第六十九話 エルフの襲撃者
俺にだけスポットを当てて考えてみると、最近出てきた俺の情報をそれなりに詳しく知っているのは、黒騎士たち以外は人間族がほとんどで、しかも顔や動きを知っているとなれば限られてくる。
人間族、それも王たちに近い中に内通者がいるとすれば、この先の町も危ない気がした。首都から離れれば離れるほど、王や王妃の力が及びづらくなり、近いエルフの影響力が出るのではないだろうか。ひょっとするとそれはライノから始まっている可能性がある。
エイレアから聞いたマナの木から得られる物を考えれば、それを買い取り倍にして売ったりし恩恵を享受する、そんな人間族がいないとは限らない。敵が同族にもいる可能性があることを、考えから排除しないよう、頭の片隅に置いておくことにした。
「あそこだ!」
こちらが身を隠しつつ見ていたエルフに見つかってしまい、矢が前方から次々飛んできて隠れていた木に当たる。当たった感じからして、こちらの前方以外にはいないようだ。
「コーイチ、来るぞ」
木を背に身構えるヴァルドバの視線の先には、エイレアと最初に会った時のような、ローブで目元以外を隠した者たちが数名にじり寄って来た。
この状況をどう打破すべきか良い案が思い浮かばず、ならばいつも通りやるだけだと得物を引き抜き、寄る相手の出方を待つ。
金属が持てないハンデは魔法で補っているはずだが、マナの木が完全でない今それも厳しいのではないだろうか。魔力が無い場合はどんな得物を見せてくれるのか、恐怖半分好奇心半分と言ったところだ。
自然と顔が綻んでいた自分を奇妙に感じつつ、相手が間合いに入った瞬間、おもむろに左手の剣を突き出してみる。
「チェヤッ!」
掛け声とともに木で出来た剣を振り弾いてきたが、こちらの力が上回っているらしく、相手の剣が逆に弾かれ身を泳がせた。数的不利な状況で見逃す手はない。そのまま詰めようとした時、後ろから空を切る音がして下がる。
「厄介だなヴァルドバ」
こちらを動かすまいと背後から、雨あられのように矢が飛んで来て止まない。見れば先がとがっているだけで金属では無いものの、薬品を縫っていないとも限らない上に、こちらは鎧が無いので当たる訳にはいかなかった。
「そうだな、俺が後ろを何とかして来る」
「頼めるか? こっちはこっちでやっておくから」
そう告げると同時に飛んでくる矢が一瞬止んだ隙に、ヴァルドバは風を巻いて後ろへ走り出した。
「逃がすか!」
「それはこっちの台詞だよ、エルフの大将!」
先ほど詰められなかったエルフがヴァルドバを追おうとするも、任せろと言った以上逃がす訳には行かない。腹へ思い切り剣腹を振り抜いて当てて吹き飛ばし、それ以外のエルフへ攻撃を開始するが、前からさらに増援が来てさすがに持たず突破されそうになる。
「冥府渡り!」
ここは躊躇わず使うべきところだと判断し、一気に数を減らすべく冥府渡りを使用した。
ワーウルフと比べて遅くはあるものの、魔族よりは早くて躊躇わず使って正解だと思いながら、目に付いたエルフたちを次々と吹き飛ばしていく。
「っくは!」
毎回毎回しんどいとは思うが、そのお陰で種族的に素早さで優るエルフたち十人ほどを、怪我もなく黙らせられたのだから感謝しかない。深呼吸をしているとエルフ二人の頭を掴みながら、ヴァルドバがこちらに戻ってくる。
さすがヴァルドバだなと言うも、周囲に倒れているエルフを見回して褒められても嬉しくない、そう嘆いて掴んでいたエルフをポイと捨てた。
「コーイチ、コイツらどうする?」
「放っておいていいよ。向こうはこっちが殺すと思っているだろうから、逆に生かしておくと何でだって疑う可能性があるから」
分かったと言う彼を引き連れサジーの元へ戻ったところ、アライアスとエイレアは荷車の陰に隠れていたようで、こちらを見つけると急いで出て来て駆け寄ってくる。
冒険者ランク:シルバー級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
クリスタルソード(王妃がエルフの里から持ち出した秘剣。追憶のペンダントが無ければ抜けない。鞘のベルトを肩から斜め掛けし背中に背負う)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
エルフのマント(裏面に魔法陣が隙間なく掛かれ、表はど真ん中にウロボロスのマークが入ったマント)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
キャンプ用品一式
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
砥石一式
鉄くずの入った袋
メメリカ草(痺れ消し草の粉末一袋)
所持金:二十ゴールド




