第五十七話 種族の未来
「このソードブレイカー、大切に使わせて頂きます!」
「おう! 武勇伝を聞くのを楽しみにしてるからな! 何か困ったことがあったら店に来てくれ!」
ジューイットさんと握手をし改めて感謝を伝えた後で、鉄くずを買うのを忘れていた為、購入を希望すると再利用で取ってあるから持って行けと言われる。
さすがにどれもこれも無料では悪いので、三ゴールド渡すと多すぎると二ゴールドかいされたが、今回は少しでも受け取ってもらえてほっとした。鉄くずの入った大き目の袋を頂き肩から下げ、お店を出るべく皆に声を掛ける。
ヴァルドバに武器は要らないのかと聞くも、見るのは楽しいけど自分の爪と牙で良いと言い、エイレアにも聞くが触れないと思うからいらないと言われた。
見送るために後ろにいたジューイットさんから、エレクトラ王妃は剣使ってるけどなと言われると、姉さまは凄い人だから関係無いのよと寂しげに言う。
試しに持ってみたらとも言い辛い空気になり、ジューイットさんに見送られて武器屋を後にする。
飲食店と青果店、それに肉屋を回って食材を購入し、エルフの里があるという西の方角へ向かうべく、東門にサジーを迎えに行き出立する。荷台に荷物を載せながらチェックをし、買い忘れたキャンプ道具などを買い足して出立する頃には、もう夕方も近くなっていた。
明日の朝でもと思わなくもないが、王や王妃様を思えば一刻も早く行くべきだと考え、先ずは次の町であるワンダーを目指し進む。ヴァルドバからの情報によれば、進めば進むほど人間族の文化から遠くなり、エルフの里に最も近い人間族の町である、ハクロの町は人間族以外が半分いて政治的に大変だという。
特に入った後はエルフの里に行くなどというのは、絶対に口にしてはいけないと言われ、エイレアにも注意するよう伝える。
「なんでワーウルフの方が町の内情を知ってるのよ……」
「俺たちは油断すれば狩られる。獣族もエルフ族も魔族も人間族でさえ、俺たちにとっては命を脅かす敵。相手の隙を突き縫って生きてる俺たちのこと、マナの木に寄りかかるお前たちには分からない」
「じゃあコーイチも敵じゃないの?」
「コーイチが俺を殺すなら。でもしなかった。だから従う。あとご飯食べれる」
「あっそ。人間族の言葉が読めるのも話せるのも、そうやってこびへつらってきたからなのね」
「生きる為に全力だから。人間に変身出来る能力があるから、俺たちワーウルフは生き延びられた。でもこのまま行けば滅ぶ。エルフより後だろうけど。出来れば新しい道を俺は探したい」
サジーと共に前を見ながらヴァルドバの言葉を聞き、やはり既存の人間族の町や国ではない、別の入れ物が必要だなと改めて思った。俺にもし役目があるとするなら、ひょっとするとこの変わりかけている世界で、新たな道標を示す役割があるのかもしれない。
「まぁそうなるとイリスを早く取り戻して、どこか融通が利く土地を探したいな」
「俺頑張る! このまま滅びを待って誰かに使われるより、俺が道を切り開くためにコーイチを手伝う!」
「楽しそうで何よりね」
前向きなヴァルドバに噛みつくように、エイレアは皮肉たっぷりの嫌味を言う。彼女はエルフの里を知っているからこそ、皮肉で返すしかないのだろう。滅びる自分の種族を知っていて、それを止める術が嫌いな人間族とエルフ族の子どもしかない、しかも姉の子どもだから助けたい。
そう単純ではない事情の彼女を思えば、たしなめるようなことなど言えないだろう。ここはやはり前向きな提案が必要だと感じ、
「エイレアも楽しくなれるよう、明るい未来を考えてみたらどうだ? 彼のように俺の国作りに協力するとか!」
努めて明るく言ってみたものの、返答はないまま景色と時間だけが過ぎていく。やがて次の町ワンダーまであと少し、という看板が見えやっと一息付けるなとほっとする。
町へはもう夜になってしまうため入れず、近くの草原で野宿でもしようかと思っていたところに
「来る!」
そう言ってヴァルドバが加速しサジーの前に出て、ワーウルフの姿に戻り爪を伸ばして横へ薙ぐ。
冒険者ランク:シルバー級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
所持品
メイン武器:ソードブレイカー・右
サブ武器:ソードブレイカー・左
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
キャンプ用品一式
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
砥石一式
鉄くずの入った袋
所持金:二十三ゴールド




