ゴブリン狩り
いってぇなぁ。
こんな最悪の日でも、空ってのは青いなぁ・・・・・・。
あ、どうも、前科何犯かは数えてないです。大悪人のドルオです。
え? 何で空見てるかって? そりゃあ、あれだよ。
サイに轢かれたからな。
あれはーー。ちょっくらしけた酒場でピーナッツをくすねた時の事だったか。
俺は、その店から出て腹を減らした嬢ちゃんにちょっとクリスマスプレゼントをしてやろうと思ったんだ。
まぁ、たまにはいい事もしないといけないからな。
んで、サイに轢かれたわけだ。
いや、一般人の日常に描写なんてありゃあしねぇよ。ふつーに酒場から酒瓶を投げられながら逃げてる最中に避けるために前見てなかったから轢かれたんだよ。
ん? その子犬はどうしたって? あー通りすがりの子犬じゃねぇか? そんな声で鳴くなよ悲しくなるだろ。
俺の人生悔いはねぇ。が、どうせなら人に誇れる立派な人生ーー。英雄さんになりたかったかなぁ。
嬢ちゃん、また寂しい思いさせちまうな・・・・・・ごめんな。
目の前が真っ暗になり、青白い光が真っ黒な地平に立ち上る床その中で白い光に包まれる。
これがあの世ってやつか。随分しけた演出だな。
もっと半裸の羽の生えた赤ちゃんが光の柱にーー。
まぁ、悪人だから迎えにはこねぇか。
あ?なんか妙な嬢ちゃんがいるな。
「ようこそ、第二の世界へ。貴方の人生の目的に向け頑張ってください」
「あ? おう、大英雄になってやるよ」
何言ってんだろうな俺、どうせだし頑張ってみっか。
うぉっ、まぶし。
目の前に広がったのは大草原、木が所々に生えて見通しもいい。魔物が数匹いるから気をつけないとな。
で、俺は何でこんなところに生まれ落ちたんだ?
おほっ、体が軽い。地面に触れる四本の足が。
四本? ちょっと待て手の感覚がねぇぞ。
わかったことが一つあるとするならばーー。
俺、人間やめちまったわ。
いやいやいや、どないすんねん!! こんなもんどうしょうもないぞ!?
冷静になろう。まずは飯だ。
すっげー草食いたいからその辺の草をもしゃもしゃとはむ。
どうやら俺は草食らしい。目線の高さとしては中型か?
何でわかるかって? 俺の前世のギフトは魔物憑依。
だから、この感覚には慣れてる。
多分サイか。サイってのはな足が早くて、身体硬化がギフトの魔物だ。筋肉隆々の体と盾のような頭三本の角が特徴だな。
ってN級じゃねぇか。民間人でも資格があれば扱える魔物で危険度は低い。
バッタバッタと魔神どもを倒して、世界を救うことは出来ねぇだろうな。
倒せてその辺の冴えねぇピーナッツ泥棒ぐらいだろうな。
やる事もないので、草原をただただ駆け抜ける。
おっ、そうだ。
たまに出てくる怪物のゴブリン轢き殺しながら走っていると、巣穴に突き当たった。
ビンゴ!!足跡とかゴブリン独特の匂いであると思ったんだよ。
懐かしいなぁ。良く防衛団にいた頃は雑用でゴブリンの駆除に行ったっけか。
血飛沫を上げながらゴブリンを突き上げ前に進むと、怪物であるゴブリンを束ねる魔物オーガが現れた。
土手っ腹に風穴を開け生き絶える。
そうだな、こいつは魔物になりたての魔物だから俺でも余裕のよっちゃんで倒せるんだわ。
怪物がある程度の経験を積んで魔力を蓄えると魔物になる。
で、それが更に厳しい生存競争を生き抜き何千年の時を経ると魔神になったり。知能を得て魔人になったりするわけだが、お勉強はその時々でいいだろ。
とりあえず、俺はその奥で攫われた悲鳴をあげていた人間達に背を向け外に出る。
魔物ってのは忌み嫌われてる。知ろうとする人間もいない。
俺に出来ることは何もねぇのさ。声をかけることもな。
あらかた周りの巣穴を潰し終わった後、サイに合ったいい寝床を探すためにおそらく最後の巣穴の外に出ようとするとケツに柔らかい温かい感触を感じた。
「ありがとー!! 魔物さん」
甲高い声を上げながら母親が走ってきてその温かい感覚が引き剥がされる。
「あの魔物さんはいい魔物さんだから大丈夫!!」
あぁ、嬢ちゃんもそんなこと言ってたっけか。
「そんなわけないでしょ!!」
そうだよな、魔物は忌み嫌われるべき生物だ。
好きなのは俺みたいな変人だけだ。ギフトが魔物憑依だったのもそういうところがあったからかもな。
おっと余計な事を考えちまったな。魔物になった今結果オーライだ!! 法律もねぇし好きなこと好きなだけやってやるか。
そういえば俺の魔獣としてのギフトは身体硬化じゃなかったな。進化の瞬間に変わったりもするんだがなんだろうか。人間からの生まれ変わりだと変化したりするんだろうか。
んーまぁ、考えるだけ無駄かそのうちわかんだろ。野生の勘的な。転生でもあんだろうかな。
なんて、やることが無さすぎてどうでもいい思考の渦にはまっちゃってたな。
その時、出た巣穴の奥深くで甲高い声でキンキン叫ぶ声が聞こえた。
今回こそは最後まで書き抜きたいですね。