第五十八話 エルフか魔族か? 謎の襲撃者!
キン! という金属音がしたのを聞く限り、エルフの襲撃ではないなと感じつつ、このまま突っ切って草原へ出るぞと指示を出しながら、俺も剣を引き抜き構える。
薄暗い中でそれは光り、音を聞きながら感覚を研ぎ澄ませ、ここだと思ったところで切り払う。どうやら相手は前方からこちらを狙撃しているようで、軌道は今のところ真っ直ぐだ。
ヴァルドバに気配を感じるかと問うも、どうやら相手は気配を断っているらしく、数も正体も分からないらしい。気配を断てるだけでなく、金属を使えるとなるとエルフではないだろう。
「何か変よ」
「何が?」
「可笑しいじゃない。魔族ならなんで私たちを狙うのよイリスもいないのに」
「じゃああれはエルフなのか?」
「知らないわよそんなの!」
ヒステリックに言うエイレアに戸惑いつつ、警戒しながらサジーやヴァルドバと共に進み、視界が開ける町の前の草原を目指した。
「サジー止まれ……コーイチ、敵がいる」
ヴァルドバの言葉にサジーは反応し速度を落とす。まだ草原は現れない森の中で止まるのは、正確に狙撃する相手の的になりはしないかとは思ったが、野生の勘でこの先で待ち受ける相手を察知したのかもしれない。
サジーの動きに任せ周囲を警戒し構えを解かずにいると
「相手は正々堂々戦うみたいよ」
エイレアは吐き捨てるように言う。どういうことか聞こうとしたが、その前に誰かがこちらに向かって歩いてくる。狙いは俺だろうなと思い急いで剣をしまい、サジーから降りて前に出た。
「こんばんはコーイチ殿。今回も逃げるように移動するのですね」
「俺のことを知っているのか?」
暗闇の中に同化するほど黒い色のローブで全身を隠し、目元以外顔も隠した殺気を纏う者が現れる。ただ耳の部分がローブで隠した上からも突き出ており、恐らくエルフだろうなと思った。
ただエルフだとすれば、鉄の矢か投擲器具を使えるのが謎ではある。不気味でしかない相手に対し、こちらは警戒しながら出方を窺う。
「人間族とエルフ族の未来の光である姫を助けた、着のみ着のまま不殺の冒険者コーイチ。首都を飛び越え今や人間族すら超えて、ちょっとした有名人ですからねあなたは」
自分のあずかり知らぬところで変なことを言われる、というのは悪口や誹謗中傷の類なら経験はあるものの、評価の高いことを言われることはなかなかないので戸惑う。ここで戸惑ったことを言ったり態度に出すのは不味いので、ちょっとしたならまだ良い方だと返すことにする。
「ちょっとした、なら良かった。それなら適当に日が過ぎていけば忘れてくれる」
「殴りのコーイチ、クロウ教徒より敬虔なコーイチ、命取らずのコーイチなど、色々異名が出来てるのでどうでしょうね。少なくとも黒騎士様は忘れてくれないでしょう死んでも」
まさか二つ名まで付けられているとは知らず、動揺を抑えるのに必死だった。特に二番目のは意味分からないし、怖い人がいるので止めて欲しい。
そこに拘って話すと足元をすくわれそうなので、話を変えようと頭の中で相手の言葉を再生し直す。黒騎士様と呼ぶからには仲間だろうけど、魔族とも思えず相手が何者なのか気になる。
聞いたところで素直に教えるとは思えないが、一応聞いてみるも今直ぐはちょっととじらされた。
「仲間の制止を押し切り、さらに有利な遠距離攻撃を捨ててまで出てきたのです。一つ付き合って頂くのが報酬として妥当ではないでしょうか?」
「お仲間まで来てるのか? 大歓迎されているなら仕方ない。受けて立つよ」
まさか仲間を引き連れて狙撃してきているとは思わず、圧倒的有利を捨ててまで戦いたいというなら、受けるべきだろうと考え得物を引き抜く。
「おや、新調されたのですか? 武器を」
「色々あってそうせざるを得なかった」
「まぁ当然でしょうな。あんなみすぼらしい剣で戦われては、黒騎士様も気を使ってしまう。言わせてもらえるなら、そろそろ防具の一つも付けて欲しいものですがね」
「お前偉そうだな。裸同然のコーイチを倒せない黒騎士は強くない」
「何!? ……やめろ!」
冒険者ランク:シルバー級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
キャンプ用品一式
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
砥石一式
鉄くずの入った袋
所持金:二十三ゴールド




