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第一章 1 『戦場の妖精』

誤字脱字が数多くあると思います。


死、覚悟ならざる者に。生、あらず。

戦、無き世界に発展あらず。


ダクラー・ミカイラ 『ダクラーの伝記 第一章 一節 冒頭』





ザッー、と機器特有の雑音がヘッドセットを通して耳に鳴り響く。


「こちら、第二◯起電師団。第一小隊、少佐 ダクラー・ミカイラより貴官に伝達。我、起電師団第一小隊以外の小隊壊滅。人的被害撃大、退却許可を。オーバー」

『司令部より、通達。退却許可却下、残り数分で友軍大隊が到着予定、指示を待て。オーバー』

「数分とは!? 何分ですか! 我々は、一個小隊。敵大隊を相手するのは不可能に近い!」

『落ち着け、少佐。参謀本部からの指示を待つんだ。オーバー』

「くッ、指示を待て……。 分かりました了解。 アウト」


「通信終了」


夕暮れ時の夕日の日差しが無遠慮に私の身体を紅に染める。と、同時に滑空砲と高射砲の爆炎と爆音が戦場の空を灰の色へと染め上げていく。

無能な豚どもは、ここ。『アルト戦線』へ、到着した二日後に敵高射砲によって戦死なされた。よって、アルト戦線での第二◯起電師団の指令権は、私。ダクラー・ミカイラの物となった。


とは言っても、無能な豚が一匹二匹減った所で、戦況は一切変わる事無く、我々紳国の不利的状況なのは変わる事無かった。アルト戦線は、ダクマリア共和国の南東部に位置する広大な草原だ。無論、塹壕と砲撃跡で数年前の姿は一切と留めていないのだが。


戦場に友軍の姿は乏しく、残るのは屍のみ。


もはやアルト戦線の勝敗は付いたも同然、なのに関わらず参謀本部は無駄に兵を投入しては無駄に死なせている。絶対国防圏が、ここアルト戦線だという事は認識しているがそこまでしてアルト戦線の戦況をひっくり返したいのか?理解不能である。


