第五十五話 首都の武器屋
ヴァルドバに殴り掛かろうとするエイレアを、寸でのところで羽交い絞めにしつつ外へ引っ張り出しながら、そう呟くとヴァルドバが鉄の武器とか破片を多く忍ばせれば良い、と教えてくれた。
どうやらエルフは鉄や鉄を含む合金が苦手だという。今の装備を新調することをこれまで考えていなかったけど、長老たちとの戦いに備えて新調するのも悪くはないか、と考えエイレアが落ち着くのを待ってから中へ戻る。
リュックは依頼でもらったものがあるので、先ずは地図を購入し脇に入れた。次に中に薬草や毒消しなどがセットになった箱を買って入れ、非常食も買い足し店員さんに武器屋の場所を聞き移動する。
外に出て少し歩いた場所に武器屋はあり、入って見るとさすが首都だけあって色々な武器が並んでいた。ヴァルドバはとても喜び一つ一つ丁寧に見ているが、対してエイレアは入口に立ったまま入ってこない。どうしたのか聞くと合金が狭い中に多すぎて、エルフが入るとくしゃみが止まらなくと思うという。
エイレアが初めてそんなことをいったのに驚きつつも、それは辛すぎるから待っていてくれと告げ、なるべく早めに済ませようと見るのを急ぐ。ざっと見ていたが、とある一本の短剣とも剣とも言い難い、不思議な剣に目が留まる。
「お客さん、お目が高いね! それはうちの新作、相手の剣を破壊することが可能なソードブレイカーって短剣だよ!」
頭頂部の髪が少し寂しく口髭を生やし、白のシャツにスラックス、蝶ネクタイとエプロンをした店員さんらしき人が声を掛けてきた。見せてもらうと剣身の半分はギザギザになっており、そのギザギザは鳥の爪のような加工が施され、実際に近くにあった剣を噛ませ捻ったらヒビが入り驚く。
「やわな武器ならもっと簡単に折れる。コイツは鋼で作った製品第一号で、鉄程度なら余裕でいけますよ!」
「え、鉄が折れるの?」
「お客さんの力にもよるけどね。鋼が折れたら大したもんだよ!」
これまでより文化が進化したように見えるこの剣を見て、首都って凄いなぁと感心しつつ値段をきいたが、ただで良いと言われ言葉を失う。
しばらくして我に返り、どうしてただで良いのかと聞いたところ、イリスを首都に連れて来てくれたからだと言われる。
「俺たちにとってタウマス王は英雄だし、エレクトラ王妃も新しい時代の灯火みたいな方だ。二人の間に生まれたイリス様は新時代の象徴と言っても良い。あのご家族は俺たちの未来の光、と言っても過言じゃない存在だ。その後ろに付いて歩いてたアンタは、そのイリス様を助けてくれた人だとギルドで聞いた。そんな人に使って貰えるなら喜んで提供したい」
誇りと喜びがこもった言葉を聞き、王と王妃そしてイリスは凄いなと改めて思いつつも、そのイリスが行方不明なんだよなとは言えず心苦しかった。挨拶が遅れて申し訳ないと言ってから名乗り、このお店の店員さんですかと尋ねると、店主というか自分で作って売っている者だという。
「俺は七聖剣のリックが従者の頃から武器を提供している、ジューイットっていうものだ。コーイチ殿、あなたの話はリックから聞いていたんだよ! まさか今日会えるとはおもってなかったな。改めてよろしく!」
どうやら俺の世間はかなり狭いらしい。驚きつつも実はリックさんから剣を頂きましてと言いながら、頂いたショートソードを見せる。それは聞いて無かったと言いつつ剣を手に取り、しばらく全体を細かく見た後で大きく息を吐く。
「まったく何てものを他人様にあげてるんだリックの奴。俺が打ったものを手入れも少ししただけで渡すなんて」
「いやいや助かりましたよ。その剣があったからこそ、黒騎士とも戦えましたし」
「おいおい冗談だろう? あの黒騎士とこんなもんでやりあったのか!? というかコーイチ殿、もう一つの方も見せてもらえるかい?」
「あ、良いですよ。これは冒険者ギルドの初心者講習修了記念品の銅の剣です」
そう説明するとジューイットさんはショートソードを近くに置き、おでこに手を当てながら天を仰ぐ。聞けばこの初心者講習修了記念品の銅の剣も、ジューイットさんが国から依頼を受けて打った物らしい。
縁があったんですねと喜びながら言うと、雑な仕事はしてないが悪いことをした気分になる、そう言って近くの台に手を置き肩を落とした。
冒険者ランク:シルバー級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
所持品
メイン武器:銅の剣(初心者講習修了記念品)
サブ武器:ショートソード(リックさんから頂いた初級講習完了記念品)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図、治療セット箱)
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
所持金:二十三ゴールド




