第九十一話 ハクロ到着
「エイレアはあの鎧のことは知っていたのか?」
「知らないわよ。秘宝の多くは各名家に秘蔵されているといっても、多くはアインシュタット家が所有してる。その上アライアスの爺さんは家そのものを毛嫌いしていて、特に息子との仲が最悪すぎて秘宝の所在を知らないと思うわ」
「なんであれを黒騎士が着ているかも知らない?」
「知らないわ。知ってたらコーイチに聞いてないわよ」
そう言えば以前、エイレアから黒騎士について質問されていたことを思い出した。アライアスの話をすべて信じるのであれば、アライアスもその父親も知らないのだろう。
話を総合すると今のところエルフ族ではないと思われる。獣族というとイメージとしてはヴァルドバが近いのかと聞くと、ヴァルドバは獣族の中にも色々いるので、一概には言えないが黒騎士の背丈は違うという。
「あのくらいの背丈や横幅の獣族は居ない。人間族でよく見るサイズだと思うぞ?」
「確かにエルフ族にしては体格も良いし……そうなると魔法使えるってのも変よね」
「人間族でも魔法を使える人がいるじゃないか、クロウ教の人とか」
「特殊な人間族だけだと思うわ。魔術粒子を正しく使える回路が備わってるかも、私には分からないからクロウ教に聞くしかないかも人間族に関しては」
言われてみれば俺も魔法が使えるのかどうかすら分からない。今使っているのはエリザベスによって教えてもらった”技”であり、シスターアヤメ曰く古代の魔法もどきらしいので、正規の魔法ではない気がする。
世界の姿の輪郭が薄っすら見えたくらいの状態で、魔神と戦うのは凄いなと思いつつ、二人にも休むよう告げて自分も地面にシートを敷き、毛布を掛けて寝転がった。
「やれやれ、お前の知り合いは変な奴が多いな」
周りが落ち着いたのを見計らって、ラオックが寄って来て横へ寝転がりそう呟く。皆違う種族だが仲良くやれててよかったよというと、種族で仲良くやれるなら苦労はしないさと返されそうだねと返す。
「以前お前に私は他の者より良く見えると言ったのを覚えているか?」
少し間があった後でラオックがそう言ってくる。この先頼りにしたい能力なので覚えているが、タイミング的に黒騎士のことかと聞くとそうだという。
「あの黒騎士とか言うのは異常だ」
「異常?」
「ああ。私はラヴァル様の右腕であり、魔神の使徒だ。それ故に呪いなども当然効くはずがない。その私をしてアイツは中身が見えないのだ」
「見えないって中身がないってことか?」
「中身はある。だがどんな顔の形や髪の長さどころか、肌の状態すら分からんのだ。まるでお前のように理解不能な存在だ」
他から見て俺は黒騎士と一緒なのかと驚きつつ、そういえば俺は転生して来たのだから、この世界からすれば理解不能な存在であっても可笑しくはない。
……そんな自分と同じ存在ってどういうことだ? 詳しく聞こうとラオックを見るも、いびきを掻いて寝てしまっている。
まぁ分からないものを聞いても要領を得ないかと思いつつ、自分も今日は寝ることにした。明日はいよいよ魔神戦最後の人間族の町ハクロで、最後の宿での休息だ。
久し振りに寝るベッドを楽しみにしつつ眠りに就く。
「おいお前たち起きろ! 朝だぞ町に入れるぞ!」
イリスが傍に居なくても普通に起きられないらしい。今日はアライアスの叫びによって目が覚めた。見ると確かにハクロの町は開門しており、まだ列は長くなっていないので急いで片付けをして並んだ。
「……少々お待ちいただけますか?」
順番がきて荷物チェックを受けていると、一人の兵士がこちらを見てそういってくる。何か変な物でも持ってきたのだろうかと思ったが、そう言うことではないが待って欲しいと頼まれた。
よく分からないが兵士と喧嘩するつもりはないので、誘導され脇へずれて良いというまで待つことにする。
冒険者ランク:シルバー級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
魂斬り (ソウルスラッシュ)
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
クリスタルソード(王妃がエルフの里から持ち出した秘剣。追憶のペンダントが無ければ抜けない。鞘のベルトを肩から斜め掛けし背中に背負う)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
エルフのマント(裏面に魔法陣が隙間なく掛かれ、表はど真ん中にウロボロスのマークが入ったマント)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
キャンプ用品一式
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
砥石一式
鉄くずの入った袋
メメリカ草(痺れ消し草の粉末一袋)
所持金:二十ゴールド




