第六十二話 エルフの里の秘宝の一つ
相手はもう撤退しているだろうとは思うが、引っ掛けなどは無いか警戒していると、後方から馬の足音が聞こえてくる。新手かと思い後ろへ移動し身構えていたところ
「コーイチか!?」
ランタンを掲げながら兵士を引き連れたリックさんが現れ、ヴァルドバと二人で安心し深呼吸をして力を抜いた。剣を鞘に納めながら、リックさんは味方だがなにか悪い知らせかもと思い、気を張り直し近付いて用件を聞く。
「陛下からエルフの里へ行くならこれを持って行け、とお前さんに」
馬を降りたリックさんは斜め掛けしていたベルトを外し、背負っていた剣を両手で持ちこちらに渡してくる。これはどういったものかと聞くと、お前しか引き抜けないから引き抜いてみろという。
俺だけとはどういうことかと思いつつ受け取った瞬間、王妃様から受け取ったペンダントが光り、剣が鞘から自動的にゆっくりと抜け始めた。
柄を持って引き抜き剣身が現れると同時に、現れた光は暗闇が支配する森に遠くまで広がっていく。
「久し振りに見るが相変わらず神秘的な武器だな」
「これは?」
「王妃様が自分の実家から持ってきたエルフの里の秘宝の一つ、クリスタルソードだ」
「え、そんなもの持っていけないっすよ!」
「イリスを取り戻すとなれば、本来であれば騎士団を引き連れて王が行く。そうなれば戦争になってしまうからこそ、苦渋の決断としてお前さんを送り込むんだ。確実に勝利する為、自分が今持つよりコーイチにとタウマス王は仰せだ」
責任重大なのは元よりだけど、それにしてもこんな目立つ剣を持っていって平気ですかと問うも、人間族が里の中に入るだけで目立つから問題無いという。
この剣があれば必ず助けになるし強敵にも負けない、イリスを助けるのならきっとこれは役に立つと俺も思うよ、とリックさんは笑顔で言いながら親指を立てる。
「傍で見ていた俺が言うんだから間違いない。この剣は魔法に対して特に効果を持っているから、エルフたちにも効果がある。頼んだぞ、コーイチ」
そう言いながら馬に乗り、兵を率いて来た道をリックさんは戻っていった。出来れば次の町まで共に行って欲しいところだが贅沢は言えない。さっさと森を抜けるべくサジーに跨ろうとした時、荷台を見るとエイレアが膝を抱えて顔を埋めている。
大丈夫かと声を掛けようとするも、大丈夫な訳がないよなと思いかける言葉を見失った。自分が普通のエルフではなく、誰かの犠牲の上にエルフっぽくなっていた、しかも姉は自分もそうだと知って去ったと今知った。
その心境を思えば慰める言葉が分からない。だけど逃げることも出来ない。イリスを取り戻すための旅ではあるが、エイレアも自分自身と向き合う旅になるだろう。
妙な流れで共に旅をしていたけど、こうなると出会いは運命だったのかもしれないと思える。ならばイリスを助けると同時に、彼女の過去にも決着をつけさせてあげたい、そう声を掛けよう。
「エイレア、行くぞ……お前の過去にも決着をつけるために!」
俺はそう力強く告げてからクリスタルソードを背負い、鞍に跨り手綱を引くとサジーはそれに合わせて走り出す。しばらく走り続けているとようやく森を抜け草原へ出たが、そこで待ち受けていたのは煌々と光る、この世界の二つの月だった。
重苦しい空気がまだ残っているが、ずっと引きずって進むのも辛いだろう、そう考え月の話題を振ろうと考える。
ふと元の世界で狼が月に反応し変身するという物語を思い出し、ヴァルドバに聞いてみると満月でフルパワーになると教えてくれる。そういう時に戦わなくて良かったというも、きっと結果は変わらないと彼は答えた。
いくらなんでも獣系よりも俺が強いとは思えず、どうしてか聞いてみるも難しいと返される。話しているうちに町の近くまで辿り着き、他にも朝町へ入るために野宿している人たちがいたので、その近くでキャンプをするべく設置準備を始めた。
冒険者ランク:シルバー級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
クリスタルソード(王妃がエルフの里から持ち出した秘剣。追憶のペンダントが無ければ抜けない。鞘のベルトを肩から斜め掛けし背中に背負う)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
キャンプ用品一式
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
砥石一式
鉄くずの入った袋
所持金:二十三ゴールド




