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No 14 告白

14話です


リーシャをダンジョンから助け、ダンジョンから帰還してから3日。


あれからリーシャには会っていない。



都市は日没が終わり、夜に覆われている。


夜を迎えた商店街は賑わいを増し、酒場からは騒ぎ声が漏れている。


特に城の正面に位置する通りはより一層騒がしいく、家族での外食、飲み会、ダンジョン帰りの冒険者、たくさんの人達で溢れている。


そんな大通りを城と逆の方向にしばらく歩いていくと目につく酒場の一つであるフィア。


そこで俺はいつも通り酒を飲んでいた。


いつもと違うのは、普段は端っこのテーブルで一人で飲んでいるのだが、今日はおっさん達と一緒ということで中央付近のテーブルで飲んでいる。


最近なにかと有名人になってしまい、ただでさえ視線を集めてしまうから、正直こんな席に座るのは遠慮したいとは思ったのだが、あまり気にしても仕方がない。


「クーガよぉ!最近の調子はどうなんだ?」


話しかけてきたのは正面に座っているレンジさん。スキンヘッドの似合うワイルドな感じなおっさんだ。まあおっさん3人ともワイルドではあるのだが。


「はあ、まあ、そこそこっすかね。」


「はっ!ぬゎ~にがそこそこだ!ほいほかランキング上げてきやがって!いったいどうなってんだ!ガハハ!!」


俺の返事に噛みつき背中をバシバシと叩いているのはリュートさん。長身でごつい体のおっさん。何が面白くて笑っているのかはさっぱりわからん。


「ほんとそれだ。いったいどんな手を使ってるんだ?ほれ!おじさんに言ってみ?ん~?」


横から肩を抱いてきて、訳の分からんことを言っているのはベイルさん。身長は低いが、強面でヤクザみたいな顔したおっさんだ。もう酔ってやがる。酒くせぇ。


本当であればこの中にリーシャも入っているはずなのだが、なんか予定があって後から来るらしい。


「いや、別に普通に魔物倒してるだけですから。」


「いやいや、こんだけランキング上げて普通とかないだろうが!」


「いやだから普通ですって。」


「じゃあどこの魔物を倒してんだ?」


「ん~、70~90層?くらい?」


「「「ブフッ!!」」」


三人一斉に噴き出しやがった。きたねえなあ。


「・・・少年、それを普通とは言わないんだよ。」


「「ガハハハ!!」」


ほんと何が面白くてわかってるのかさっぱりわからん。このおっさん達は酒が入ると基本しゃべるたびに笑ってるからなぁ。



「ところでよ、お前、リーシャとはどうなんだ?」


それから暫く、なんとなくおっさん同士の会話を聞きながら黙って酒を飲んでいると再びレンジさんが声をかけてきた。


「どう、とは?」


「だからよう、お前それはそれだ。あれだよ。」


いやどれだよ。全く分からんわ。


「要するにだな、お前はリーシャのことどう思ってるんだ?」


横からベイルさんがレンジさんの問いを訳してくれた。今ので分かるとか・・・これが以心伝心ってやつか。


「どうって、まぁ、いいやつだな~って。」


「「「・・・ハァー・・・・・・。」」」


俺が答えるとあからさまにガッカリした顔をされ、なんかめちゃくちゃ哀れな目で見られてため息までつかれた。解せぬ。


「そういうこと聞いてんじゃあないんだよなぁ。」


よく分からず首を傾げると、レンジさんが続ける


「だから、おんn・・・ん?」


レンジさんが続けようとすると、店内が急に静まりかえっていた。


静まり返る酒場の視線の先には、リーシャがいた。


確かにリーシャは有名人だし、視線を集めるのはいつものことだ。だがこの酒場に来ること自体は別に珍しいことではない。


問題はリーシャがいることでなく、その服装だ。


いつもは派手で露出の多い服を着ているのだが、今着ているのは露出の少ないおとなしい感じの服で、スカートまではいている。いつもはショーパン。リーシャのスカート姿なんて初めて見た。新鮮で可愛いのは可愛いのだが、酒場の雰囲気には全くあっていない。


リーシャはそのまま視線を集めながらこちらに向かってきて、俺の隣に来ると


「え~と・・・お隣良い、ですか?」


なんか敬語を使いだした。


酒場の空気が固まった。


「・・・?え、あぁ、どうぞ・・・?」


なんか思わずこっちまで敬語で返しちゃったけど・・・俺なんかしたっけ?おっさん達も唖然としている。


「えと、じゃあ、失礼します・・・。」


・・・?マジでどうしたこいつ。


おっさん達を見やるとすでに何か理解したようで、一様にニヤけている。


俺だけ理解が追いつかず、置いてきぼりにされている気がして焦り、おっさん達に視線で助けを乞うも、おっさん達はニヤけ顔を返すだけだ。マジでつかえねえ・・・!


