第六十話 里の闇
「ただ新しい武器を新調しただけ、という訳ではないようですね」
「さてどうかな。それにしてもエルフなのに力が強いな。まるで黒騎士のようだ」
本当は武器を新調しただけなのだが、手の内を明かしてしまったことを悟られないよう、相手が痛がる話題を振ってみた。
「そういう引っ掛けには乗らない、と言いたいところですが、黒騎士様は別として私のことは教えて差し上げましょう」
どうやらあちらはこちらと違ってまだ手の内があるようで、余裕がある声色でそういうとローブの頭部を後ろへ引っ張る。
「……あなた何なの!?」
現れたのは白髪に焼けた肌以外は、エルフそのものに見える女性の姿だった。エイレアが知らないということはエルフ族ではないのだろう。そうなるとまだ俺が知らない新しい一族なのだろうか。
「私の名はアルヴ。お前のような上位エルフの箱入り娘が知らないのも無理はない。私はお前たちの親の上位エルフや長老たちの実験により、欠陥エルフを治す薬を作るために生まれた、ダークエルフという忌み子だよ」
「え……?」
アルヴは言う。昔から極少数ではあるものの魔法が使えない代わりに、鉄などの合金を扱えるなど人間に近いエルフがいたらしい。一般のエルフの中に生まれた場合、穢れと言われ一生隔離され終える風習だが、それが最近は上位のエルフや長老の身内にも出てきた。
一般ならいざ知らず上位や長老の身内ともなれば、穢れなどは許されない。なんとか魔術粒子を取り込む機能を植え付け、魔法が使えるようにしなければと長老たち上位層は考える。
考えた末に導き出された恐ろしい方法として、長老たちは一般エルフの子どもや妊婦を誘拐し、魔法や薬物投与に加え手術などを用いて実験をし始めたという。
「口にするのも悍ましい方法で実験は繰り返された。ある人が私たちを助けてくれるまでの長い間」
「嘘よ……」
空笑いをしてからエイレアは否定するが、明らかに動揺しているのが見なくても分かった。何となくだがエルフは魔法が使え、素早さが高く器用なイメージがある。
振り返ってみればエイレアにはそれがあまり感じられなかった。彼女にはアルヴの話に関して、何か思い当たる節があるのだろうか。
「私達や亡くなった子供と妊婦たちの犠牲によって、エルフの奇病は治療方法がある程度は確立されて来た。だが今でも完治したとはいえず、実験は繰り返されているはずだ」
「そんな嘘信じないわ……」
「信じるしかないだろう? お前やお前の姉は……いや、エレクトラは身をもって知る以外の方法でも知っている。だからこそエルフの里を抜けたのだ」
「嘘ばっかり!」
そう言えばレオンさんからは、エレクトラ王妃は交換留学と称しヲスカーへ来ていた、その際にエルフ族の陰湿さに嫌気がさして出奔したと聞いている。
来る前にも人間族との間でいざこざがあったというし、そういった戦いの場に黒騎士が出てこないはずはない。
今回イリスがエルフの里に連れ去られた際に現れた、王妃の幼馴染であるエリザベスはマナの木の生贄にされていた。里がやっている非道な行いを知る切っ掛けは幾つもあるので、知っていたとしても可笑しくないだろう。
そして姉が知っているなら一緒に生活していたエイレアもまた、具体的には知らなくとも何となく知っていた可能性がある。
「なら聞いてやる。なぜお前は低級魔法しか使えず、薬品や弓を優先して使う? お前の姉はなぜエルフなのに合金の剣を持てる?」
「私は駄目なエルフだからよ。姉さまは特別だから」
「薬が完璧ではないからそんな状態なのだよ。私たちが逃げ出したことにより、一から新しい実験体に施していて製薬が停滞している影響だろう。だからお前は魔法を完全には使えないのだ。エレクトラは魔法を使えない自分を良しとしているからこそ、エルフの里を出て薬を止めた。私たちがイリス誘拐に加担しなかったのも、エレクトラに恨みはないからだ」
今のアルヴの話を聞いて気になる点があった。王妃はタウマス王との戦いの時に秘術を使用していた、と聞いている。同じ薬を飲んでいたであろうエイレアは、低級魔法までしか使えず姉は秘術を使えるというのは、どういうことなのだろうか。
冒険者ランク:シルバー級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
キャンプ用品一式
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
砥石一式
鉄くずの入った袋
所持金:二十三ゴールド




