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最強の生物

 ゴブリンの巣穴を駆け抜け、俺は悲鳴の元へ急いだ。


 待ってろよ!! 今助けに行くからな!!


 そこにいたのはぬらりとした肌、人間の姿には異様なほどに巨大な頭、無数の三百六十度展開されたギョロリとした目。


 魔神だ。


 体が震える。何度見ても慣れるもんじゃあない。

 やつは、一つの目で一瞬こちらを見たが意に介さず隅に固まり震えている人々の元へ一歩歩を進める。

 

 やるしかねぇだろ!?


 震える四本の足を必死に動かし、俺の角はやつの胴体を捉え。


 その角先に感じたのは異色の感覚。


 傷すらもつかない。


 俺の人生ここまでか。いや、命を張ってでも助けてやらぁ!! どうせ転生できんだろ!?


 角先を脇腹方向へと滑らせ、薙ぎ払うことによって脱出経路を作る。


 鈍い音。


 激しい痛みを鼻先に感じる。どうやら折れちまったらしい。


 俺の角を持ったまま目をギョロギョロさせながら、こちらを一瞬見た。


 濃密な死の気配、恐怖のあまり一瞬目を閉じる。次の瞬間そこには既に奴はおらず忽然と姿を消した。


 何だったんだろうか。


 まぁ、基本的に奴らには謎が多い。人間に害がある存在である事は間違い無いのだが。

 

 人間たちは急いで逃げ出した。


 どうやら助かったようだな。


 あぁー、これからどうやって生きるんだよ俺。


「英雄ミッション、魔神の撃退に成功しました。魔力が贈与されます」


 体に力が湧き溢れてくる。そんな感覚とは反対体は引き締まっていき、体の密度が上がっていく。


 かなりの時間が経っただろうか。


 このサイズ感は小型、かつ薄暗いここも昼間のように明るい事から何かしらの技能を持ってるな。


 体の感覚からしてトカゲ系だろうか。


 巣穴を出ると、一瞬目が眩んだ。眩しいな。

 そこを取り囲んでいたのは銀の甲冑に身を包んだ騎士達。


 きらりと煌めく無数の刃先が俺に向けられる。


 おいおい、こいつぁ一難去ってまた一難って奴だな。


 一斉に突撃してくる騎士をおそらく感覚的にあるであろう尻尾で薙ぎ払う。そんな意思をかき消すように聞き覚えのある声が聞こえた


「やめて!! この魔物はきっといい魔物だよ!!」

 

 立ち塞がったのは、あの時助けた嬢ちゃん。どっから出てきたんだ。


 しかし意に介せず騎士は一矢乱れぬ動きでその剣を振り下ろす。


 尻尾でその剣を受け止める、痛みは少ない。骨まで届いたところで収縮させて自切することにより、武器を奪い無力化する。


 そのまま一回転し、嬢ちゃんを丸呑みに。呆気にとられた騎士たちの隙をついて跳躍。どこかの国の紋章がついた馬共を脅かし興奮させる事で追跡を困難に。


 俺は遠くへ逃げ去った。


 ん?何故か追ってくる気配すらないな。まぁ、いいか。


 とりあえず一旦落ち着いて嬢ちゃんを吐き出す。


「助けてくれてありがとう!!」

 

 べっとべとになったんだから文句の一つでも言いそうなもんだが、本当にいい子だな。


 前世でよくあってた嬢ちゃんを思い出すな。


「魔物さん名前はなんて言うの?」


 喋れるわけねぇだろ全く。適当に鳴いてやるか。


「全部考えてることわかってるよ!! お名前教えて」


 こいつ心が読めんのか!? どんなチートギフトだよ。


「えへへー褒めても何にも出ないよー。このギフトのせいで全然いいこと無かったし」


 そうか。確かに人の心を読めるって言うのは辛いことも多かったろうなかわいそうに。


「だから今まであった人の中で一番温かくて優しい心の魔物さんと一緒に旅がしたいな!!」


 太陽みたいに満面の笑顔をこちらに向けてくる。

 まだ若いのに突拍子もねぇな!? そんなにいい人じゃねぇよ!?


