を引いた。

 


 


 




 

 うわぁ間に合わなんだ、ちょっとリアルがかなり忙しいんで本当に申し訳ない。

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