第九十九話 応用する力
「はは……みっともない姿を見せてしまい申し訳ありません。妻を亡くしてから何故か体調がすぐれなくて。早く元気になって妻と目指した宿を作りたいのですが」
「どんな宿ですか?」
「森の中に宿を作る計画を立てていたのです。どんな種族でも泊まれる宿を」
「失礼ながらお父さんは建築家ですか?」
「ええそうなんです。ここはウォルフガング様から任されている宿なのです。働いて建築費を稼ぐと良いと勧めて頂いたのですが、本当に情けない限りで……」
言い終わると口に右手を当て咳込む。どういった病気なのか気になると共に、エルフの建築家で人間族を嫌っていない人は貴重なので国を作る際、協力者になってもらいたいそう思った。
こちらに好意を持ってもらう為にも、病を治す手助けは出来ないかと思い、アライアスを見て前に医者をしていたことを思い出して聞いてみる。
「おいアライアス、お前は前に医者を里でしていたと言っていたけど、彼の病を診断できないか?」
「無理だね。あんなの嘘だし」
「アンタどんだけクズなのよ……」
言葉を交わせば交わす程、以前のアライアスとは思えずゲンナリする。自分で考えるしかないと頭を切り替え、咳をしているのであれば肺や気管支の辺りだろう。見ていると左手の動きが少ない気がして、そちらに原因があるような感じがした。
ラオックの見立てでは恐らく呪いだろうということで、その辺りのことを聞いてみたが、どうやら里を出る時に恋人と別れておりその後復縁を迫られたが断り、人間族の町で出会ったエルザの母親と結婚したと教えてくれる。
「私はエルフの里の今の状況が嫌でこちらに出てきたのです。以前と違い表面上は澄んだように見えても、裏には何かどす黒いものを感じて……。友人にも恋人にも話したんですがあり得ないと言われ、なら私が可笑しいのだろうと思って全てを捨てたのです」
「あーそれは恨まれるかもね」
アライアスが凄過ぎて忘れてしまうが、エレイアも基本ノンデリである。はっきりそう言われエルザの父親は苦笑いした。ここまでの話を聞く限りラオックの見立て道理だろう。
ならば魂斬りは効果がありそうな気がしたので、患部を触らせて欲しいと提案してみることにする。
「あの、宜しければ少し左胸の辺りを触ってみても良いでしょうか? 治せるかは分からないのですが、ひょっとしたらお役に立てるかもしれません」
「え?」
「と、突然言われて驚くかもしれないけど、この人私の姉さまのエレクトラ王妃と知己なのよ」
「そうなのですか!? 是非お願いします!」
エイレアを見てナイスフォローという思いを込めて頷くと、彼女も察してくれたのか力強く頷いてくれる。それにしても人間族の中で暮らすエルフにとって、王妃様という存在は大きいんだなと実感した。
こんなよく分からない人間でも、王妃様と知己であるというだけで信用してくれる。出来れば今後はあまり名前を出したくないなと思いつつ、右手に気を宿らせながらエリザの父親の左胸に触れると、ブシャッという音がして黒い煙が外へ出た。
その後で左手に気を集中しながら左胸に触れ少しの間、気を送り続けてから離れる。
「……え?」
「どうしたの!? お父さん」
「あなたはいったい……。先ほどまで苦しかった呼吸が万倍楽になった……嘘みたいだ普通に呼吸ができる!」
「本当に!?」
先ほどまでの沈んだ感じから一変し、テンション爆上がりで父親はエルザを抱きかかえる。
「コーイチはやっぱり変ね」
「本当だ」
「理解不能な人間族だなコーイチは」
―恐ろしい男だコーイチ。
自分としては戦いの時と違うことはしていないつもりだが、この世界的には普通ではないのだろう。それにしても向こうに居る時は勘も働かなかったのに、こっちではズバリ的中するなんてこれもチートなのか、と思いつつ親子が喜ぶ姿を見ていた。
冒険者ランク:シルバー級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)Lv.2
魂斬り (ソウルスラッシュ)
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
クリスタルソード(王妃がエルフの里から持ち出した秘剣。追憶のペンダントが無ければ抜けない。鞘のベルトを肩から斜め掛けし背中に背負う)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
エルフのマント(裏面に魔法陣が隙間なく掛かれ、表はど真ん中にウロボロスのマークが入ったマント)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
キャンプ用品一式
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
砥石一式
鉄くずの入った袋
メメリカ草(痺れ消し草の粉末一袋)
所持金:十九ゴールド




