情念少女
何かを忘れている気がしてしょうがない
忘れ物か物忘れかなんてわからない
少女は急いで教室へと戻るけれど
ここは自分の居場所じゃない、と気づくばかり
帰り際、焼却炉の中から、声がした
不思議なことに、自分の声がした
熱にうなされている
それは、どうあがいても他人事にはならなくて
髪を伸ばすか伸ばさないか程度に
手を伸ばすか伸ばさないかで悩んでいる
焼却炉で燃やされた情念が、黒い雲になって夕空に浮かんだ
じきに、雨が降る
そうだ、思い出した
新しい傘を買わなくちゃ