第七十九話 憑りつきし者
「誓って嘘は……」
「嘘は?」
こちらの問いに答えず押し黙るアライアスぽい何かだが、その間に額から小さな羊の角が二本は生えだし
「嘘は……つくに決まってるであろう! 人間族風情が偉そうにしおって!」
顔を上に向け体を逸らしそう叫んだ後で、こちらに向かって突っ込んでくる。クリスタルソードが出てきてくれたことで、あれがアライアスではなく魔神の仲間であるとわかり、迷わず新技を使うべく気を剣に注ぎ
「魂斬り!」
こちらに到達する前に剣を振り下ろした。剣の軌道を追うように白い光が相手に向かって飛び
「お前コイツを殺す気……ああああああ!?」
アライアスらしきものは光がとおり過ぎた後、そう言いながら途中で悲鳴を上げながら空を仰ぎ、口から黒い煙が吐き出し始める。
「お、おのれぇ! 貴様何者だ!? たかが人間族がなぜ私のみを攻撃できる!?」
煙が吐き出され終えたのか、アライアスは地面にうつ伏せになって倒れ、空中に漂う雲のようなものが降りてきてそう言った。それにしても裏で色々動いていると思っていたアライアスが、まさか乗っ取られていたとは思わず驚く。
最初から乗っ取られていたわけでないだろう。なぜなら追憶のペンダントが無反応だったからだ。マイヤの町かその周辺に居て、彼の隙をついて入り込んだのだろうか。
率直に訊ねたところで言わないかもと思ったが、わざわざ自分だけ攻撃されたことを教えてくれるあたり、喋ってくれそうな気がする。ダメ元でこちらからは魔神の話を振りつつ、相手の正体と乗っ取った時期を訊ねてみよう。
「お前は魔神か? アライアスにいつから入っていた?」
「私の憑りついたエルフ族の中にすら、魔神のことを知っている奴は居なかった。それがまさか人間族で魔神のことを知っているやつがいるとは……。コイツのお前に関する情報には、そんなものはなかったぞ? コイツに入り込んだ時期はお前も察していると思うが、ヤクテから出た森の中でコイツが焦っている隙に、口から入り込んだのだよ」
口振りからして魔神に関しての情報は、知っている者が限られているように聞こえた。こちらの技や魔神というワードが出て驚き混乱しているのか、元々お喋りなタイプなのか分からないが、喋ってくれるようなのでここは色々聞いてみよう。
先ずはアライアスが魔神を知っていたか聞いてみる。名家と言われ過去に大魔法使いを出したからには、それなりの資料があっても可笑しくはないが、答えによっては彼が実は長老に与しているかもしれない。
「アライアスは知っていただろう? 魔神のことは。上位エルフの名家だし」
「ふん、そう簡単に教えるかと言いたいところだが、どうでもいいので教えてやろう。コイツは知っていて当然だ。何しろ我らを呼び寄せたのはコイツの家の本にあった、召喚陣を使用しているのだからな」
言い方からして知ってはいても、実際呼び出したのは別の人物、この場合すなわち長老たちだろう。まさか呼び出した相手に乗っ取られるなんて、その時は思ってなかっただろう、そう考えると哀れに思えた。
こちらからしたらかなり重要な情報だが、相手からしてどうでもいいなら教えてくれそうだな、と考え次の質問を考える。
やはり呼び寄せたというからには、何か対価のようなものが必要だろう。魔神を呼ぶからには安い対価ではないはずだ。いったい何を対価にしたのか気になったので聞いてみることにした。
「答えてくれてありがとう。もう一つ質問だ。対価は長老たちの命か? 魔神を呼び出すのにタダってことは無いだろう? ひょっとして魔神ラヴァルが暇だったから応えた、ということだけではないだろうし」
「ラヴァル様のこと、それにあのお方が暇で飽きていることも知っているとは……お前は何なのだ!?」
冒険者ランク:シルバー級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
魂斬り (ソウルスラッシュ)
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
クリスタルソード(王妃がエルフの里から持ち出した秘剣。追憶のペンダントが無ければ抜けない。鞘のベルトを肩から斜め掛けし背中に背負う)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
エルフのマント(裏面に魔法陣が隙間なく掛かれ、表はど真ん中にウロボロスのマークが入ったマント)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
キャンプ用品一式
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
砥石一式
鉄くずの入った袋
メメリカ草(痺れ消し草の粉末一袋)
所持金:二十ゴールド




