閑話 我が名はトール
我は神也。
馬の中の馬でありながら馬を超越した存在。
何千年前に雷に打たれ不老不死となった。
あるものは火の中から英雄の資質を持った子を助け火の力を宿したもの、あるものは氷の中に閉じ込められた太古の魔神から力を贈与されたもの、ある物は土石流から村を守るべくいち早く立ち上がり立ち向かったものの己だけ助かり悲しみに暮れたもの。
我だけたまたま草を喰っていたら雷に撃たれたのだ。
なので集まる際に毎回弄られる。不服だ。
ちなみに乗り手も我だけ決まっていない。炎のイフリートは魔神殺しの英雄の子孫を、水のポセイドンは封印された古代の魔神を、土のガイアは最近神馬に選ばれ、たまたま遠く離れた地に引っ越していた街のお嬢ちゃんだったか。
まぁ、んなわけで早く乗りて決めなよぉっていっつもポセイドンのやつが言ってくる。
だからいい加減見つけようって思ってぇ。
こほん、我が主を探す為に旅に出た。奴らの中で一番古から生きており雷に打たれた時神託を受けたのだ。
「貴様の名はトールと名乗れ神託の英雄達はいずれ集うそれまでの間主の足となり腕となり矛となるのだ、いずれ集うその時まで生きよ」
その時雷撃を操れるようになった。テンション上がって我が名はトールとか言って神として奉られ土着神として奉られ毎日新鮮な野菜が食べられる生活は幸せだった。
その国は我が守り続けた事で軍事費が不要となり繁栄し今では大陸一の大国となり国の名もトール神国と名付けられた。魔神も撃退に成功し我が名は世界中に轟いた。
しかし、他国はそれをよく思わず暗殺者を送り続けた。雷の力は電気の力電磁波によって完全に把握ができる我はそんな奴らを殺し続けた。
いつもの様に忍び込んだ暗殺者を殺した際、それが他国の王子だったらしく国際問題とされ、我が王として君臨し続けるのを邪魔に思った者の隠蔽等の手助けもあり我は追放された。
言い逃れをしようかとも思ったが、もう面倒になってしまったのもある。
我はただ平穏に新鮮な野菜を食べ続けられるだけでよかったのだ。
その国のその後は知らぬ。こないだの出来事であるから百年ほど前だろうか。
その後ポセイドンに言われカチンと来て今に至る。我が感知範囲は全土に渡るのだが、異常な速さで電磁力、オーラと言うんだったかを高めたものがいた。生命力の高いものは強い磁力のようなものを持つ。我が主はこの方だとビビっときた。雷だけに。
我はその足で大陸を越え、海を抜け絡んできたクラーケンを雷撃で服従させ、送らせた。
クラーケンの足があまりに遅かったのでついた頃には主は街にいた。主たる力を持つのか試すためにまたこの森に来るのをひたすらに待った。これまで何千年も誰も乗せず触れさせず踏み越えて純潔を守り続けたのだ半端なものに最初に乗られるわけには行かない。
これほど待ち遠しいと思ったことはない。そして運命の時は来た。主が自ら森に入ってきたのだ。
我を迎えにくるかのように。
そして、我は雷と共に最速の突撃を行った。あ、名乗り忘れた!! ただの魔物じゃん我。
しかし主は攻撃を行うこともなく優しく受け止めた。
初めて優しく触れられた。柔らかい中にも渦巻く強者としての魔力、自動発動で隷属の魔法を発動させた。生まれながらの王だと言うのか。
抵抗をしようとしたが意識を完全に乗っ取られた。意識を取り戻した時に主人は楽しい波動を放ちながら乗られていた。
私もとても幸せだ。馬は人を乗せる為に生まれてきたのかもしれないな。ヤバい、泣きそう。
お、街中に行くのか主よ。主の為ならば普通の馬として生きよう。
捕まってるんじゃない主よ、人間じゃないから疎いのはわかるが。
主の背中が初めて小さく見えた。
お、ご老人を助けるのかいい心がけだ。
んー名前はクロ。
主!? その名前はないぞ。
「我が名は四馬神が一柱トール」
二度目の名乗りをする時が来るとはな。
流石にそのネーミングセンスはないぞ主よ。
「う、馬がしゃべ」
ご老人ー!!!!
はい、実は凄い馬です。彼女は基本的に主と引き離されないようにあまり喋りません多分。




