第六話 魔法の授業?
宿に着くと安心したからか疲れが急に溢れたかのように体が重くなり、直ぐにベッドに入るとそのまま意識が遠のいた。
「いてっ……」
ドスンとベッドから落ちたことで目が覚め、ゆっくり立ち上がり窓を開けると日が昇りかけている。もう一度寝ることも考えたが、今日から教会でシスターアヤメから魔法の授業を受けるので、初日から遅刻する訳には行かないと部屋を出た。
宿はギルドが運営し受付もギルド員が担当しているので、宿泊客は誰かというのは完全に把握されており、前払い制度なので支払いで揉めることもない。
受付で挨拶をし食券を貰い食堂のカウンターでそれを出すと、その日の食事を食べさせてもらえるという、大変有難い宿でここで暮らしたいくらいだ。
残念なことに収入制限や階級制限があり、初心者の域を出てしまうと退去しなくてはならない決まりである。今の自分では気にすることはないものの、冒険者として本格的に活動し始めればそう遠くないだろう。
一か月後に始まる冒険者生活を少し不安に感じつつ、受付で挨拶し券を貰って食堂で出し小食を頂いてから、宿を出て教会へとランニングをしつつ向かった。
「ありゃ……ちょっと早かったかな」
教会に着いたものの沢山の人が教会に集まっており、恐らく礼拝の時間だろうなと考え、再度ランニングをして時間を潰すことにする。十周ほどしたところで人々が教会から去っていき、さらに少し時間を置いて扉をノックした。
「おはようございます!」
「コーイチさんおはようございます。準備運動は万全のようですね」
シスターアヤメが出て来てそういうと中へどうぞと促してくれる。最初に来た時と同じ荘厳な雰囲気で少し緊張しながら進む。
「今日は中庭で少しやりましょう。コーイチさんの得物はありますか?」
「え、得物ですか?」
「そうです得物です……どうやら本当に初心者さんみたいですね。得物とは貴方の得意な武器の事ですよ」
「あ、そうなんですね。えっと得物は持ってはいますが、魔法の授業では?」
「これも魔法の授業の一環です。あなたが魔法と対峙するとすれば、恐らく相手は私と同じことをしてくるでしょうし……」
像があった場所の近くの扉を開けて通り、その先の廊下を歩いた先に手入れの行き届いた庭が現れる。日向ぼっこしながら授業かなと思ったら、シスターアヤメは物騒な話をしつつ、スカートの裾から手を入れ棒を取り出しこちらに向けた。
「……じ、実戦形式の授業ですか」
「そうです。それが一番分かりやすいので。一か月で魔法戦に慣れて頂きます。冒険者も先を考えれば、魔族やエルフ族などのテロリストに対する対応も出来た方が、この国では生き残りやすくなりますからね」
「えーっと、じょ、女性に刃物を向けるのはちょっと……」
冒険者として必要だとしても、女性に刃物を向けたくはない。正直にそう伝えるとシスターアヤメはニコリとほほ笑んだ後、目にもとまらぬ速さで間合いを詰めてきて、こちらの腹に拳で一撃入れてくる。
「っと」
とてつもない速さに驚き腹への一撃は受けてしまったが、顎への棒による突き上げは一歩下がって避けた。
「冗談にしては性質が悪い、と思ったのですけど満更でもないようですね」
「出来ればそこは最後まで超えたくない一線ですね個人的に」
「お優しいことで……それがどこまでの覚悟であるのか、試させて頂きますね?」
笑顔は消えシスターアヤメは棒をこちらの側頭部目掛けて振ってくる。リックさんが稽古を付けてくれたお陰で、はっきりそれが見え一歩下がって避けた。
彼女はそれで止まるはずもなく、高速の振り下ろし薙ぎ払いを休まず繰り出してくる。円を描くように避け続けていると、
「倍速」
何もなかったはずの周囲に光の粒子が出現し、彼女がつぶやくと体に素早く粒子は吸い込まれて行く。次の瞬間、先ほどよりも倍の速さで攻撃を繰り出してきた。
職業:二刀流剣士(初級)
仲間:なし
師匠:シスターアヤメ(クロウ教シスター)
所持品
メイン武器:銅の剣(初心者講習修了記念品)
サブ武器:ショートソード(リックさんから頂いた初級講習完了記念品)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
アイテム:無し
所持金:五十ゴールド




