第八十六話 眠りから覚める人
「ま、まぁそれは置いておくとして、ヴァルドバよ。私も変なやつではない、ラオックだ」
「ラオックか、わかった」
「魔神の右腕と馴染んでんじゃないわよ」
「ああそうか。でもコーイチの言う通りなら神様のプレゼントだし、何も出来ない」
「淀みなく痛いことを言ってくれるな、ヴァルドバよ……」
ラオックの嘆きに自然と笑いが起こる。状況を考えれば仕方ないが何を言っても落ち込みそうなので、今は黙っておくがラヴァル戦の時は離れてもらおうと思っている。
ラヴァルは気にしないだろうけど、勝つにしろ負けるにしろラオックの人柄からして辛いだろう。本当は助けてもらいたいが、こちらのわがままで傷つけたくはないかった。
「さぁ新メンバーとの交流も済んだことだし、アライアスを軽く縛って荷台に置いてハクロへ向かおう。あまり遅くなるとまた何か出てくるかもしれないし」
「え!? 私の近くに置くの!? あれを!?」
「大丈夫だ、ラオックも一緒だから」
「魔神の右腕も一緒なの!? 全然大丈夫じゃなくない!?」
露骨にエイレアが嫌そうな顔をするので、ヴァルドバに負ぶってくれるかと聞くも、コーイチがいうならと思い切り嫌そうな顔をする。パワハラをしたくないので二人に任せるのは止め、アライアスは手を縛ってうつ伏せて前に置き、ラオックは左肩に乗ってもらって出発した。
森の中を走り始めるとやがて夕暮れが差し迫る。ヴァルドバに変な気配はしないかと聞いた瞬間、どこからともなく小鳥が数羽こちらに飛んで来て、俺やヴァルドバの肩や頭に止まった。
「見ての通りだコーイチ。森の生き物たちはお前に感謝している。モンスターも野生動物も、襲ってくる奴はいないはずだ」
笑顔で指先に鳥を止まらせながらヴァルドバはそういう。全然分からないが襲ってくる奴がいないのであれば、こんなに有難いことは無い。
恐らくハクロへは夜ついてしまうだろうから、今日も野宿で明日町でゆっくりし、その後でエルフの里へ向かおうとヴァルドバとエイレアに告げ、何か買い足す物があったら教えて欲しいとも伝える。
いよいよ魔神ラヴァルとの決戦は近い。彼を何とか倒せても、黒騎士がどのタイミングで出てくるか分からないので、ヲスカーに帰るまで予断を許さない状況だ。
「う、うう……」
前でうつ伏せになっていたアライアスが呻き声をあげた。先ず名前を確認し次に痛いところはと聞くとこの姿勢が辛いという。
軽口を叩く余裕があって何よりだと言うも、軽口ではないのでどうにかして欲しいと抗議して来た。
―コーイチ、俺が乗り移っている間のソイツは、寝ているような状態だから問題ないはずだ。
ラオックからの耳打ちに安心しつつハクロに着けば下ろすと伝え、どこからどこまでの記憶がないのかと聞くも口を噤む。
「俺の監視をしろ、隙を見てイリスを殺せとでも言われて来たのか?」
「誰にだ?」
「黒騎士にだよ。お前に俺の目的は教えていなかったのに知っていた、それは黒騎士からの情報だろ?」
「な、なんでそれを……と、とにかく黙秘する!」
動揺したのかアライアスが大きな声をあげたので、集まってくれていた鳥たちが逃げてしまう。残念だなと思いながら見送りつつ、黙秘権を行使されたらどうしようもないので、無理に聞かずにそうかとだけ返す。
黒騎士については聞かないとしても、ラオックから聞いた話で気になっていた、魔神のことだけはアライアスに聞いておこうと考え質問する。
「魔神ラヴァルを呼んだのは長老の内の誰なんだ? お前に憑りついていた者から、お前の家にあった本から召喚陣を見つけ呼んだと聞いたけど」
質問が終わる前にこちらを見て青ざめた顔をした。反応を見る限り魔神のことは知っていて、その後ある程度どうなったかも知っているような反応である。
冒険者ランク:シルバー級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
魂斬り (ソウルスラッシュ)
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
クリスタルソード(王妃がエルフの里から持ち出した秘剣。追憶のペンダントが無ければ抜けない。鞘のベルトを肩から斜め掛けし背中に背負う)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
エルフのマント(裏面に魔法陣が隙間なく掛かれ、表はど真ん中にウロボロスのマークが入ったマント)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
キャンプ用品一式
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
砥石一式
鉄くずの入った袋
メメリカ草(痺れ消し草の粉末一袋)
所持金:二十ゴールド