「えっと、こんばんは・・・クーガ、さん。」


やべぇどうしよマジで意味わからん。


「え~と、どうした?なんか今日のお前・・・。」


「なんか・・・何?」


リーシャが俺の顔を覗き込んでくる。いつも通りの可愛い顔だが、その顔は何かを期待している様子で・・・だから・・・俺は・・・


「キモいぞ?」


空気が凍った。もともと静まり返っていた酒場の温度が一気に冷えた気がした。


「「「ブッッハ!!!」」」


その中で、またもやおっさん達が噴出した。


「やべぇ、クーガさんまじぱねぇ・・・!」


「っ・・・!やめろレンジ・・・!腹痛ぇ・・・!」


「ぶふっ・・・っ・・・!っ・・・!」


どうやらおっさん達は壊れたようだ。机に突っ伏して体を揺らし続けている。


一方のリーシャはこの世の終わりのような顔をしていた。


暫く放心していたが、気を取り直したのか、もう一度俺の方を向く。


「えっと・・・やっぱり変かな?」


どこか悲しげな顔で聞いてくるが、答えは変わらない。


「え、あ~、うん。変、普通にキモい。」


「「「ブフゥッ・・・!ッ・・・!」」」


おっさん達マジうるさいな。・・・あ、動かなくなった。死んだかな。


「てか、ほんと急にどうしたんだ?なんかあったのか?」


「えっと・・・男の子って、なんかおとなしい女の子が好きじゃん。だから・・・。」


こいつ男の評価なんて気にするタイプだったろうか?それならもっと前から口調くらい変えているはずだと思うんだが・・・。


それにいちいち言葉の歯切れが悪い。本当にリーシャらしくない。


「・・・?」


俺が首を傾げていると、リーシャは顔を近づけて、やや緊張した面持ちで口を開く。


「・・・わかんない?」


いつの間にかおっさん達は復活しており、真剣な表情で俺達を見据えている。


リーシャの顔は綺麗で、はかなげで、何かを期待しているようで、それでも俺には・・・


「あぁ、うん、ごめん、全然全くこれっぽちも。」


わからない。


「「「ブフォッ!!」」」


「やばいやばいやばすぎるっ・・・!クーガさんマジ最強・・・!」


「・・・ムードブレイカー・・・ぶふっ・・・!」


「っ・・・!ほんとやめろ・・・!腹痛ぃ・・・!死ぬっ・・・!」


おっさん達は体を小刻みに震わせ、その後、今度こそ完全に動かなくなった。


「んあー!もういいよ!じゃあハッキリ言うよ!?」


「え、あぁ、うん、どうぞ?」


リーシャが真剣な表情をして、俺を正面から見据える。


俺もリーシャの視線を正面から受け止めた。



「あたしね、クーガが好き。」


不意に心臓がはねた。


頭が真っ白になる。


言葉の意味を理解すると、顔が、身体が、急速に熱を帯びていく。


だけどそれは一瞬で。


次の瞬間には頭が、心が、冷めていく。


「・・・リーシャの勘違いだ。俺はリーシャが思ってるようなやつじゃない。」


「・・・勘違いじゃないよ。あたしはクーガが好き。」


「・・・吊り橋効果ってやつだろ。危ないところを助けられて、それで一時的にそう思ってる。それだけだ。」


「いや、えっと・・・違うよ?」


「違わねえ!・・・ずっと言われてきたんだ。役立たず、ゴミ、クズ、死ねばいいって。両親にも祖父母にも教師にも弟にもクラスメイトにも・・・!」


俺は何をしているんだろう。突然声を荒げて、言ってることだって、こんなのただのいじけたガキみたいだ。


バカみたいだ。本当に格好悪い。


もうとっくにそんなこと気になんかしてなかったはずなのに。


・・・分かってる。


気にしてないなんてのは、嘘だ。慣れたって自分に嘘ついて、誰が何を言おうと俺には関係ないって、平気だって心を騙して。俺は悪くないって。俺は正しいって。


でも、一番自分を疑っていたのは、俺自身だ。


心の奥底で、本当は俺が悪いんじゃないかって、俺には本当に価値なんかなくて、だから、両親が、祖父母が、弟が、クラスメイトが、本当は皆が正しいんじゃないかって。怖かった。辛かった。


