第五十四話 イリスの忘れ物
おい聞いてないぞエリナよと心の中で嘆きつつ、受け取った非常食やらの返品をしようとするも、それは使って頂いて構いませんと言われた。
これだけでももらえれば良いかと思いギルドを出て、そう言えば支援金を使っていなかったなと思い、リュックから出して見ようと中を漁る。中のポケットに布袋があり、なんとその中に五十ゴールドも入っていた。
驚くと同時に五十ゴールドがあるのを知っていたら、もう少しイリスに贅沢させてあげられたなと反省する。そしてこれは使わずにイリスとエルフの里から帰る時、どこかの町で使おうと思い再度しまい込む。
「あれ……これは?」
見ると赤い布で作られた小さな袋があり、その中に数枚のブロンズが入っていた。誰のだろうと思いながら袋の縫い目を見ると、しっかり縫えていて一瞬売り物化と思ったが、小さなズレがありそれを見た途端
「イリスが縫ったやつかな……」
恐らく数枚のブロンズはサノンのおかみさんに貰ったものだろう。必ずイリスにこれを手渡しして返そうと決意を新たにし、リュックにしまい込んでエイレアを見る。
「どしたの?」
「エイレアはヲスカーからエルフの里への道は分かるか?」
「……申し訳無いんだけどさ、私長老に飛ばされて首都に来てるから、まったく帰り道が分からないのよね」
本人は空笑いをしているが、明らかに捨て駒として退路を断たれて送り込まれているのが、誰が聞いても分かるやり口だった。恐らくイリス奪還が成功した場合は、黒騎士あたりに殺されていただろう。
「俺、エイレアに少し優しくする……」
「俺もそうするよヴァルドバ……」
「は? なんでそうなるの?」
呑気なエイレアに対し、俺とヴァルドバは見合った後で溜息を吐き首を振る。現在の暫定副官であるヴァルドバ氏からエイレアに、イリスを確保したらどうしてたのか聞くと連れて帰るというので、どうやってと聞くとポケットからペンダントを出してきた。
「それは追憶のペンダント?」
「違うわよそれの偽物。これは一回限りマナの木の下へ一瞬で移動出来る優れモノなの!」
「何人でも行けるのか?」
「え、一人だけど?」
我々からは溜息しか出ない。なんなんだこのポンコツエルフは。これでテロが成功して首都で被害が出たなんて信じられなず、どうやって実行したのか聞くも
「転送は長老が皆を一斉にしてくれて、私以外が攻撃担当で私はイリスを抱えて逃げる役! その際に長老から貰ったアイテムで飛んで首都から逃げたのよね」
という素敵な回答を得る。そら長老には逆らえないわなと思いつつ、当てにならなさそうなので先ずは地図を買うことにした。町で警備に当たっている兵士に、地図を買う場所はありますかと聞いたところ、町の道具屋で購入可能だと教えてもらう。
有難いことに道具屋まで案内してくれ、お礼を言って別れた後で中へ入り、さっそく地図を購入することにする。エルフの里までの細部にわたる地図があり、エイレアはそれを見て絶句した。
エイレアの反応を見て長老たちはそれを読み、歩きで行けば途中で捕まると考え直接送り込んだ、そんな気がする。強引だが戦争をせず、直接イリスの身を奪う作戦としては良いのだろうけど、正確に位置を把握していたのが気になった。相手にも人間族の協力者がいるのではないかと思い聞くも
「気持ち良く協力したりする者はいないでしょうね。私たちは人間族と商売をしても、物を先に与えたりはしないから」
そう言うので、強制的に従わせたり記憶を見たりできるのではないか、と問うと声を張り強めに否定される。これまで割とだらけていたエイレアが、突然そんな態度を取ったので驚いていると、ヴァルドバが彼女を目を座らせて見つめ口を開いた。
「何を聖人ぶっている? お前たちはコボルトも使い捨てにするし、俺たちワーウルフも利用していた。喰うに困った時もそうしていた。だから未だにコボルトを縛っている。過去に奴隷にしていた人間族の頭を、開いて弄るくらいはやるだろう?」
「やめてよね! 私はそんなことしてないから!」
「今さら小奇麗になれないぞ? お前たちも所詮生き物。俺たちと同じ獣」
「やめろっていってるのよこのケダモノ!」
「はいはい喧嘩止めてねー。何にしても長老とは戦わなきゃならないようだし、何か対策が立てられればいいんだけどな」
冒険者ランク:シルバー級
職業:二刀流剣士(初級)
魔法:生命力変換
冥府渡り(デッド・オア・ダイブ)
仲間:エイレア(エレクトラ王妃の妹のエルフ族)
ヴァルドバ(ワーウルフ)
所持品
メイン武器:銅の剣(初心者講習修了記念品)
サブ武器:ショートソード(リックさんから頂いた初級講習完了記念品)
防具:布の服・ズボン・革の靴(初期装備)
アイテム:エリナから貰ったリュック
(非常食各種、水、身分証、支援金五十ゴールド、地図)
水晶の荒粒
追憶のペンダント(エレクトラ王妃から借りた物。マナの木の持ち物?)
所持金:三十ゴールド




