第九十八話 エルフ族のかけた呪い
「良いんですか!? ……でも、お連れの方の反応が正しくて、うちこんな感じなので、来て頂いても皆さん帰ってしまうんです」
しょんぼりしていたエルザは一瞬目を輝かせるも、アライアスの反応を思い出しまたしょんぼりしてしまう。子供がしょんぼりしているのは哀しいし、自分で出来ることなら力になりたい。
自慢じゃないがもう野宿にも慣れたこちらとしては、他の誰が何か言おうと屋根がついて部屋があるだけで天国である。なんだったら地面じゃないだけでマシだった。
皆いっぺん草原で布団みたいなのを引いて寝てみたらいい。今季節的な感じで言えば秋入りたてくらいで、虫があまり飛んでないだけで基本外は外なのだ。
貴重品などはテントに入れてあるが、強盗には備えないといけないし食料を狙う動物も警戒しつつ、眠るのは本当にきつい状況である。
「あの、やっぱりやめますか?」
「あ、ああごめんごめん。ついつい嫌な思い出がよみがえって来てね。やっぱりこういう昔ながらの宿の方が落ち着くから、エルザの宿で休ませてもらうよ。ご飯ももう済ませてきたから寝るだけなんだけど良いかな?」
「え!? ほ、本当に良いんですか!?」
「良いの良いの。私たち本当にお腹いっぱいでもう入らないのよ」
「あ、ありがとうございます!」
涙ぐんで喜びエルザは頭を下げた。ひょっとしてこの子は一人でこの宿屋をやっているのか、と疑問を抱いていると
「エルザ、お客さんかい?」
「お父さん!」
二回から人が降りてくる。見るとその人は横へ伸びた長い耳にストレートヘアの金髪と、明らかにエルフと分かる人だった。白シャツに茶色のベストとスラックスに靴を履き、体調が良くないのか長いストールを掛け青白い顔をしている。
「お客様、すみませんうちの娘が無理を言って」
一階まで降りてくるまでに咳を何度もしつつ、やっとこちらまできたところでそう言って頭を下げた。そういえばこの世界で医者は見たことがまだないし、重い病気はクロウ教が教会で回復魔法を使い治しているが、エルフだから手当てしてもらえないのだろうか。
―コーイチ、あれは病などという簡単なものではない。
どういうことだ? ラオック。
―黒騎士の鎧を作ったといわれている、女性の行為と似たようなものだ。ただの魔法では治すどころか原因すら分かるまい。
彼は魔法に長けたエルフだけど、それでも気付かないものなのか?
―お前も知っているように、エルフというのは固定観念大好き種族だ。そうであるはずがないことは頭の片隅にもない。例えば魔神が長老に憑りついて、精神が汚染され酷い行いをしているかもしれない、とかな。
だとするとどうしたら治せるのかな。彼にそうした人物を見つけて説得するとか?
―……そんな説得に応じる者があんなことをすると思うのか? いや、お前はそう思う人間か。残念ながらあのレベルのことをしたのであれば、言ったように黒騎士の鎧レベルのことをしている。つまりは
生きてるか分からないし、他人を犠牲にしている可能性もある、と。
ーそういうことだ。今治す方法があるとすれば、お前の技なら可能かもしれん。私たちに効果があるようだからな。
ラオックに感謝しつつ、ならば躊躇わず駄目で元々試してみよう。だが技を使うとして魂斬りで呪いを斬り、生命変換で回復だろうが、どこへそれをすれば良いのか分からない。
恐らく肺だろうとは思うけど、適当にやったのでは失敗した時に不安を増大させてしまう。出来ればここは少しでも原因の場所を特定するために、一旦症状を聞いてみよう。
「とんでもないです。宿がみつからない時にエルザに声を掛けてもらったので、こちらとしては助かりました。ところでお父さんは御病気がおありですか?」
冒険者ランク:シルバー級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)Lv.2
魂斬り (ソウルスラッシュ)
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
クリスタルソード(王妃がエルフの里から持ち出した秘剣。追憶のペンダントが無ければ抜けない。鞘のベルトを肩から斜め掛けし背中に背負う)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
エルフのマント(裏面に魔法陣が隙間なく掛かれ、表はど真ん中にウロボロスのマークが入ったマント)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
キャンプ用品一式
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
砥石一式
鉄くずの入った袋
メメリカ草(痺れ消し草の粉末一袋)
所持金:十九ゴールド