天才を理解するのは無理だ。だが、ここまでくるともはや天才では無く、ただの無能な豚だ。


ザッ、と。再びヘッドセットから雑音と共に、司令部からの通達が届いた。


『こちら、司令部。参謀本部からの伝達、アルト戦線の損害絶大を確認、全兵員退却を命令。アルト戦線より北のエーテルバースにて合流指示です。オーバー』

「了解した。これより、友軍歩兵部隊の退却指示と退却支援を開始する。オーバー」

『了解。御武運を、アウト』


御武運? ふざけやがって、今までの時間で何人死んだ?何人が植物の肥料になったと思ってる。


不意に舌打ちが溢れる。


未だ敵の滑空砲は我々を攻撃しており。何人もの兵が血を流していると言うのに、奴らは安全な紳都で葉巻とティーカップ片手に戦線の指示か……優雅なものだ。


「こちら、第二◯起電師団。全アルト戦線通信部へ伝達。全兵員アルト戦線離脱を開始せよ。繰り返す、全兵員アルト戦線離脱を開始せよ。オーバー」

『ザッー りょ、了解。ただ今より前線離脱します。オーバー』

「了解した」


とは言ってもこんな戦場から離脱なんてほぼ不可能だろう。

さて、指示は通した。我々、第二◯起電師団も退却を。


「少佐! 敵、起電師団。一個大隊がこちらへ向かって直進してきます!」

「なっ、何んだと今と言う時に……ああ。凶運だ。貴様ら私を置いて退却しろ、命令だ」

「貴方を置いてなんてできません! 私もここに残ります! 」

「ほう。貴様、上司の命令に背くのか? という事は相当な処罰は覚悟出来ているんだろうな?」

「しょ、少佐……」

「いいから黙って退却しろ命令だ 」

「くっ、了解です……御武運を! 」


ああ、やってくれたな。あと少しで退却できたと言うのに、

敵、共和国も必死なのだろう。我々、紳国が東ヨルヘルを占領して以来、共和国は後退せざるを得ない状況だったからな、ここで押し返せなかったら間違いなく敗戦するだろう。


「なんたる偶然。私が、この戦場にいた事を後悔させてやる」


単純に考えると一個大隊を一人で全滅させるなど無謀な話しだ。

先程から、下方でドンドンうるさい滑空砲だがこの程度ならば野戦砲でも打ってる方がまだ火力性は保持できるだろう。

どうやら大隊は、四個の小隊で構成されているみたいだ。狙撃隊に、突撃隊、護衛隊、駆逐隊。

この、四隊で構成されている。


「さて、国境を超えたパーティーを始めようじゃないか。共和国兵士諸君」





私が誕生したのは、新生暦五年。そして、我々紳国と共和国の戦争が開戦した年は、新生暦十五年。

運がいいのか悪いのか。知らないが、取り敢えず私は戦前ベビーとして生まれてきたわけだが、

誕生した家庭が余り裕福では無く。誕生して、二日で孤児院の前に捨てられていたと言う。


全くもって良い生まれでは無かったな。


この頃から私以外の常人は皆、豚としか見れなくなった。

常人とは食って寝てを繰り返す無能どもだ。分かりやすく言えば貴様らと同種族の事だろう。


少女期に入ると、起電差反応検査を受ける事になった。この日、起電検を受けなければ間違いなく私は兵士になんてなっていない。

起電〈デンサー〉とは?自らの身体から高電圧の電気を生成できる人の事を指す。

この起電能力を保持している人物は、一万人に一人の確率で誕生するらしい。その為、紳国は死にものぐるいで国中の起電調査を行なっているのだ。

もはや現時代、起電〈デンサー〉無しで戦線での勝利は考えられない事となっている。


さて、ここで起電が持つ能力を生かした機動法を紹介したいと思う。

まずは、起電高電圧飛行システム〈デルカニーデンサー〉。この、飛行手段は紳国だけでは無く世界を震撼させる事となった。


起電が起こす電気圧力をエネルギー元として、化学反応を起こし。反応で発生した未知のエネルギーを圧縮し一気に噴出しながら高速で空を舞う。それが、起電高電圧飛行システム〈デルカニーデンサー〉である。


高電圧飛行システム〈デカルニーデンサー〉は、どちらか片方の足と手に装着して使用する。

無論、使いこなせる様になるまで約五年程掛かるのだが?私は、その平均の半分以下で学習過程を完了して起電士学校を無事卒業した。


次は、この起電部隊を使った始めての戦闘を貴様らに教えようかと思う。

起電部隊は新生暦二十五年に初戦闘を行ったわけだが、この年は私が誕生して丁度十年が経過していた。

当たり前の事だが、私もその戦闘に参加する事になる。が、酷い事に私含めて五○人で構成されていた起電第一師団、一個大隊は戦闘開始から数分で半数以上が戦死した。

その理由は、未だに分からないが。噂によると共和国のトップ起電兵が一人で大隊に突っ込んでいき、壊滅させたとか。

だが、その戦闘で出した戦死者は多かったものの、高射砲や滑空砲で撃墜された兵は一人もいない。

と、言う事は敵の起電士を省けば戦場での生存競争での上位は我々、起電師団と言う事となる。

実用性は、そこまで低くないと言うわけだ。

さて、これについてさらに知りたい者は、図書館にでも通え。私から教えられる事はもう無い。


ダクラー・ミカイラ 『ダクラーの伝記 第二章 一節我の誕生そして起電士へ』



「さて、与太話はここまでだ。次の話しへと進ませて貰う」


ダクレハ講師は私を見るなり深い溜息を吐き顔を歪めた。女が勉学に励む事が気に食わないのだろう。

これだから、旧時代の豚共は困る。未だ女は勉学などするものでは無いと考えいるのだ。

加えて私はまだ十五歳、来月迎える誕生日で十六歳となる。そんな、子供が周り大人だらけの中で同じ立場に立ち勉学に励んでいるのだ。

講師からすれば相当気に食わないだろう。


そんな講師を見るなり私は優しく微笑み、そして再び黒板にへと視線を写す。それが日常だった。


「このように起電師団を南東から出撃されるにあたって飛行可能な高度は約何メートルだろうか?この問いかけが分かるもの答えよ」


私は優雅に右手を真っ直ぐに掲げた。


「はい。ダクレハ講師」

「くっ、他の者は居ないのか?」


無論、この問いかけに反応した生徒は一人も居ない。


「いないようなので発言したいと思います。まず、この話に出てくる東南には、サマエリア山脈が連なっており、飛行高度は約二○メートルが限界。理由は、高度三○メートル以降は凄まじい強風が吹いておりその中を高電圧飛行システムで飛行するのは不可能に近い。そう考えると、高度は一○メートルから二○メートルを、飛行するのが最適でしょう」


一息着くと速やかに椅子に腰掛けた。

まったく、ここに人間は居ないのか?居るのは無能な豚ばかり、これぐらいの初期演算能力はあって当然だと言うのに、こんなのも分からないとは紳国も腐ったものだ。


腑に落ちるな、誰も食って寝ての生活をして居るのだろう。


キーンコーンと、授業終了のチャイムが空気が凍る教室を無遠慮に包み込む。


「今日の授業はここまでだ、以上。散開」



さて、今日の授業は午前で終了だったか。

ランチにでも行こうと思っていたのだが、どうやらお遊びの時間になるようだ。

まったく、豚のお遊び相手になるのも楽では無いな、


「やあ、ミカイラ君。ちょっと、付き合ってくれないか?」


私は今、数人の大男に囲まれている。

無理は無い、こんな年下の少女に学力で勝てないのだ、ましてや先日行われた機動派格闘訓練では私が首席を取ると言う快挙を残してしまった為か、豚共も相当腹が立って居るのだろう。


