第七十二話 魔神の望み
「求めているのだよ勇者を……私を楽しませてくれる者としてな。我が名は魔神ラヴァル。エルフ族の長老たちの悪しき欲に呼ばれ出てきた者だ。だがもう飽きたのだエルフで遊ぶのは。」
目の前の人物がそういった次の瞬間、空間に次々とアルヴが言っていた実験と思われる、悍ましい映像が流れては消えていった。目の前の人物が直接関与しているものはなかったが、口振りとこの現象からして加担したと見て間違いないだろう。
「筆舌に尽くしがたい光景だな。これがあなたのいう遊びか?」
「そうだ遊びだ。普通ここまですれば反旗を翻すなりするだろう? だが誰もしなかった。それどころか大部分は未だに付き従い、反旗を翻したかと思えば他種族を巻き込んで戦争を起こそうとする、それこそ筆舌に尽くしがたい愚か者まで出る始末。もうコイツらエルフは救えん。滅ぶべきだがただ滅ぼすのでは芸がない。そうは思わんか?」
魔神の言う反旗を翻した、という部分はアルヴたちのことだろうが、それに黒騎士も入っているのか気になる。
マナの木の権利を握っているとは聞いたが、牛耳る一族に逆らえないというほど凄いのだろうか、とは思っていたがまさか魔神が憑りついていたとは思わなかった。
黒騎士も入っているなら戦わないというのも妙だし、エルフたちが黙って従い続けているのも奇妙に感じたけど、こういう状況なら納得する。
「ふふ……お前のように上に抑え込まれようとも、どんな形であれ逃げずに必ず生きて抜いてやるという、素晴らしい気概を持つ者ばかりではないということだ。この世界に来て無理難題を押し付けられてもめげずくさらず、格上と思われた種族にも立ち向かい勝利する、そういう点でもお前は私のお眼鏡にかなったのだよ、コーイチ」
素晴らしい気概などではない。虐められていた時は反抗出来なかったし、死に掛けた後も周りが騒いでくれたお陰で、虐めをしていた連中が居辛くなって去ったに過ぎない。
結局俺自身がしたことは大人に訴え続け、そして自ら命を絶たなかっただけだ。嫌な連中の為に死んでたまるかという気持ちだけで俺は生きた。
今思えば直接反撃すれば良かったと思うこともあるが、その時は恐ろしくて大人なら助けてくれる、と他人を頼り信じようとし過ぎたと思っている。
この世界に来ても諦めないでいるのは、そういった辛く惨めな過去によるものだ。そんなものは何も素晴らしくはない。俺だって出来れば順調に皆と楽しく生きてきたかった。
望んだ未来には辿りつけなくて、そうはならなかった未来が今の俺、ただそれだけでしかない。
「憤るだけでなく戦うことが必要だ。戦うとは何も暴力だけではない。お前を知れば知るほど、生きるということの大切さを思い出させてくれる。だからこそ私にもそれを、生きたいと思わせるほど追い詰めて、生きたいと思わせて欲しい」
「俺の頭の中を勝手に覗かないでくれ。で、ラヴァルだけでなく気概のないエルフも一緒に滅ぼせと?」
「そういう役目なのだろう? ならばそうせよ。私と共にこの里を滅ぼして見せるがいい。哀しいかなどうせ私が負けることなど無いのだが、少しでも負ける可能性を高めたいので最初から全力で戦おう。必ずマナの木から援助を受けて、万全の体制で戦いに臨んでくれたまえ。勇者よ、私は里で待っている」
そういうと景色が全て崩れて消え去ってしまう。真っ暗な空間に戻った瞬間
―余裕ですね相手は
エリザベスの声が聞こえホッとする。エリザベスも魔神ラヴェルを知っているのか。
―彼が長老の一人に憑りついたお陰で、エルフの里は闇が深くなったのです。それにしてもまさか私たちの交流を知っていたとは……。
魂斬りを教えてくれたのは魔神が理由だったのかと納得する。この技があれば魔神の本体にダメージを与えられるんだろうなきっと。
冒険者ランク:シルバー級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
魂斬り
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
クリスタルソード(王妃がエルフの里から持ち出した秘剣。追憶のペンダントが無ければ抜けない。鞘のベルトを肩から斜め掛けし背中に背負う)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
エルフのマント(裏面に魔法陣が隙間なく掛かれ、表はど真ん中にウロボロスのマークが入ったマント)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
キャンプ用品一式
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
砥石一式
鉄くずの入った袋
メメリカ草(痺れ消し草の粉末一袋)
所持金:二十ゴールド




