第八十八話 黒騎士の過去の断片
こちらはそれ以上言わずに待っていると彼は話しだした。黒騎士と会ったのは魔神召喚後のことであり、素性は詳しくは知らないという。
お前の罪を償う為に協力してやると言われ、アライアスの父と共に密談をした結果、人間族との間で戦争を起こし魔神を倒す人材を探すことにしたらしい。
何故簡単に信用したのかと問うと、それは彼の着ている鎧が地獄で女性が夢見た鎧という、エルフの里の秘宝にして呪いのアイテムを身に着けていたから、だという。
「あの鎧を身に着けたら、もう二度と脱ぐことは出来ない。好奇心に駆られたエルフが着たことがあるらしいが、何年かしたら鎧だけが転がっていたと聞く」
「そんなものどうやって作ったんだ?」
「エルフ族の中にも人間族に同情する者がいてな。昔奴隷にしていた人間族の扱いの酷さに嘆き、現状を変えられるような鎧が欲しい、と言ってドワーフに依頼して作らせたらしい。もっともそれだけで完成しなかったから、人間族の命や魂を吸わせて完成させたと曾祖父の本に記されている。あの鎧なら魔神の攻撃も耐えられるだろう」
うん、もう救いようがないねエルフ族はさ! そう言いたくなるのを堪えるに必死だった。元々鎧として完成度の高いものに魔法やらで生き物の命や魂を吸わせ、極大の呪われた鎧を作ったなら、そりゃ生半可な攻撃は通用しない訳だ。
こうなってくると魂斬りを習得したことで、黒騎士にもダメージを与えられるようになったことは幸運に思える。
「私、エルフを止めたくなってきたわ……」
「ま、まぁまぁ、エレクトラ王妃みたいな例もあるし、俺の国は帰属意識があれば受け入れる予定だからさ……元気出してよ」
「私もそれを手伝っても良いぞ!」
「いや、遠慮しておく」
ショックを受けているエイレアになんとか言葉を掛けたが、なぜかアライアスが食いついて来て即答で断った。
話を戻すが黒騎士は前任者のように、自分が消えても構わない覚悟で鎧を着ており、大義のために動いていると言われ信用したそうだ。
黒騎士と出会ってまだそう経っていないが、大義なんていうタイプには思えないし、なんか皮肉で言っているようにしか聞こえない。
出自が今も分からないものの、エルフの里を救いたい! なんていうタイプでもないのは確かだ。脱ぐには死ぬしかない鎧を着た明日の無い者が、戦いにその生き場と快楽を求めている、そういう人物だと思っている。
何にしてもこれ以上得るべき情報は無いので、ハクロの兵士に引き渡すことは決定するも、本人には黙っておいて今日野宿する際には、美味しいご飯を食べさせてあげようと思った。
何とも言えない空気と景色が流れる中で、ハクロまであと少しという看板を見つけ
「もう少しでハクロに着くぞ! やっとご飯が食べれるな!」
「やっとだ!」
「そうね、お腹空いたわ……」
静かなエイレアを元気づけようと声をあげてみたが、最近はエルフのことでショックを受けることが多いせいか、声は沈んだまま同意し自分の状態を伝える。
空気は重苦しいまま月明かりの差し込む森を進み、なんとか森を抜けることに成功した。
草原を走るとハクロの町が見えたので、地面が見える場所を探しそこにテントを張る。無言でテキパキ準備をしている間も、アライアスは憮然とした表情で突っ立っていた。
ご飯が準備できると縄を解いてくれと言うが、今日のところは大人しくしておいてくれ、と下手に出て頼みエルフ用の食事を口に運んで食べさせる。
ある程度食べて満足すると眠いというので、テントの中へ入れて寝かせた。
「本当にとんでもない一日だったわね……。まさか私の里が魔神に乗っ取られていて、そいつらを呼び出したのは長老たちで自分たちの永遠の命のため、そんな願いの為に罪もないエルフたちを生贄にしたなんて……」
冒険者ランク:シルバー級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
魂斬り (ソウルスラッシュ)
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
クリスタルソード(王妃がエルフの里から持ち出した秘剣。追憶のペンダントが無ければ抜けない。鞘のベルトを肩から斜め掛けし背中に背負う)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
エルフのマント(裏面に魔法陣が隙間なく掛かれ、表はど真ん中にウロボロスのマークが入ったマント)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
キャンプ用品一式
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
砥石一式
鉄くずの入った袋
メメリカ草(痺れ消し草の粉末一袋)
所持金:二十ゴールド




