悪人の生きがい
うっし、なんか忘れてる気がするがーー。まぁ、いっか。
俺はいつも通り店の屋台から肉をかっぱらい炎魔法で炙って食べる。
いつまでもこんな生活続けてらんねぇよなぁ。
また冒険者やっても良いんだけどお偉いがたに良く思われてねぇから多分仕事回ってこねぇだろなぁ。
通りすがりに強盗を風魔法で軽く空気を圧縮して骨を飛ばしヘッドショットを決める。
やっぱこういう輩が増えてるよなぁ。俺もだが。
五大老どもは一体何やってんだか。どうせいっつも通り地位にあぐらかいてなんもやってねぇんだろうな。
魔法と化学の飛躍的な進歩によりかなりの人間は失職し、そう言う奴らは自給自足で暮らすか俺みたいに奪って生きてる。
俺だってそんなことしたかぁねえが、生き残るためには仕方ねぇ。
俺はたんまり盗んだ食料を持って時空魔法を使って飛んだ。
崖の前に立ち、パチンっと指を鳴らすと目の前に古びた豪邸が現れる。
俺が特級冒険者になった祝いで貰ったものだ。まぁゴースト系の魔物っていうプレゼント付きで住めたものじゃなかったんだが。
扉に近づくと自動で扉が開き、上着が一人でにハンガーにかかる。
別に魔法でもなんでもない。全部ゴーストを力でねじ伏せて配下に置いた。
食べ物を出すとふわふわと浮かび運ばれていく。
「つまみ食いするなよ」
少し食べ物が跳ねた気がした。多分食べる気だったな。
あいつらは魔力だけで生きられるんだが生前の記憶でどうも食べたくなるらしい。食べたところで体をすり抜けて悲しくなるだけらしいけどな。
「おかえりなさい」
「ただいま」
透き通るような白髪の陶器のような美人が俺を出迎える。別に妻って訳じゃない。この憂いを帯びた非現実的な女性はこの屋敷の主。
実態を作ると無駄に魔力を使うはずだが俺が帰ってくるといつも実体化して出迎えてくれる。
軽くハグしていると、足元にわらわらと子供が集まってくる。
「こらこら、おじちゃんは疲れてるからちょっと休ませてくれな」
「「はーい」」
そういうと、皆扉の向こうに静かに帰っていった。
彼らは奴隷解放時に行き場を無くした子供達だ。彼らのために食料を盗んでくるわけだ。真っ当な仕事では養いきれないからな。
始末屋は仕方なくやってたからつてはあるが。
それだけは勘弁だ、それに人の人生を奪って得た金で育てたくはない。
まぁ、結局人から奪ったものではあるんだが命よりはマシだろう。
傷を回復魔法で癒そうとしたが、もう塞がっていたようだ。
少しソファでくつろいでいると、子供たちが扉を少し開いてじっとこちらを見ていたので、立ち上がって外に出る。
「よし!! じゃあいつも通り練習しようか」
子供達の顔がパァっと明るくなる。
「お願いします!!」
これが俺の人生の唯一の喜び、これだけの為に人里離れたここで生きている。
よし!! じゃあ今日は魔法の二属性混合について練習だ。皆各々練り方の練習はしてたかな?ちょっとチェックしてやるか。
私も生きがいが欲しい。