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No 12 敵

12話です


ダンジョン45階層、地下階段前。


階段の目の前にたどり着いた瞬間、近づくに連れて感じていた違和感が確信に変わる。


この下に、何かいる。


瞬間、走り出した。


意思とは無関係に足が動く。本能が、魂が、何かを求めてひた走る。


気分が高揚する。胸が高鳴る。この先に俺の求めるものがある。




走り出して数分、そいつはいた。オークと豚を掛け合わせたような醜い容姿、3メートルに届くだろう巨体。


そいつの正面にはリーシャが倒れていた。


まさに豚ゴブリンがリーシャにとどめを刺す直前。


豚ゴブリンは俺に気づいていない。


本能おれはリーシャに目もくれず、豚オークに突っ込んだ。


死角からの足払い。左足を軸に右足を地面にめり込ませるような勢い、豚ゴブリンの足をすくい上げるイメージで、フルスイング。


足払いの勢いを殺さず、片足立ちになった豚ゴブリンの頭に回し蹴り、奇襲は見事に成功し、豚ゴブリンは地面に顔を突っ込ませた。


リーシャが心配。そう思っているはずなのに、リーシャの状態を確認したいのに、俺は豚ゴブリンから視線を外すことが出来ない。


どうしてか、勝手に口角が持ち上がる。


大丈夫か?と、そんな言葉をかけるべきなのに、自分の意思と反して、口をついて出てきたのはこんな言葉。


「なぁ、この豚ゴブリン、俺に譲ってくんねぇか?」


リーシャは今どんな顔をしているのだろうか。確かに気になっているはずなのに、どうしてもリーシャの方を見ることができない。


リーシャの返事を待たずして、豚ゴブリンは立ち上がった。


立ち上がる豚オーク。


理性の宿るその顔面を見た瞬間、リーシャのことが頭から吹きとんだ。


体中の血が沸騰する。


本能が歓喜した。


こいつは、俺の敵になり得る存在だ。


怪物と俺、怪物は狂喜を、俺は歓喜を、互いに笑みを浮かべ、ダンジョン内で俺にとって初めて本当の闘いが幕を開けた。



「ヴォオ!!」


豚ゴブリンの左拳。


「ふっ!ぅらあ!!」


腕の上を滑らせ最小の力で受け流し、腹に拳を打ち込み即座にバックステップ。


闘いは終始俺の優勢に見える。豚オークの攻撃をかわし、カウンター。


同じ展開が開始直後から続く。


驚いたのはこいつはフェイントまで使ってくること。限りなく戦い方が人間に近い。それに加え身体能力も高く、攻撃をまともに受ければ即死は免れないだろう。


だが、それだけだ。


どんなに人間に近ずこうとも所詮は怪物。人間のそれを超えることはない。そして、俺は達人を知っている。


怪力は確かに脅威だ。


だがそれは一撃を食らうという前提が成り立たなければ何の意味もなさない。


それでも、今は優勢に見えるが、余裕がないのは確実にこちらだ。決定打がない。


何度カウンターを入れようと、豚ゴブリンに大したダメージは与えられない。せいぜい打撲がいいところだ。


攻撃に全神経を注いで全力で突っ込めば致命傷を与えることは可能かもしれない。だが、豚ゴブリンはそれを待っている。


俺が守りを捨てた瞬間、即座に俺を叩き潰しに来るだろう。そして多分、俺はそれを避けられない。


無警戒な攻撃がどれだけの隙をさらすことになるか、こいつは知っている。


このままではダメージを与えられない。かといって無理に突っ込めば待っているのは確実に死。


ジリ貧。


こちらには決定打がなく、豚ゴブリンの攻撃は一撃で俺に致命傷を与え得る。この事実に変わりはない。体力が尽きるのもこちらが先だ。


圧倒的不利。


それが分かっていながら、あえて続ける。


豚ゴブリンの攻撃を避け続け、必ずカウンターを入れ続ける。


豚ゴブリンの動きを、凝視し、耳で聴いて、肌で感じ、鮮明に捉え続けろ。


この程度の攻撃なんか当たらない。絶対当たらせなんかしない。


俺の師匠ジジィは、もっと速かった。もっと巧かった。


必殺の一撃をすべて躱し、往なし、代わりに次の一撃を叩き込め。


上がる息を無理やり押さえつけ、決して笑みを崩すな。全力で余裕を演出し続けろ。


実際に追い詰められているのは俺だが、一方的に攻撃をかわされ、逆に当てられ続け、追い詰められているのは自分だと、そう豚ゴブリンに思い込ませる。


「ッ・・・!ヴガアアアアアア!!!」


―――これを、待っていた。


僅かな焦りと、多大な苛立ちを含んだこの一撃を。


この一撃は豚ゴブリンにとって最悪の一手。


俺に向かい一直線に振るわれる、ただただ力任せの一撃。


これをかわされた豚ゴブリンは体が完全に伸びきった状態で一瞬の硬直を免れることは出来ない。この一瞬で生死しょうはいは決まる。


空中から一閃、回転力、体重、全身の筋力を、余すことなくつぎ込んだ全力の回転蹴りを、まぬけに固まった豚ゴブリンの無防備な頸椎に叩きこむ。


「うおらアア!!」


入った・・・。肉が千切り骨を砕く感触が硬いブーツ越しに足を伝う。


「ゥヴォァ・・・!?」


頚椎が砕けた豚ゴブリンは動く事も出来ず、そのまま崩れ落ちた。


数秒後、静かにこと切れ、豚ゴブリンは魔石だけを残し、消えていった。


・・・・・俺の、勝ちだ。

戦闘シーン書くって難しいですね。

なかなか膨らんでいきません。もっと頑張らねば・・・!

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