帰還
辿り着いたか、もう目の前がぼやけて何も見えない。
しかし、気力で前に進んでいく。
ここを解放しなければ真の平和は訪れない。
扉をすり抜け、発電所の中に入ると沢山の人間がチューブに繋がれズラっと並んでいた。
気味が悪い。これは国家が国民に隠れて行なっていた非道。捕虜や身寄りのないもの犯罪者それを魔力の電池として使用し電気を供給している。この事を全て知ったが故に俺は指名手配犯となった。
指名手配犯の言う事を聞く奴なんて数人しかいないし、知ればいわれのない罪で追われる様な状況じゃ誰かを巻き込むわけにはいかない。
俺はこの施設を隠し、かつ捕虜全員に起爆式のチップを埋め込み起爆ボタンを持った五大老を殺す必要があった。で、ついでに嬢ちゃんを救って今というわけだ。
なんでそこ回想に入らずにはしょるんだって?そんなシリアスな話聞きたいか?
まぁ、とにかく誰かの犠牲の上によって成り立つ便利さなんて無い方がいいだろ。
って事でサヨナラだ。
チューブの根幹となるコアを残った魔力を使い破壊する。
「何が起こったかわからんが助かったみたいだ!! 神様ありがとう」
まだ、この状況助かったとは言えないな。
特級レベルの魔法使いたちが押し寄せ、一斉に杖を向ける。
「動くな、貴様らには起爆チップが埋め込まれている。修理が終わるまでその場で待機しろ」
その起爆装置は全部回収したから大丈夫なんだが、どっちにしろそれが知られて口封じで魔法を放たれたら今の体調でかつ守るとなるとは部が悪すぎる。
どうしたものかと考えていると、頭上から黒い影が降り立ち、魔法使い達の耳元で囁く。
「なるほど、お前たち行っていい。この計画の首謀者は五大老、奴らはこの事件の首謀者として処刑された。ゆえに自由だ」
なるほど、そっちを切り捨てる方面で来たか。まぁいい制度ではなかったしな。
「ついて来い、外で王家直属の医療部隊が摘出手術を行ってくれるそうだ」
王が今度はこの国を治めるのか、そうか。あいつなら上手くやってくれるだろう。
意識が周り、俺は見慣れない森に放り出された。
今のは夢か? まぁ、多少心残りだったのかも知れねぇな。死ぬならもうどうでもいいやーって思ってたんだが。
体を起こすと、その手の中には起爆装置が入っていた。
あれは現実だったのか? まさかな。
「???を達成しました。栄光の証として???を授けます」
いや、だから何をくれるんだよ。いつものように、進化したりするのかなとか思っていたが、特に異変はない。
ちょっと身体がだるいくらいか。
よし!! 飛び立つぞと思ったその時、足を誰かに引っ張られる。
色んなことが起こりすぎて完全に油断してたな。昔の感覚で気配感知に引っかかってないし大丈夫だろとか思ってたわ。
空中で体を捻り、敵を見定め。
リズ?
そこには、涙で顔をぐしゃぐしゃにしたリズと、リズを肩車した見守り隊員がいた。
「なんで置いてくの!! 私も連れてって」
なんか懐かしいな。俺は翼をたたみ降り立つ。
見守り隊員は肩からリズを下ろし、その後ろに立つ。空気が読めるな。
頭をポンポンと撫でる。
俺はリズに危ない目にあって欲しくない。失いたくないんだ、だから守り切れる実力がつくまで待っていてほしい。
俺は柄にも合わずニコッと笑うが、なおも泣き止まないので、起爆装置に術式を細工して渡す。
俺はもう一つの細工した起爆装置に魔力を流す。
「なんかこの石、ロドリゲスの心と似てる」
これは相手が魔力を流した時、相手の感情を遠くに居ても感じられる装置だ。毎日魔力に余裕がある時はずっと流しておく。これならいつでも寂しくないだろう。
それに、定期的には帰ってくるさ。
リズは少し悩んだような顔をしてしばらく時間が流れる。
「わかった。でも、今度帰ってきた時には連れて行ってもらえるぐらい私も強くなるから」
キリッとした顔立ちでそう言ってくれる。本当は寂しいだろうに、優しい子だ。修行頑張らないとな。
じゃあ行くよ。
「またね」
あぁ。リズは最後に俺に抱きつき、名残惜しそうに見送ってくれた。
おかしいな。あの世界からは帰って来れたはずなのに視界が霞むな。
俺は振り返ることなく、海の向こうへと飛び去った。
そういえばタイトル被ってる話がありましたね。適当にタイトルつけたのバレましたね。
まぁ、私は自分が書いた作品がどう動くのか楽しみにしてるだけの人なんで良いんですが。こんな行き当たりばったりの作品を読み続けてくれてありがとうございます。
気が向いたら読者向けの丁寧で読みやすい作品も書くつもりなので、是非その時もご愛顧お願いします。