「えー? そかな。魔物さんの心はねー伝わってきてもしんどくなくて元気になる」


 可愛すぎか。両手があったらギュッてしたいわ。絵面は完全に犯罪だが。


「もー変な事考えてないで行くよ!!」


 ぴょんっとジャンプして俺の頭に飛び乗ると。


「さぁ行くぞ!! 冒険の旅に」


 どこ行くねん。


「それはまだ決めてないかな」


 だと思ったよ。とりあえず、服が洗える水辺に行こう。魚でもとってやるよ。


「ありがとう!! 助かる」


 街に返してやった方が幸せなんだろうが、離れたくない気持ちが湧いた俺はつい提案をしてしまった。


 見えないが雰囲気満足げな嬢ちゃんを連れて草原を歩く。


 嬢ちゃん名前はなんて言うんだ?


「えっとね、うんとね、リズっていう名前だよ」


 そうかリズか。俺はそうだな、今世では名前がねぇな。


「じゃあ、私がつけるね!! ロドリゲスって名前はどうかな」


 めちゃ魔物っぽい名前だな。ロドリゲスさんに失礼だけど。


「ロドリゲスはね、大昔の英雄の名前なの! 仮面をつけて悪い王様とか魔神とかいっぱい倒して平和にしたの」


 多分リズ今すっごいキラキラした目してんだろうな。


「ロドリゲス物語は毎日ラウラに呼んでもらったなー」


 ラウラ?


「あー、私のお姉ちゃん!! 今はすっごい賢い学校に通ってるの」


 会いたくはならねぇのか?


「うん、そうだね。ロドリゲスの方が好きだから大丈夫」


 そんなに信用していい人間じゃないと思うがな。


「んーん!! ロドリゲスはあった中で一番好き」


 照れるな、そう言われると。


「あ!! 水場見えてきたよ」


 遠くに見える水飲み場には、沢山の動物が集まり、平和な時間が流れていた。


 これまで緊張し続けていた心が解けた気がした。


 まぁ、ワニにシマウマが喰われたりしてるが怪物とかと比べれば恐ろしさは・・・・・・。リズいるの忘れてた!!


 リズ、俺のそばから離れるなよ。


「うん!! 分かった」


 さて、とりあえず到着だ。俺が水場に近づくとシマウマやワニ達は慌てて逃げていった。


 怪物でも魔法も何も使えない動物にとってみればその膂力は脅威だからな。魔物がくれば逃げるわな。


 湖に映ったその姿は、どこからどう見ても爬虫類。そりゃそうか。慣れてない人間だったら発狂するだろうな。


 特徴的な巨大な背鰭とすらりと伸びた首。こいつはワニの子供か。魔物の進化経路的にはこいつにならない筈なんだがな。


 もちろんN級である。サイよりは子供といえ強いが、大人になっても属性魔法が使えるわけではないので上級冒険者一人で勝てる相手だ。


 魔力を送り込み、尻尾を再生させておく。


 水を飲んでいる間、リズの方を念のため常に確認を怠らないようにしておく。


 あの、俺の背鰭は物干し竿じゃないんだが。


「いーじゃん!! よく乾きそうだし」


 背中によじ登って何をしているんだろうかと思ったら、俺の背中に服をかけていた。


 軽くゆらゆら体を揺らしてからかう。


 中々のバランス能力だな。


「へーん、その程度では落ちませんよーだ」


 感心して止まっていると足を滑らせて落ちた。何をしてるんだか。


「今のはノーカンね!!」


 と、笑顔で言ってくる。将来はべっぴんさんになるだろうな。


「ありがとう!!」


 心読めるの忘れてたわ。

 とりあえず周りは安全そうなので、超音波を放ち魚を数匹仕留める。それをリズにとってきてもらい焼いて食べている間に、隙を見て川底に潜んでいた逃げ遅れたワニを喰らう。


 絵面が辛いだろうからな。見えない所で食べてやらないと。


 周りを警戒しながら川を赤く染めていると、遠くから尋常でない気配を感じた。

 


 

 

 ちょっと失踪してやろうかと思いましたが、ワクワクするストーリーを思いついたので頑張ります。

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