No 11 日常 夕食
11話です
端っこのテーブル席
ジジィが今日も夕飯を作ってくれなかったせいで、最近行きつけになりつつあるこの酒場、で飯を食っている。店の名前はフィアだ。なんでもこの酒場の店主の娘の名前だそうだ。
周りは酒が入っていてうるさい連中ばかりだが、別にこういった雰囲気は嫌いじゃない。
この端っこの席に他の人が座ることはまずない。ここに来る連中は皆複数人で騒ぎに来ているからだ。
よって誰にも邪魔されることなく自分のペースで食事ができるのだ。
料理はどれも美味いものばかりだ。酒場の食事なんてここ以外ではしたことないから、基準はわからんけど。
「あー!クーガじゃん!久しぶり〜」
「・・・昨日ぶりな。」
焼きそばを半分平らげだところでリーシャに見つかった。
出会ってから、2週間、リーシャは俺を見かけるたびに嬉しそうに声をかけて来るようになった。
同じ年頃で仲の良い(?)異性は俺だけらしく、他の冒険者の嫉妬があり、頭が痛くなる。
それを差し引いても、小学校卒業以来、同年齢の話し相手なんていたことがなかった俺だ。だから実は少し嬉しかったりするのも事実だ。
それでも冒険者の目が多いこの酒場で、比較的声の大きなリーシャとの会話、となると俺の感情は正直マイナスに傾くのだが。
そんな俺の内心を知らずか、リーシャは嬉しそうに笑いながら、俺の正面の席を陣取った。
誰だよ、ここに他の人が座ることは無いとか言ってた奴。
「・・・仲間はいいのか?」
「うん!なんか酒入って勝手に盛り上がっちゃってるから。」
ちらっとリーシャの連れたちであるおっさん達を確認すると、完全に出来上がっていて、3人で豪快に笑い合っていた。
リーシャが普段絡んでいるのは基本おっさんか女友達だ。
おっさん達は、ダンジョンのランキング上位者で、その関係で仲が良いらしい。たまにパーティを組んだりもしているようだ。
流石におっさん達に嫉妬されるようなことは無いのだが、面倒なのは、全く関係の無い若い冒険者の中にいる、リーシャのファンみたいなやつらだ。
今も嫉妬や殺意の視線に晒されている。胃が痛い・・・。
「食べていい?」
そう言うなり、リーシャは俺の答えを聞く前に焼きそばを口に運んだ。
「聞いた意味・・・。」
いや別にいいんだけどね?
それからリーシャとの、どうでもいい会話が始まった。リーシャは何かと俺のことを聞いてくる。
「空我って何歳なの?」
「今年で88歳になります。」
「そうなんだ!あたしは17だよ〜!」
ほーん、俺と同い年か。
「空我はさ、仲間とか作んないの?」
作んないってか作れないんだよな。
「・・・俺と合う奴がいない。」
「じゃあさ、例えばどんな人ならいいと思うの?」
「・・・歩き方が常にでんぐり返しで後退するときは背中で這って歩く人とか。」
「・・・・・。」
「ブフッッ・・・」
知らないうちにリーシャの連れであるおっさん達が俺達の近くにあるテーブルに移動して、聞き耳をたて、吹き出していた。
しかし我ながら最悪な対応をしていると思うんだが、リーシャはよく怒らないな。
まぁ、リーシャは嫌なものは嫌、腹が立てば怒る、喚きたければ喚く、という具合にこの世界では珍しい、どころかほとんど存在しないレベルのハッキリとした性格(異世界人は除く)なので、別にこの対応に不満があることはないんだと思う・・・多分。多少むくれているように見えるのは気のせい・・・きっと。
あと、おっさん達のにやけ非常に顔ウザいです。
閑話休題
「うっへへ〜」
暫くリーシャと飲んでいると、完全に悪酔いしてしまったようだ。表情が緩みきり、よだれまで垂らしそうな勢いだ。
「お前酔いすぎだろ・・・。今日はもう帰りなさい?」
「や〜だ〜!」
「そっすか、俺はもう帰って寝るわ。」
「だめ〜!お姉さん生2つ〜!!」
そう言い金を置き立ち上がると、服を掴み止められ、追加のビールまで頼まれてしまう。
「いや俺もう飲まないから、勝手に頼むなよ・・・。」
「え?・・・2つともあたしが飲むんだよ?」
・・・訂正、俺の分は頼まれてなかった。
「さいですか・・・。」
暫くするとさらに酔いに拍車がかかり、よくわからない展開になってきた。
「ねぇねぇ!今のウェイトレスさんとあたしどっちが好き〜?」
「めんどくせぇ・・・。」
「照れんなって〜!」
うりうり〜といった感じで頰を突かれる。
「で、どっち〜?」
「・・・可愛い方」
「えっへへ〜ありがと〜!」
「・・・自分の都合のいいようにばかり物事を捉えるのは長所であると同時に短所でもあると思うんですよ。」
「ッッ・・・マジ腹いてぇ、死ぬぅ!」
おっさんマジうるせぇ!
閑話休題
時刻は11時くらいだろうか。
酒場の賑わいは丁度ピークに達し、周りは一様にジョッキを掲げ、お祭り騒ぎが始まりました。
そんな中、目の前の女性はというと
「うにゅ〜、うへへへ〜・・・すピー〜・・・。」
寝ている。完全に潰れてしまっている。
困った。こいつこのまま置いてって良いのかな。
何気なく周りを見渡そうとすると、リーシャの連れだったおっさん達と目が合った。
「あの、俺もう帰って寝るんで、こいつ任せても大丈夫ですか?」
まだおっさん達は帰りそうにもないので、任せることにした。
「お?あぁ、了解した。それは良いが、ちょっと俺達とも飲まないか?」
強面ではあるが、以外と気さくな人達なようだ。
「いえ、今日は眠いのでもう帰ります。」
「ハハハ!そうか。じゃあ今度、一緒に飲もうや」
「はぁ、まぁ機会があれば。」
「おう!じゃあな」
なんか変な約束させられちまった気が・・・。
ちょっと飯食ってすぐに帰って寝る予定だったはずが・・・。
まぁ楽しかったと言えなくもないし、良いか。
再試終わりました〜。
また投稿頑張りやす(`_´)ゞ