悔い
よし、準備完了。
土魔法で的を複数作成する。
「よし、この的を破壊できるか?」
「簡単だよ!!」
子供たちは一斉に数多の魔法を放つ。しかし、そのまとは悠然と立ったままだ。
「おいおい、教えた事誰も使ってくれてないじゃねぇか。こいつはただの土の的じゃなくて火魔法も混ぜて強固にしてる、という事は?」
少し頭を傾げて子供たちは考えている。
「勢いと硬さが必要!!」
「じゃあ、火とか水の単体では今のお前達の魔力量では壊せないな、どうする?」
「混合魔法で威力を上げる!!」
「魔法の密度を上げる!!」
色んな意見が出て楽しいよな、こういうのは。俺もたまに勉強になることがある。
「おし!!みんな良い考えだ。やってみろ」
一斉にみんなそれぞれの考えのもと放つ。いくつかの土の的にはヒビが入っていた。
「よし、みんな頑張ったな。完全に破壊する方法はこうだ!!」
俺は的に向けて手を向けると、土の的を破壊した。
「え!! なんで!?」
「土魔法の中で水と火魔法を同時に発動して爆発させたんだ」
やり方や理論などをゆっくりと説明していると、館の主が食事の合図をしてくれた。
「よし!! 続きはご飯でも食べながらゆっくり喋ろうか」
こうやってゆっくり過ごす日々がかけがえの無いほど好きなんだ。彼らが独り立ちできると思ったら勝手に出て行って良いことにしてるし名前では呼ばない。
覚えてると別れが辛くなるしな。
食事が終わり、魔法について色々喋った後、俺は満足して眠りについた。
その日不思議な夢を見た。
「忘れてはならない、決して忘れてはならない」
「貴方には試練が与えられた。悔いを取り除け」
悔い、か。そうか、俺はやり残したことなんてないって思ってたが、俺はあれをずっと悔いとして持っていたのか。
良い機会をくれるもんだ。ずっとここでゆっくりしてるって訳にはいかないな。
俺は館をこっそりと抜け出し、月夜の下石畳の街へと飛び裏路地に入り、三つ目の角を曲がり、煉瓦造りの建物の壁のレンガを同時に二つ押し込んだ。
あなたの人生に悔いはありますか? 明日死ぬかもしれないんです、悔いは残さないように。