俺は願ってたんだ。誰か俺を必要としてくれって。


でもそんな願いが叶うことはなくて。絶対に叶うことがないって思ってしまったから。


恨んだ。ふざけんな、って。


諦めた。もうどうでもいいや、って。


「分かってるんだよ・・・俺に価値がないことくらい・・・。」


本当に何やってんだろ、俺。怒ったり沈んだり、これじゃあマジでただの情緒不安定野郎だ。


「え~と・・・ん~・・・。ごめん、よくわかんないや。」


当たり前だ。俺だって何言ってるか分かんねぇよ。


「だけどさ、あたしはやっぱりクーガが好きだよ。」


再び心臓が跳ねる。


「クーガが誰に何を言われてたとか、そんなの正直どうでもいいかな。」


それでも、とリーシャは言葉を紡いでいく。


「あたしは、強くて、格好良くて、優しい、クーガが好き。大好き。」


リーシャから目が離せない。そんな顔で、そんな目で、そんなことを言われてもどうしたら良いか分からない。こんなこと、初めてだから。


「クーガじゃなきゃ嫌だ。」


そんなわけない。


「クーガじゃなきゃ意味ない。」


それは勘違いだ。


「クーガがいいの。」


そんなの、嘘だ。



なのに、リーシャの言葉に、その表情に、どうしようもなく心が揺さぶられる。


「クーガが、大好きだよ。」


なんだろう、顔が、身体が、熱い。どうしてか口が開かない。


言葉が出ない。


「え!?あれ?ごめん、クーガ、大丈夫?」


急にリーシャが焦り出す。どうしたんだろう。


気づけば、涙が頬を伝っていた。


あぁ・・・ずっと誰かに、こう言って欲しかったんだ。


俺は今この瞬間、初めて恋をしたんだと思う。


本当はもっと早くから好きだったのかもしれないけど。それでも、人を、リーシャを、本当に好きだって思えたのは、今この瞬間。


「・・・リーシャ、ありがとう。」


「んぉ?・・・どういたしまして?」


目元を拭い、しっかりとリーシャを見つめる。


「なぁ、リーシャ。」


「ん?なに?」


「俺も、リーシャが好きだ。」


リーシャが目を見開く。


涙を目に貯めて、泣きそうになりながらリーシャは笑う。笑ってくれる。


「・・・そっか・・・ねぇ、クーガ。」


リーシャが俺を見つめる。見つめてくれる。


こんなにも簡単に、目の前の女の子がなによりも大切に思えてしまうんだから、俺は案外、ちょろいのかもしれない。


「・・・なんだよ。」


「あたしのこと好き?」


「ああ。」


何よりも


「凄く好き?」


「ああ。」


誰よりも


「凄く凄く好き?」


「ああ。大好きだ。」


世界で1番。


「むふぅ~・・・。えっへへ~。」


・・・なにこの子超可愛い・・・。



閑話休題なんかてれました



「・・・さて、今日はもう帰るか。」


「え~!?もう帰るの?」


「いや、なんか恥ずかしいし・・・。」


気付けば、周りは皆こちらを見ていた。というか最初から見られてたけど。


おっさん達は3人ともニヤけながら滂沱の涙を流して顔面崩壊中。訳わからんし、正直引く。


「ぉぉう・・・じゃあ、あたしももう帰るよ。」


リーシャも分かってくれたようだ。俺達は席を立ち上がり、会計を済ませにいく。おっさんは放置。




帰り道。街は静か。それでいてかすかに店店からの笑い声が聞こえてくる。


お互いに無言。少し気恥ずかしいけど、俺はこの静寂がなんとなく心地よかった。


「あたし、家こっちなんだ〜。」


「そうか。」


「うん、じゃあまた明日。」


「ああ。」


リーシャはにへらっと笑うと、手を振りながら後退、身体を反転させ、そのまま楽しそうに小走りしながら角を曲がっていった。



今晩、俺は初めて好きな女の子が出来た。


・・・世界が、とても綺麗だ。

なんか上手くまとまらなくて長くなってしまいました。

ごめんなさい(T_T)

無能な作者をお許しくださいm(__)m

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