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ジーナス  作者: ブレードガンナー
エピソード0 開拓船テラポリアス
2/2

アヴァランチ

誰もいないはずの真っ暗な船内に響く物音。それは一瞬であったが同じ階である事は確かなものだった。死体の顔に布をかけるとジーナスはゆっくりと後ろに視線を変更した。廊下は暗く続いている。そして長い廊下の両サイドには3つずつ、計6部屋の乗組員専用の寝室が用意されていた。ジーナスは目元の横にあるダイヤルを操作する。視界は再び赤外線による暗視映像に切り替わった。ゆっくりと歩き出す。ひとまず右手前の一番近い扉の前に立つ。どの部屋もしっかりと締まっており内側からは自分の動きを確認できないと思われる。ジーナスは再びゴーグル横のダイヤルを操作し直すと今度は特殊なX線による透視モードに視界情報が切り替わる。このX線はドアや窓から部屋の内部を透視して内部情報を確認できるものである。このX線が透視できないのは現在軍事施設だけである。だが部屋の内部を確認することができなかった。


「ジョー、この船は本当に開拓用のカーゴシップなのか?」

『情報ではそうなっているが、どうしたんだ?』

「いろいろおかしい。ドアをX線で透視できない。それに農業船の割には小さすぎやしないか?」

『そのテラポリアスは開拓用カーゴシップと言っても主な使用用途は商業だ。だから小さいのだと思うが。』

「いや、今すぐ確認してくれ。」


そう言って一方的に通信を切ると部屋内部に入る。部屋の中はクローゼット、机、ベッドと最低限の物だけが用意されていた。クローゼット内にも卓上にも怪しげなものはなく精々見つけたものといえば枕の下のアダルト雑誌だけであった。すぐ目の前の部屋も構造的にはいっしょであったが卓上には家族と思われる集合写真があった。下手を出た後右手の中央にある部屋に入る。そこに関しては船長室のようだった。部屋は書類や本で散らばっており足の踏み場が限られるくらいであった。するとベッドの上に1つの書類用封筒を見つける。


‘アヴァランチの輸送について

アヴァランチは凍結用カプセルに特殊コーティングされて冷凍保存されている。ただし一定周波数以上の電磁波を浴びると凍結プログラムが溶けて解凍される。解凍後約380秒でプログラムが起動するだろう。

アヴァランチのカプセルは商業惑星ウェルサムのAEー890地区にて回収する。その際に報酬を渡す。’


封筒内部には報酬金額と思われる明細書が入っていた。その額は中堅国家の予算レベルの大金である。


「ジョー、テラポリアスが航行中に磁気嵐にあったか調べてくれ。」

『ジーナス、人使いが荒いぞ。それと先ほどの要件だが、テラポリアスは商業惑星のウェルサムへの航路予定だそうだ。

おかしい、ウェルサムには開拓用の商品はないはずだ。』

「今船長室にて書類を発見した。ウェルサムでの取引内容はアヴァランチだ。」

『アヴァランチだと!?』

「ウェルサムのAEー890地区に連邦警察を向かわせてくれ。俺はアヴァランチを討伐する。」

『ジーナス危険だ。君の装備は対アヴァランチ用ではない。』

「大丈夫だ。ではまた連絡する。」


順々に部屋を探索していくと最後の部屋の前に行き着く。ジーナスはゆっくり深呼吸をするとドアノブをゆっくりと回して開く。そこは他の部屋と雰囲気が違っていた。部屋の色は薄いピンク色で統一されていて窓際には女性物の下着が干されていた。一通り部屋を見回した後クローゼットに手をかける。銃を構えた状態でクローゼットを一気に開く。


「うわああああああああ!!!」


甲高い悲鳴越えに似た叫びとともにジーナスの胸にナイフが突きつけられる。だがナイフは木の枝のごとくポッキリと折れた。

目の前にはキャミソールにパンツだけの女性がいた。顔には簡易用の酸素マスクをかぶり神は腰まである綺麗な金髪だった。


「軍用コンバットアーマーにナイフで挑むか。」

「殺すなら殺せ!!」

「……、なんだ。生存者か。」

「…、お前、その姿はなんだ。」


ジーナスの体は迷彩柄の強化服を見に纏っていた。背中には巨大なブースターを背負っており顔を覆うマスクは昆虫のような独特のデザインである。

確かにはたから見れば怪しげな風貌と言える。


「俺は、この船の救援要請を受けて救助に来たものだ。」

「救助にしては人数が少ないな。」

「船の大きさがわからないからな。後方に母船が待機している。宇宙服を着ろ。生存者はお前だけのようだからすぐに脱出をする。」

「宇宙服は、甲板の格納庫にしかない。でも甲板にはあいつが……。」

「アヴァランチか。」



つづく

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