第七十八話 あなた誰?
なんとかギリギリ道を確保出来、サジーを入れてやり過ごすことに成功する。かなりの大きな物を引き摺っていたようで、地響きが収まるまで少し時間が必要だった。
「あんたたち、ここからどこへ行くんだ?」
道へ戻って先へ進もうとした時、先ほど声を掛けてくれた人が戻って来て問われる。ハクロへ向かうところだと伝えると、別の道を行った方が良いと言われた。
夜まで今のような大きな荷物の往復が続くからだそうで、地図を貸してと言われて貸すと別の道を教えてくれる。
何か問題でも起こったのかと聞いたところ、首都からの伝令でハクロの守りを固めろと指示が出たらしい、と言われヴァルドバやエイレアと顔を見合わせた。
馬に乗って再度ハクロへ行くという彼を見送った後で、こちらは地図で示されたこの先の橋を渡って直ぐ右折して北上し、迂回ルートを進んでいく。
徐々に道は獣道を気持ち整えましたという感じの、エイレアが荷台で悲鳴を小刻みに上げる道になる。それはそれで辛そうだがサジーの蹄も心配になり、こちらで走る道などをある程度コントロールしよう、そう考え先の方の道を見ながら手綱を握った。
なるべく石や落ちている枝などを踏まないよう、踏んだとしても回数が少なくなるように、細心の注意を払って見ながら道を進んでいく。やがて森を抜け川に出たのでいったん休憩を取ることにする。
「……き、気持ち悪い……」
なぜかエイレアがグロッキー状態になって荷台で伸びていた。大丈夫かと聞くと物凄い形相で見てきたので、コップに水を汲んで戻ると鼻息荒く受け取り飲み干す。
「コーイチの手綱捌き、凄かったぞ。荷台も凄い動きしてた」
ヴァルドバがニヤリと笑いながら言うので、そんなに凄かったかと聞き返すもエイレアのわざとらしい咳払いで、凄かったらしいことを理解しすいませんと謝る。
元の世界のルート配送では狭いところにある会社が多く、周囲の物を注意深く見ながら事故を起こさず早く到達する、という仕事をしていたスキルの賜物だろうか。
車と馬は全然違うが元の世界の”運転”スキルが、車以外にも効果がある形で継承されたのであれば、ようやく転生の恩恵というのを感じられたなと思った。
しばらく休憩した後で再度走り出しハクロを目指す。迂回ルートは鬱蒼と生い茂った、ジャングルに近い状態の未開に近い森になっていくが、それでも道が平坦でそれなりに走れるので助かる。
「……何か付けて来てる」
ヴァルドバがちらりと後ろを見てこちらに近付きそう呟いた。足場の悪い環境では襲って来ないところを見るに、お行儀がいい襲撃者らしい。
こちらとしてもそれは有難いので、このまま引っ張って移動していく。駆け抜けているとやがて少し開けた休憩できる場所に出たので、そこでサジーを一旦止めて降り後ろへ移動して待ち構える。
「やっと追いついた! 置いて行くなんてひどいじゃないですか!」
馬の走る音と共に森の中から現れたのは、なんとアライアスだった。まさかあの状況から追ってくるとは思わず、困惑していると首に下げている追憶のペンダントが光り始める。
ペンダントを見た後でアライアスを見たところ、背後に黒い影の手のようなものがうねっており、目が魔神と同じようになっていた。
明らかに異変が起こっており前までのアライアスとは違う、そう感じた時に背中のクリスタルソードが抜け目の前に下りてくる。
剣が反応したということは、ひょっとするとアライアスに憑りついているのは、魔神ラヴァルの仲間か?
「お前誰だ?」
一瞬首を傾げたがこちらが切っ先を向けると、ニヤリとした後でけらけらと笑い出した。
「何が可笑しい?」
「可笑しいに決まっているだろう? 俺はアライアスなのにお前は誰だとは心外な」
「この剣に誓って言えるか? お前ならこれがどんな剣なのか知っているはずだ」
エルフの里の秘宝と言われるこの剣を前に、由緒を重んじる家柄の者なら嘘は付けないはずだ。
冒険者ランク:シルバー級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
魂斬り (ソウルスラッシュ)
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
クリスタルソード(王妃がエルフの里から持ち出した秘剣。追憶のペンダントが無ければ抜けない。鞘のベルトを肩から斜め掛けし背中に背負う)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
エルフのマント(裏面に魔法陣が隙間なく掛かれ、表はど真ん中にウロボロスのマークが入ったマント)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
キャンプ用品一式
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
砥石一式
鉄くずの入った袋
メメリカ草(痺れ消し草の粉末一袋)
所持金:二十ゴールド




