第五十九話 包囲網から生き残るには
ヴァルドバの挑発に応えるように、四方八方が光ってこちらに何かが飛んでくる。サジーを守るように立ちそれらすべてを切り払っていく。
ある程度切り払ったところで相手も諦めてくれたのか、何も飛んでこなくなったのを確認し深呼吸をした。
「すみませんコーイチ殿。私の仲間は気が短いようだ。ワーウルフも言葉を慎むが良い。お前の主は正々堂々私と戦うと言っているのに、挑発して仲間を怒らせればハチの巣になるぞ?」
「やってみるか?」
さらに挑発を加えたことで、再度遠距離攻撃が開始された。ここまでの行動を見る限り、ヴァルドバが考え無しにやっているとは思えない。
黒騎士という言葉だけでも警戒するのに、相手がその身内の可能性がある状況では出てくることを想定し、逃げることも視野に入れて動くだろう。
逃げるにしても戦うにしても、生きてこの場を確実に切り抜けるためには、目の前の敵以外の場所を知りたい。知るために今出来ることと言えば、わざと攻撃させその方向からある程度の位置を把握する、というのは最良の方法かもしれないとは思う。
彼の狙いがそうだったとして、馬であるサジーは遠距離から飛んでくる攻撃にさらされ、いつまで耐えられるだろうか。サジーはどの馬よりも勇敢だとは思うが、馬は神経質な生き物だと聞いたことがあるし、何も出来ず攻撃され続ければ倒れてしまいかねない。
移動距離が近ければ一旦逃がすことも考えるが、エルフの里はまだまだ遠い場所にある。正直サジーが頼りな面が大きい我々にとって、この子を失うようなことがあってはならなかった。
「ヴァルドバ落ち着け。俺たちの仲間のサジーがハチの巣にされたら大変だ」
「わかった」
近付いて顔を見ながらそう言って頷き、理解していると示してからさらに前に出る。相手の腕は分からないが、勝った場合にそのまま見逃してくれるとは思えない。
戦っている間にヴァルドバがある程度目星を付けてくれれば、それを頼りに逃げ切れる可能性が高くなるだろう。心の中で彼の動きに期待しつつ、相手を見ながらいつでも来いという意味を込めて腕を広げた。
「あなたは不思議な人だコーイチ殿。人間族であるにもかかわらずワーウルフを制御し、さらに人間族とエルフ族の間に生まれたとは言え、気難しいはずのエルフ族に慕われる。黒騎士様が生かしておけというのも分かる」
イリスは気難しくなんかない。あんな小さな子供が親元を強制的に離されたのに、わがままも言わずに一生懸命歩いて首都まで帰ったのだ。気難しい子であればもっと苦労しただろう、そう力説したかったが今はそれどころじゃないと切り替える。
「ヴァルドバは自分の意志で付いて来てるし、イリスは父親に俺が似てたからだ。俺の力では無いだろう」
「それは謙遜ですな」
「違うと思うが」
相手が言いながらしゃがんだのを見て、こちらに突っ込んでくると察し、先手を打つべく剣を交差させながら前へ出た。どうやらこちらが出たのは意外だったらしく、驚いて途中で止まりローブの中から細身の剣を出し、こちらの突進を受け止める。
「勇猛果敢、と言ったところですか」
「先手必勝って言葉がある」
見立て通りなら変わったエルフ族と考え、力任せに相手を押し飛ばす。あっさり押されはしたが力負けではなく、体勢を立て直すためのように感じ、突進を警戒して突っ込まずに待ち構えた。
読み通り再度突進があり、それを半身で避け刃の無い方で背後から叩きつける。相手は体を泳がせながら斬り返してくるも、こちらはもう一振りでそれを受け得物を破壊し、叩きつけた方は脇腹にヒットした。
直撃はしたが胴に堅めの防具か何かがあり、地面に叩きつけられても意識を失わずにすぐさま横へ転がる。
ソードブレイカーのお陰で相手の得物は破壊済みだが、相手もこちらも手の内をすべて出し尽くしてはいない。今後の事を考えて出来るだけ手の内を見たいと考え、立ち上がるのを待った。
ダメージはそれほどないらしく、少し離れた場所で立ち上がり前傾姿勢になったものの、突然その構えを解く。
冒険者ランク:シルバー級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
キャンプ用品一式
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
砥石一式
鉄くずの入った袋
所持金:二十三ゴールド




