第六十七話 長生きの弊害
胸が熱くなり感動していたが今はその話じゃないと気付き、二人に対してここまでの事情を説明すると、それは名案だとエイレアから褒められる。いつもの彼女に褒められるより嬉しくなったのは、眼鏡を掛けたことで知的に見えるからだろうか。
「アイツ知ってるわ。上位エルフの中でも古い家で名家ってやつ? アインシュタット家っていってさ、元は大魔法使いを輩出したり凄い家だった。でも今は古くて口煩いだけの権威主義の塊だから、長老たちに煙たがられたのかもね」
「前は里に尽くしてたのに、終わらせるにしてもこんな使い捨てみたいなやり方は酷いな」
「長老たちはマナの木の加護を得て長く生きすぎて、命の重さももう分からなくなっているのかもね。私が言えた義理じゃないけど、マナの木を蘇らせる為なら他種族と戦争しようとテロを起こそうと、自分達さえ良ければいいって思ってる気がするわ」
彼女の言葉からは自分のしたことに後悔しながらも、そこで止まらず考えているような感じが受け取れ嬉しく思う。いくら長生きしようとも、命の尊さや互いに思いやる心を忘れてはいけない。
誰も死ぬのは怖いし死ぬと分かっていれば、なにかしら抵抗したい気持ちは今の俺にはよく分かる。俺も突然ここに来たけど、父は無くなっているが母親や兄弟はどうしているかなとか思う。
死ぬと分かっていたら後始末とか感謝の言葉とか、色々しておきたいことはあったが、そう都合よくはいかないというのも身をもって知っている。だからといって他人を犠牲にし、食い物にし踏みにじってまで生き延びるのは、正しいとは思えない。
仮にもし自分が長生きしていたら、長老たちのように身勝手な振る舞いをしていたのだろうか。自分もそうならないように気をつけようと肝に銘じつつ、権力を持つということはそれだけ責任があるというのに、それを取らずに長生きすることの怖さを感じる。
マナの木が蘇り始めたのであれば、それに満足して大人しくしていれば良いのに、そうできない欲深さも老いと長生きの影響なのか。一国一城の主を目指すのであれば、そう言った点も気をつけようと思った。
他人の上に立つ者として、欲を出せばキリが無いし誰しも後悔はあるのにそれを忘れ、自分達の為だけに戦争を起こす身勝手さを許すわけにはいかない。
それまで平穏無事に暮らしていた人たちの明日を奪う、わがままの為に他人の明日を潰すなんて許せない。
前にリックさんが言ってたように、終わらせる時にちゃんと終わらせる必要がある、というのはこういうことなのだろうなと今少しわかった。
ちゃんと終われなかった者は、終わらない為に足掻き人を巻き添えにしても、自分だけはまた終わらないままで居続ける。誰も終わらせないなら、俺がその死に水をきっちり取るしかないだろう。
元の世界で死んだであろう死人の俺こそが、その役割に相応しい気がした。
「じゃあそういうことだから、あの人を上手く誘導してエルフの里を案内してもらおう。旧家であればお使いの途中で帰ってきたとはいえ、長老たちも表立って処分するのは厳しいだろうし、エイレアに無理させるよりは安全だろう」
「私のことを考えてくれてありがとう。コーイチの案ならこの髪型にして正解だったわね」
「そうだな素晴らしい動きだった。一応彼を警戒して居る間はエイレアのことをレイって呼ぶことにしよう」
「頭良さそうな見た目と名前だな」
「……元々良いのよ何回言わせんのよ。髪型も変えて名前も変えて、なんだかスパイごっこしてるみたいで楽しくなってきたわ」
「まだ緊張するような場面じゃないからそれくらいで良い。里へ入ればそういう余裕もなくなるだろうからね。エイレアの正体がバレても過激な対処はしないだろうが、一応注意して動こう。二人とも作戦含めよろしくね」
冒険者ランク:シルバー級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
クリスタルソード(王妃がエルフの里から持ち出した秘剣。追憶のペンダントが無ければ抜けない。鞘のベルトを肩から斜め掛けし背中に背負う)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
エルフのマント(裏面に魔法陣が隙間なく掛かれ、表はど真ん中にウロボロスのマークが入ったマント)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
キャンプ用品一式
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
砥石一式
鉄くずの入った袋
メメリカ草(痺れ消し草の粉末一袋)
所持金:二十ゴールド




