第八十話 魔神の右腕
「俺自身は大したことない、そこら辺に居るおっさん冒険者だと思ってるんだが、なぜか高く評価されてるんだよな。それでラヴェル本人から挨拶された上で、ご招待頂いたんだよ里まで来いって」
「そうか、ならば宜しい。魔神ラヴァル様の右腕として、このラオックが貴様の腕を試してやろう。私を倒せないような強さでは、ラヴァル様の前へまかり出ることなど許されぬ。マナに頼らない永遠の命を得るため、同族をさしだした愚かな長老たちと同じように、貴様も乗っ取ってくれるわ!」
こちらの質問にしっかり答えてくれたラオックに対し、真面目な人柄を感じてほっこりしてしまい、いまいち身が入らないまま戦闘開始になり剣を構える。どうするのかと見ていたら雲の状態で戦うのではなく、倒れているアライアスに再度憑りつこうとしたので
「いちいち他人の体を使うんじゃない! 魂斬り!」
魂斬りを放って牽制した。さすがに受けてまで憑りつこうとせず、避けて距離を取ったので、二人の距離の間へ立ち切っ先を向ける。
「チッ忌々しい人間族め……現世では私たちが実体化出来ないのを逆手に取りおって」
動きを止めそう悔しそうにラオックは言う。こういうのって例えば魔界に本体があって、とかいうのを漫画かゲームの設定で見たことがあるけど、この世界の彼らもそういう設定なのだろうか。
別に恥を掻いても良いので、後学の為に聞いてみることにした。
「実体は別にあるようだが、現世にこれないのは力が強くて世界に影響を与えるから、とかか?」
「貴様本当に何なんだ? 私たちの規定に対する知識まであるとは……」
「あ、やっぱりそうなんだ」
「くっ……気に入らん奴め! あ、あれは!? ならば!」
体が無い今がチャンスだと思い魂斬りを放とうとしたところで、頭部の中央が黄色い色をした茶色の毛の熊が現れる。
それを見てラオックは飛んで行き、こちらは逃がすことなく魂斬りを放った。
「くそう仕方ない! 闇の魔法盾!」
黒い魔法陣が現れ白い光を阻んで相殺される。その隙にラオックは熊の口から中に入り、少し間があった後で額から小さな羊の角を生やすと同時に、雄叫びを上げながら立ち上がり仁王立ちした。
熊と魔神の右腕の融合は、アライアスに乗り移っていた時よりも圧が凄く、恐らく戦闘力は段違いに上がったに違いない。
その上魔法もあるとなると厄介だなと思ったが、ここまで魔法を出し惜しみしたということは、あの状態で使うと命の危険がある、とかそういう状態なのかと気になった。
「出来ればあのエルフを利用して始末したかったが、こうなっては仕方がない。全力でさっさとお前を始末するしかないだろう。あいつの記憶を見た限り、貴様はマナの木の回復の阻害をしに行くようなのでな」
「俺はソイツにそんな話をした覚えはないが?」
「そんなものは知らん。アイツに直接聞けばいい。お前が私と戦って生きていたらの話だがな!」
熊は巨体を揺らしながらこちらへ突撃して来る。ヴァルドバが駆け寄ろうとするも言葉で制止し、魂斬りを打つ。
「ちぃっ! 厄介な技を持っているな人間! 滅ぼし尽くしたはずの魂狩り一族の生き残りか!?」
素早く避けたラオックはその隙を逃さず間合いを詰めてきた。振り下ろされた爪をクリスタルソードで思い切り弾き飛ばす。こちらはロングソードに慣れておらず、相手は体に慣れていないためか、互いに体が泳いでしまい慌てて距離を取る。
出来れば直ぐに詰めてこちらが主導権を握りたかったが、魂斬りを連発したせいか眩暈がして視界が定まらない。
攻められたら勘でやり過ごすしかないなと考えつつ、眩暈がバレないように足を踏みしめ、剣の重さを頼りに姿勢を正し誤魔化す。
「お互い条件は五分のようだな人間」
「そう見えるが、ラオックは魔法を使えるんだろう? ならそっちがまだ有利だ」
冒険者ランク:シルバー級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
魂斬り (ソウルスラッシュ)
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
クリスタルソード(王妃がエルフの里から持ち出した秘剣。追憶のペンダントが無ければ抜けない。鞘のベルトを肩から斜め掛けし背中に背負う)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
エルフのマント(裏面に魔法陣が隙間なく掛かれ、表はど真ん中にウロボロスのマークが入ったマント)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
キャンプ用品一式
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
砥石一式
鉄くずの入った袋
メメリカ草(痺れ消し草の粉末一袋)
所持金:二十ゴールド