「いいですが、のに用ですか?」

「いや、ちょっとしたしつけだよ。心配しないでくれ」


しつけか。

相変わらずレベルの低い発言をして来るものだ。


「わかりました。では、行きましょう」

「お、おう」


この後あの男達に聞いた所、あの時の私は物凄い笑顔で今日室を出て行ったらしい。




連れて来られたのは起電士学校の裏にある大きな倉庫だった。数年前まで、この場所で高電圧起動システムの開発を行っていたらしい。

中は薄暗く真夏日だと言うのに肌寒い。


「さて、しつけを始めようか」


その言葉と同時に大男達の拳が私目掛けて真っ直ぐに飛んで来る。私はそれを軽い動作で避け、そのまま落ちていた缶を片手に持ち起電質力を極限まで抑えて体内から放出。


まあ、当たり前だが豚共は共に皆吹っ飛び暗闇に姿を消した。

喧嘩の基本を知らない豚共、さすがだな。起電士学校首席の私に喧嘩を売ると言う判断をした時点で、奴らは豚以下のごみくずと言えるだろう。


たった数秒の出来事であったが久しぶりに解放感を感じる事が出来た、その点に関しては豚共に多少の感謝はしている。

つまらない毎日だ。もっと、こう。私の背筋を凍らせる程の出来事は起こらないだろうか?

まあ、起こらない事が平和というものだが。ちょっとした事くらい起こってほしいものだ。




人間とは人間に流される生き物である。とある、心理学者が言った言葉だ。

否、私はそうとは思わない。いや、この言葉を言った心理学者の思想を否定している訳ではないよ。

ただ、私が人間と認識している豚がいないものでね。

この言葉を私なりに定義するなら。


豚とは豚に流される生き物である。


どうだい?分からなくはないだろう?

豚は皆、豚だ。人間は皆、人間だ。そうだろ?

この世界に存在する、人間は皆、豚と対して変わらない生活をしている。

起き、喰って、動き、寝る。この繰り返しだ。そして、短い人生と言うつまらないゲームが終了する。

この流れがあるから、昔から今現在まで人間の姿をした豚はこの定義をくつがえす事なく、淡々と人生を終わらせてきた。

そう、これが普通なのだ。


さて、ここで問いだ。

君は今日で人生を終了します。さて、そんな君に私はある問いかけをしました。それは、今まで生きた人生で一番記憶に残っている出来事は?

そう、質問する。


君はなんて答える?


大体の豚共は、成人してから先の事をこたえると思う。

それはなぜか?

忘れているからだ。少年期、幼児期の事を忘れているんだ。

誰として、この人生が終了するまでに至るまでに重要な成人までの間を大切に育ててくれた、親の事を覚えていないんだ。

虚しいものだよ。


ああ、ここで時間のようだ。さよなら、またいつか会う日まで……





「んん……」


朝日がカーテンを突き抜けて、私の幼い顔を照らす。

如何やら、今日は晴れのようだ。

私はベットから重い身体を起こして、直接日光を浴び。目をこすった。

窓を全開に開き、朝一番の空気をまだ起きていない身体へ取り込む。

そして、夜の間に溜まった邪気を思いっ切り吐いた。

勘違いしなでくれ、深呼吸をしたまでだ。


時計に目を向けると、五時十五分を指していた。

そして、毎朝の様にラジオを付けて朝の新情報を耳から脳へと送っていく。


『おはようございます。今日の紳都の天気は快晴です。さて、今朝入った情報です。我、国陸軍は共和国軍と東トーロにて、戦闘状態に入ったもよう。そして、今朝二時に共和国へ宣戦布告いたしました』


おいおい、本当に言っているのか?共和国と言ったら世界の列強に入る程の国力を有しているんだぞ。

どう考えても、太刀打ち出来る相手じゃない。


どうやら、上の指揮官様達はいい加減本当に頭がいかれたようだ。


『ただいま、国民総動員法が発布されました。国民の皆様は落ち着いていつも通りの生活を心掛け下さいい。繰り返します、国民の皆様は落ち着いていつも通りの生活を心掛けて下さい』


「国民総動員法が発布!? 」


どういうことだ。基本的に国民総動員法とは自国の兵隊が足りず、国民を総動員し。市民を戦地へ向かわせる法律なのだか。

開戦して、数時間で国民総動員法とは……何故、紳国はここまで追い込まれる程の強敵に宣戦布告をしたのか。勝てると言う見込みがあったのか?


まあ、そんな事は正直言ってどうでもいい。私はただこのつまらない日常から脱せる事自体喜びである。

――神よ。我への刺激、感謝いたします。


両手を組み、神への祈りの姿勢をとる。

ああ、ようやくだ。ようやくこの日常からおさらば出来る。




「さあ、戦争の始まりだ」







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