第七十六話 夜の森を進む
元々二刀流なので防御は捨て、攻撃回数を極限まで増やす方針を取っているので、防具はマントだけで十分だ。魔神がどういう戦い方をしてくるかは分からないが、到着まで時間があるし新しい戦法を考えていこうとは思っていた。
エイレアからもう大丈夫だから行こうとなって、サジーにも声を掛けて移動を再開する。これまでの道と違い、徐々に馬車が行き交う道以外は草がぼうぼうに生えていたり、人の手が入っていない森という雰囲気になって来た。
「夜になるとモンスターがくるかもしれない」
ヴァルドバが旅の中で初めてそう口にする。早めに出たつもりだったがもう森は夕暮れで赤く染まり、夜が近いことを告げていた。距離的に森を抜けられるかどうか不安だったため、キャンプ道具の火打石を使い、近くに落ちていた太めの木の棒の先に布を巻きつけ、それに火をつけてエイレアに持ってもらうことにする。
さすがに森の中での野宿は危険なので、出来れば草原があればと思って走るも森がかなり長く続いた。ついには夜の闇に染め上げられた森になり、一気に雰囲気が変わっていく。
心なしか殺気が増えたような気がして、ヴァルドバにそう振ると彼もそうみたいだと答える。エイレア曰くエルフは動物たちと敵対関係にはならず、グランドベアという獰猛な動物も、エルフだけは襲わないという。
ワーウルフや獣族と仲が悪いのはなんでだと聞くも、森から離れた存在だからじゃないと興味なさげに答えた。ヴァルドバはそれに対し、俺たちは森から離れてないと反論するも、人間族の文化文明に馴染んでるじゃないと言われ押し黙る。
「そういう意味ではエイレアもエレクトラ王妃もイリスも、近くなってるんじゃないか?」
「最近でしょ? まぁそこは上手く距離を取りつつやっていくわよ。やっぱり住むなら森が良いし。コーイチは国を作る時はどこにするの?」
突然そう聞かれ困惑した。振り返れば地図すら細かく見ておらず、今はイリスを無事連れ帰ることで頭が一杯だ。魔神と戦い如何に打ち勝つかも思いつかないので、最悪共倒れを狙って戦うような状況であり、その先のことなど見通しも立たない。
思えばまだモンスター討伐依頼も受けていない、ダンジョンの一つも潜ってもいない冒険者が、いきなり魔神と戦えっていうのはとんだクソゲーである。
とは言えおじさんなので、あまりのんびりやっては国を作るほどの功績は残せないし、世界からのおじさんに対する優しさなのかもしれないと思った。
元の世界の日本ではおじさんに再就職など厳しめの社会だけど、こちらも厳しいは厳しいが一発逆転の機会が与えられている。冒険者というのは俺のようなおじさんにとって、有難い職業なのかもしれない。命を毎回天秤に掛けているというのはあるけども。
「国のことは全然考えられてないよ、この状況だからね」
「出来れば森の中とかにしなさいよ。自然との融合を目指した国とかさ」
自然と融合した、ということは森の中に木を切らずに家を建てたり、火を起こす場所を石などで隔離して作り、煙突を長くするとかだろうか。火の面を厳しく整備したとしても、自給自足の為の畑を作ったりするには、どうしても開墾しなければならない。
国として自然との融合を謳っても、比率が低くなればツッコミが増えそうな気がした。
「畑とかやって野菜を作ったりするには切り開かないと駄目じゃないか?」
「……確かにあのメイクンが食べられないのは困るわね。油は何を使ってたのかな」
「バターとかじゃないかな。牛の料理もあったし」
「そういえば人間族の町の近くには、ビノカウっていう種類がいたわね」
「腹減った……」
ヴァルドバの言葉に反応するかのように、俺もエイレアもお腹の音が鳴り三人で声をあげて笑った。
冒険者ランク:シルバー級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
魂斬り (ソウルスラッシュ)
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
クリスタルソード(王妃がエルフの里から持ち出した秘剣。追憶のペンダントが無ければ抜けない。鞘のベルトを肩から斜め掛けし背中に背負う)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
エルフのマント(裏面に魔法陣が隙間なく掛かれ、表はど真ん中にウロボロスのマークが入ったマント)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
キャンプ用品一式
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
砥石一式
鉄くずの入った袋
メメリカ草(痺れ消し草の粉末一袋)
所持金:二十ゴールド




