夢にまでみたもの
そんなこんなで四十階までたどり着いた。
え? 特に話すことはないよ。この先辺りでそろそろ中級エレベーターがある筈なんだが。
そろそろ外に出たい。気を張り詰め続けるのは疲れる。
前世の記憶が使えるならエレベーターで出ればギルドの認定が無くても通れるようになるパス券が貰えるはずだ。
ダメだったら最速ルートでここに来よう。手応えはほぼ無く体力が無尽蔵な事もあり、おおよそ一日で到達できたしな。
四十階のボスは黒い巨大な狼。N級の上位ぐらいだろうか。
冒険者達にも気合がみなぎっているようだ。ここは結構並んだな。素材がいらない列も距離が伸びてきていた。
ここの先のエレベーターで出る事を考えて体力配分をして来た人が多いのかもな。
流石中級、といった感じの冒険者達でかなりしっかりとお金をかけたり、ドロップであろうどうやって作られたかわからないような装備を付けている冒険者もおり、俺のこの装備でも浮かなかった。
自己暗示ではない。
今回一緒のパーティーは魔法使い権バフ兼タンクが三人だ。
中級となると出来ることも増えてくるな。
身体強化が出来るようになれば誰でもバフとタンクが可能になるからな。剣とかは才能とか練習もいるからなんともいえないが。
うん、流石に俊敏で頭もキレる魔物だったが、練度の高いパーティーの前では苦戦を強いられていた。
俺がこうならなくて良かったなっていつも思う。
戦争とか本当に王がまともでチームワークや戦術の訓練を積まれてたら死んでたしな。
優秀な個も数の力には勝てない。
まぁ、と言っても例外はあるのだが。
追い詰められた黒狼は電気を纏う。
お、ここまで出来るならC級の下位ぐらいの実力はあるか?
となると拮抗してくるな。バチバチと火花を散らしながら電撃が放たれる。
避けないとこの装備で平然と立っているとおかしいと思われるな、最小限の動きですべて避ける。
しかし、この状況にも彼らはしっかりとした連携で反魔法の障壁を張りダメージを減らしつつ攻撃にもしっかりと転じていて感心する。
やはりレベルが違うな。
ここまでだとうちの一般ゾンビ一人じゃ厳しいかもしれない。
おぉ、無事討伐した。皆しっかりと並んで一礼してくれた。俺なんもしてないけどな。
一緒に入ったパーティーは先に進むようなので、ここでお別れとなった。
あぁー、疲れた。精神的に。
うん、エレベーターあったな。
そこから上がると、無表情の女性職員から窓口で通行許可証を渡され特にやり取りもなく解放された。昼って事は一日とちょっとってとこか。
良かった、なんなら前世よりあっさりしてたな。
素材を帰りしに売る。
「見かけない顔だがかなり頑張ったみたいだな。お疲れさん、あんまり無理し過ぎんなよ、祝福も兼ねて十ゴルドだ」
かなり奮発してくれたな。これだけあれば質素に暮らせば十年は生きていける。一礼してスキップしながら宿屋へと向かう。
今日はフッカフカのベットで寝るぞー!!
俺は最高級の宿でチップ兼の二ゴルドを払い、バトラーにメモで身元の詮索はしないように、食事は扉の前に置くように、勝手に部屋に入らないようにと書いたメモを渡すとスッと服の中にしまい、部屋まで案内すると一礼して去っていった。
これで一ヶ月泊まることができる。部屋に入ると鎧を脱ぎ捨て、飛び込む。
うわぁベットフッカフカ!!
フッカフカ!!
フッッカフカ!!
「英雄ミッション、一流を達成しました。魔力を贈与します」
「英雄ミッション、成功者を達成しました。魔力を贈与します」
本当にタイミングがわからんな、ただ結構余裕があるタイミングで通知してくれているのは前々から感じていた。
箪笥の中には、バスローブと部屋着が何着か入っている。
羽を折りたたみ部屋着に着替え、燃え尽きた服をゴミ箱に捨てた。
仮面をかぶって鏡を見るが、やはりこの仮面はかっこいいな。明るい場所で見ても竜の気迫が感じられる素晴らしいデザインだ。
テーブルの上にあるリモコンでテレビをつける。お、前世より随分と画質がいいな。向こうの大陸で王が変わったのがニュースになってるな。もう伝わってるのか、かなり技術力は上がっているようだな。
運良く武闘大会のCMが入った。これが武闘大会ってやつか。いやぁ、中々に派手だな。身分不詳でも参加は可能か。
バレるリスクはあるが、優勝すれば十万ゴルドか多分無理だろうなぁ。上位十名で上級ダンジョンへの通行証か、これ狙いで出よう。ぶっちゃけ雑魚狩りは実りがない。
と、寝ようと思ったところで全身に激痛が走る。この感じは進化か。かなりミッションクリアしたもんな。
サイズがでかいと騒ぎになる。俺は窓を開け人がいない事を確認すると服を脱ぎ捨て空を飛んだ。
一瞬で視認できないほど上空へと舞い上がり仮住居の方角へと滑空した。
痛みで意識が朦朧としながらも無事森林に墜落し、そこで意識が落ちた。
俺もフッカフカのベットで寝たいです。




