第七十話 夢の訪問者
襲撃者はどうしたのかとアライアスに聞かれたが、彼を信用した訳ではないので逃げられたと答えた。ヴァルドバもそれに合わせてくれ、素早くて捕まえられなかったと嘘をついてくれる。
「え」
一瞬、いつも喜怒哀楽がはっきりしているはずの、アライアスの顔が無表情になった。こちらの反応を気にしてか、直ぐに笑顔でエルフは強いからなと高笑いを始め、エイレアはそれを見て溜息を吐き首を振っている。
エイレアの様子を見る限りは、二人で居る時には変わった様子は無かったようだが、予想外の結果だったことで真の彼が漏れた気がした。お調子者を演じて誰かを欺く、なんていうのはよくある手だけど、それでも使われるのは効果があるということだと思う。
実はエルフたちの襲撃を知っていて、こちらと鉢合わせさせる為にわざと馬に水をやった、思っていた結果と違うものだと感じていたら、あの表情は説明出来る。
憶測の域を出ないが、油断できる相手ではないと改めて気を引き締めつつ、出来る限り案内役をしてもらおうと頭を切り替える。
「まぁ何にしても暗くなると不味いから先を急ごう」
話を変えてそう促し各自配置に戻って走り出した。橋を渡り森を駆け抜けるもなんとか敵に遭わずに走れ、サジーやアライアスの馬も元気だったことでヤクテ手前まで到達する。
サジーたちを止めて飼葉を与え水を飲ませた後で、自分たちの寝床であるテントを設営している間、なぜかエルフの二人はボーっと空を見ていた。ヴァルドバが叱ると慌てて手伝い出したが、エイレアにどうしたのか聞いてみると
「何か星が可笑しい気がする」
そう意味深なことを言い始める。星が可笑しいとはどういうことなのかと説明を求めるも、具体的には説明できないけど可笑しいと言った。
魔術とか魔法的なもので歪められているのかと聞くも、それはないでしょうとアライアスに半笑いで否定される。
「空を歪めるくらい強い魔法を使用するほど、長老たちは血迷ってはいないでしょう。そんなことをすればエルフの里は機能不全に陥る。すべての生産が止まり、一時的に回復したとしても死は免れなくなる」
「やろうと思えば可能なのか? 魔法で」
「マナの木の全面バックアップがあれば、長老たちがいつもエルフの里最終奥義だと言っている、惑星落としを使用すればこういう状況になるでしょう。恐らく御存知でしょうが私の先祖に大魔法使いが居たので、書籍に記されているのを見た限りですが」
「自分たちが死ぬかもしれないとしたら、それくらいのことやりかねなくないか? 長く生きて栄華を楽しんで来た者ほど、死への恐怖は強そうだけど」
「そうかもしれませんね……コーイチ殿の考察は的確かもしれない」
「名家出のアライアス殿に褒められるなんて光栄ですね」
今言葉を交わしている彼は、とても最初にあった頃のオタオタしていた人物とは思えず、恭しく礼をするとまた高笑いを始め誤魔化しに入った。反応を見た感じ、エイレアと同じく彼も何かを感じているに違いない。
長老たちはいったいどんな手を打とうとしているのか。嫌な予感がしつつも、エイレアとアライアスにはそれぞれ別のテントを使って貰い、ヴァルドバと共に警戒しつつ外で夜を明かすことにする。
―コーイチさん。
うとうとしていた時に不意に声が聞こえてきた。例の生命変換冥府渡りを教えてくれた、あの声に違いない。君はエリザベスなのかと問うと
―そうでもありそうでもない、今となっては曖昧な存在です……エルフではないので違うのかもしれませんが。
エレクトラ王妃と話していた時の君は、彼女の友であるエリザベスだった気がする、そう頭の中で思うと
―そうかもしれませんね……そういえば今日はコーイチさんにまた一つ、ある技を伝授しようと思いまして。
冒険者ランク:シルバー級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
クリスタルソード(王妃がエルフの里から持ち出した秘剣。追憶のペンダントが無ければ抜けない。鞘のベルトを肩から斜め掛けし背中に背負う)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
エルフのマント(裏面に魔法陣が隙間なく掛かれ、表はど真ん中にウロボロスのマークが入ったマント)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
キャンプ用品一式
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
砥石一式
鉄くずの入った袋
メメリカ草(痺れ消し草の粉末一袋)
所持金:二十ゴールド




