第八十一話 哀しいラオック
話をしてくれるなんてラッキーすぎると思いつつ、魔法があるのを知っているので五分とは思えず、そう指摘してみた。
体に入る前にこちらの攻撃を防いだ魔法を出されれば、魂斬りは防がれてしまう。こうなると遠距離からの攻撃は、大きな隙を見つけなければ無理だろう。
幸運を願うのではなく自分の動きや頭で相手に隙を作らせたいが、魔神というワードのカードは斬ってしまっている。
魂斬りについて細かく教えたいところだけど、そもそもエリザベスに教えてもらっただけで、魔神やラオックと戦えるぞってことしか知らない。
相手もそれを見つけたいだろうが無いのも同じだろう。何か相手の隙が生まれるような言葉や動きは無いものか。
「ふん、勘のいい貴様のことだ、私が余裕がないことくらい気付いているはずだ。そしてその予想は当たっている、全くその通りだ。馬鹿を一人追いかけてきたせいで、とんでもない目に遭ってしまったよ」
「馬鹿? アライアスのことか?」
次のカードを見つけられないまま、相手も少し間を開けたことで体力が回復したのか、アライアスに乗り移る前の話をし出す。
ラオックの職場には話せる仲間とかいないのだろうか、と余計な心配をしつつ、馬鹿を追い掛けたのは誰なのだろうかと記憶を探して見るが、魔神の知り合いもそれに類する者もいなかった。
何も思いつかないと頭の中で嘆いていると、ラオックはこちらをまじまじと見ている。
「今になって気付いたが……お前そのマントをどこで手に入れた!?」
「え、ライノの町で買ったんだが。なんでもエルフがカジノでスッて資金繰りのため、道具屋で一ゴールドで売っ払ったらしい」
購入時の状況を簡単に説明している間に、ラオックの体全体から生気が抜けていくのが、とても分かりやすく見えた。どうやらこれを売り払った知り合いに、彼は心当たりがあるようだ。
ギャンブルをやる知り合いがいるのは大変だなと同情する。俺も馬を見るのは好きだし観光で乗馬を何度かやったことがあるが、賭け事としては一度やっただけで止めてしまった。
無論その時も当たることは無かったが、一緒に行こうと誘った人物はずっと沼の中にいる。まさか敵側にそんな人物が居るなんて驚きしかない。
「……絶対に許さんぞライエン! 見つけたら殺してやる!」
よく知らん人物に対して呪詛を叫びつつ、こちらへ向かって突っ込んで来た。心情的には同情しているのに、八つ当たり状態のラッシュを受けているが、荒く焦っている動きなので余裕をもって避けられている。
とは言えこちらも決め手を欠いていた。隙を作り出すために魂斬りを連発するほどの余裕はない。
相手のラッシュに対し避けるだけで、剣を振るわず体力と気力の回復に努める。魂斬りが危険という意味を今知れて、その点だけは幸運だと思った。
「どうした!? もう息が上がったか人間!」
「そっちこそ当ててみせろラオック! 魔神の右腕はこんなもんじゃないだろう!?」
「言うではないか!」
恐らくだがこちらの隙を生み出すために、ラオックはラッシュを続ける。自分の体ではないとはいえ、無理をし通せば動かなくなるはずだ。
こちらも他人のことを気にしている余裕などなかった。体力気力は多少回復したが、それでも一発全力で打てるかどうかギリギリの状態である。
魂斬りをそのまま打ったのでは避けられた瞬間、こちらは間違いなく致命傷の一撃を受けるだろう。
遠くから飛ばせないなら熊の頭の上に剣を振り下ろし、接触する前に放てるかやってみるか。一か八かだがやるしかない。
問題はぶつけるにしても、相手の隙を生み出すためにどうするかだ。冥府渡りを使うならそのまま流れるように魂斬りをぶつける、これで相手を倒せなければ乗っ取られてしまうが、それしか方法が思い浮かばなかった。
冒険者ランク:シルバー級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
魂斬り (ソウルスラッシュ)
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
クリスタルソード(王妃がエルフの里から持ち出した秘剣。追憶のペンダントが無ければ抜けない。鞘のベルトを肩から斜め掛けし背中に背負う)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
エルフのマント(裏面に魔法陣が隙間なく掛かれ、表はど真ん中にウロボロスのマークが入ったマント)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
キャンプ用品一式
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
砥石一式
鉄くずの入った袋
メメリカ草(痺れ消し草の粉末一袋)
所持金:二十ゴールド




