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父の日

作者: 麗琶

少女はお父さんがとても嫌い。

毎年この日が嫌いでいつも部屋にこもってなるべくお父さんと顔を合わせないようにしていた。

ただでさえお父さんに話しかけられただけで不機嫌な態度をとっていた少女はこの日になると般若みたいな顔をして朝昼夕のご飯の時だけ顔を見せていた。


学校の友達は今年の父の日は何をあげよう、今年はお菓子でも作ろうかなと楽しそうに話していた。

テレビ曰く最近はお父さんと仲の良い子どもが増えてきているそうだ。

テレビで取材されていた親子を思い出して溜め息ひとつ。


『お父さん大好き。』


そんな言葉は死んでも言えない。

父の日のプレゼントに悩む友達を横目に明日の休日の過ごし方でも考えていた。


六月の第四日曜日。

ご飯食べなよとお母さんの声を聞いてリビングへと来た少女。

お母さんはどうやら既に出かけてしまったようだ。

テーブルを見る。

たいしたおかずがない。

お母さんいないし朝ごはん抜いたっていいや。

少女はそう考えた。

すると突然、目の前にスクランブルエッグが置かれる。

普段休日は出かけていてほとんど家にいないお父さんが作ってくれたらしい。

何いきなり。そう思いながらも他に食べるものなんてないし、少女はそのスクランブルエッグを食べた。

濃い。ただでさえ塩コショウがどっさり入ったスクランブルエッグに更にケチャップをかけている。

正直口に合わない。

そう思いながら少女はそのスクランブルエッグを食べた。

それから少女はいつも通り部屋にこもっていた。

昼は友達と遊びに行って家にいなかった。


夕方。

少女は夕飯を食べ、また部屋に戻った。

テレビでは父の日父の日とうるさい。

テレビで父の日のことをやっているからといって気が変わるほど少女は流されやすい人間ではなかった。


ふと少女は今朝のスクランブルエッグの味を思い出した。


…………。


そのまま少女は家を出た。ただ、本屋へ行くとだけ伝えて。


しばらくして帰ってきた少女はお父さんに向かって袋を投げ渡し、また部屋に戻っていった。

綺麗に包装されたそれを開けると鞄がひとつ、入っていた。

お父さんは呟いた。


「これ、ずっと欲しいって言っていたやつだ。」

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