第七十三話 アライアスの謎
―そういうことです。クリスタルソードで魂斬りを放ち直撃させれば、必ずやあの魔神にダメージを与えられるでしょう。
魔神はそれを知っていて尚、そのまま来いというのは凄い自信だな。
―余裕や慢心もあるでしょうが、本当にエルフに呆れて投げやりになっているのでしょうね。ですがこれで勝てる可能性が出てきました。
本当にそうだろうか。投げやりな態度を取っているがそれは今の状況だからであって、それがなくなればやる気を出してくる気がする。
ー用心は必要ですね。仮にも相手は魔神です。私たちが油断しては元も子もありませんね……反省します。
見たことは無いが、エリザベスがすまなそうにしている姿を想像し、面白くて笑ってしまう。
―笑わないでください、真剣に反省しているんですから……。それではそろそろ朝なのでこれで失礼します。どうか道中気をつけてくださいね。
ありがとうエリザベス、また会おう。
「コーイチ、起きて!」
エイレアの声に驚き目を開けると胸元が光っていた。ここのところイリスがいなくて普通に起きていたので、久し振りの起こされ方に心臓がばくばくしつつ、深呼吸しながら起き上がる。
光るペンダントを手に取ると徐々に収まっていく。恐らくエリザベスはこれを通して接触し、伝授を終えたので光は消えたのだろうなと思った。
「大丈夫か? コーイチ」
「エイレアもヴァルドバも心配かけたみたいだな。大丈夫だ問題無い」
「お体の具合は悪くないですか? 私で良ければ見ましょうか?」
少し離れた位置からアライアスがそういうので、医療の知識があるのかと問うと里で経験があるという。
これまでの彼との差異に一瞬戸惑ったが、相手もこちらがなんとなく勘付いている、くらいには察しているのだろうと理解した。
「いや大丈夫だ。この通り元気満点だ!」
覚えていたラジオ体操をしてみせると、アライアスは分かりましたと言って引き下がる。じゃあ片付けをしてヤクテへ行こうと告げ撤収作業に入った。
テントをバラして骨組みを纏め布を丸めている時、エイレアが手伝いに来てくれたので、こそっとアライアスの先ほどの発言を聞くと知らないという。
エリザベスとの間に割って入って来た魔神ラヴァルは、話をした内容を信じる限り、間者を差し向けてこちらを倒すことはしないだろう。
長老たちという言葉からして複数人要るうちの一人だろうが、魔神より上や対等のエルフがいるとは思えない。
そうなるとアライアスは独断専行で動いている、または実家の意向で動いているのだろうか。彼の家は長老たちに煙たがられている、というエイレアの話からすると長老派でないことは分かる。
人間族への宣戦布告状が独断専行だとすれば、戦争を起こしてエルフの里を変えたい、という思惑を持って首都へ行こうとしていたのか。いや、あんなものを見せれば殺されるくらい、いくらなんでも分かるだろう。
書状を俺に見せたのも不自然と言えば不自然だ。あんな簡単に見せて良いものじゃない。見せても持って行かないと信じていたから見せた? そしてエルフの里へ向かうと? 何故それを知っているのか。
そう言えばアライアスの前にはアルヴの襲撃を受け、里の内情を知らされた。一人の人物が頭に思い浮かぶ……そう黒騎士だ。
なんでもかんでも彼のせいにしてはいけないが、戦争を起こし里を変えるという一点において、両者の思惑が同じなら協力しないとは言えない。
黒騎士から情報を得たとして、俺に接触したのも動向を探りつつ、イリスを殺すためという可能性もある。エルフ族がイリスを歓迎していないというのも聞いた話だが、戦争を起こす要因としたらそれが一番大きい。
家に帰るまでが遠足、とはよく言ったものだ。魔神に勝つだけでもギリギリだろうに、イリスを返してもらう時も油断できないとは厳しい状況だなと思った。
冒険者ランク:シルバー級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
魂斬り (ソウルスラッシュ)
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
クリスタルソード(王妃がエルフの里から持ち出した秘剣。追憶のペンダントが無ければ抜けない。鞘のベルトを肩から斜め掛けし背中に背負う)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
エルフのマント(裏面に魔法陣が隙間なく掛かれ、表はど真ん中にウロボロスのマークが入ったマント)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
キャンプ用品一式
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
砥石一式
鉄くずの入った袋
メメリカ草(痺れ消し草の粉末一袋)
所持金:二十ゴールド




