第八十七話 魔神を呼んだ者
「……魔神を呼んだのは私の祖父だ」
アライアスは嘆くようにつぶやく。自分の爺さんが呼んだ、となれば戦争を起こす理由というのも、魔神を倒すためってことだろうなと察した。
この世界の一般的な考え方を知らないので自分なら、という考えになってしまうが、魔神なんて被害しか出なさそうなものを呼びた日には、恥も外聞もなく手当たり次第あちこちに助けを求めるだろう。
会社に勤めていた時、大きな取引先の注文を間違えて発注してしまい、自分一人でなんとかしようとして先輩に見つかり、殴られ蹴られたことを思い出す。
あの時に先輩に見つからなければ信用を失うだけでは済まず、取引先が一つ無くなる大損害を会社に与えてしまったかもしれず、その場合は路頭に迷う人が出ていたかもしれない。
組織に属していてその中での失敗というのは、隠すものではなく分かった瞬間に報連相をし、一刻も早くダメージを最小限にすることが不可欠だと学んだ。
アライアスはエルフ族のプライド故なのか、誰かに頼むことをしなかった。それどころか火事が起こったのに自分のところの水は使いたくない、なので延燃させて他で消してもらおうなどという、とんでもない消化方法を取るような行動をしている。
エルフ自体が長老たちが管理するマナの木に頼り生きている、だからこそ反乱が起こせなくてこうなった。エルフ族が駄目という話は散々聞いてきたものの、アライアスのような名家の者までダメとは、想像以上にエルフ族は酷いんだなと納得する。
「戦争になれば人間族だけでなく獣族も来るだろう? 皆で掛かれば倒せるんじゃないかと思って」
「子供かよ……」
呆れて言葉もないのだけど、ついツッコミを入れてしまった。イリス誘拐を企てたのも自分だと言い、長老の一人に乗り移っていた、ライエンという魔神の配下に頼んで指示を出させたらしい。
ライエンも魔界での生活に飽きていたらしく、人間族のカジノに嵌ってお金が欲しいとのことで、金銭を提示すると快く引き受けてくれたようだ。
マナの木が弱っているというのを知らないのは本当かと聞くと、知らないという。ヴァルドバとエイレアを見ると呆れた顔をしている。
想像だがマナの木の回復する手段を元々相手も考えており、そこにアライアスが案を持ち込んだので、お金は奪われ責任を負わされただけという哀しい話に聞こえた。
恐らくアインシュタット家は誘拐失敗の責任を取らされ、何かされているかさせられているだろう。でなければアライアス以外が動いていた気がする。
人間族にテロを起こしてしまったたことで、元々人間族を下に見ていたエルフ族全体も引けない空気になった。ライエンとしてはアライアスの願いも叶えられ、自分の暇も潰せて一石二鳥だったわけだ。
相手は魔神の一味なのに、なんで自分なら上手く乗せられると思ったのだろうか。元の世界でもそうだが金銭で転ぶなんて、より上の金額か権力であっさりまた転ぶものだ。
エルフ族はもう助からないという、魔神ラヴァルの言葉に対して激しく同意してしまいたくなる。ここまでアライアスやエルフの人たちも何とか助けたい、などと思っていた自分が馬鹿らしく思えた。
「まぁいいや次のハクロに着いたら兵士に引き渡すから、そこで話すなりなんなりしてくれ。俺たちはエルフの里に行くから」
「それなら私を連れていくが良い。アインシュタット家の名前を使えば、例え人間族だろうとどこにでも出入り自由だぞ?」
もはやそういう段階でないことを気付いてないらしい。個人的にもう話す気にもなれないのだが、黒騎士のことだけは聞いておきたかったので確認する。
「黙秘するような奴は連れていけない」
「黒騎士のことを話せば連れていくか?」
「内容による」
冒険者ランク:シルバー級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
魂斬り (ソウルスラッシュ)
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
クリスタルソード(王妃がエルフの里から持ち出した秘剣。追憶のペンダントが無ければ抜けない。鞘のベルトを肩から斜め掛けし背中に背負う)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
エルフのマント(裏面に魔法陣が隙間なく掛かれ、表はど真ん中にウロボロスのマークが入ったマント)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
キャンプ用品一式
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
砥石一式
鉄くずの入った袋
メメリカ草(痺れ消し草の粉末一袋)
所持金:二十ゴールド




